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 最近,新聞や雑誌で「広域イーサネット」という用語をよく目にする。どうやら通信事業者が提供する専用線サービスの一種らしいが,イーサネットといえばLANの代名詞だったはず。そのイーサネットがどうしてWAN(広域ネットワーク)で使われているのだろう。今回はその謎に迫ってみた。

 広域イーサネット・サービスとは,イーサネットで遠隔地同士をつなぐ通信サービスのこと。このサービスを利用してつないだ拠点は一つのLANにつながっているようにネットワークを使えるようになる。つまり,違うフロアのLANをLANスイッチで接続したようにイメージで利用できるようになるのだ。

 でも,イーサネットは本来,LANの技術。高速でデータをやりとりできる半面,端末間の距離などに制限があったはず。それなのに,広域イーサネット・サービスを利用すると東京-大阪間のような長距離でもイーサネットで接続できる。なぜ,こんなことが可能になるのか。それには二つの理由がある。

 理由の一つは,イーサネットの基本的なアクセス制御方式であるCSMA/CD(carrier sense multiple access with collision detection)を使わないから。CSMA/CDは,複数の端末が1本の同軸ケーブルにつながる初期のイーサネットから受け継がれている技術で,端末が同時に通信しないようにしている。同じケーブルにつながる複数の端末が同時にデータ(イーサネットのデータ単位であるMACフレーム)を送り出すと,電気信号がぶつかって相手にうまく届かなくなるので,衝突を避けるために,同じケーブルにつながった端末がデータを送り出していないことを確認してからデータを送るしくみが必要になる。そのしくみがCSMA/CDである。

 CSMA/CDがうまく働くには,運悪く信号が衝突しても,MACフレームの送信を終えるまでに,衝突したことを必ず検出できなければならない。要するに,MACフレームの送信中にその先頭の電気信号がLANの端まで行って戻ってくる距離であればよい。このため,CSMA/CDを使うイーサネットでは伝送速度とMACフレームのサイズによってLANの総延長が決まる。逆にいうなら,CSMA/CDを使わなければLANの総延長は気にしなくて済むのである。

 広域イーサネット・サービスは,ケーブルを端末ごとに独立させ,距離を制限するCSMA/CDを使わないLANスイッチ・ベースのネットワークを採用することで距離(総延長)の制限をなくしている。

 もう一つの理由は,イーサネットとはいうものの,実際にMACフレームを運ぶとして,さまざまなアクセス回線を使えるように対応させたから。イーサネットは本来同軸ケーブルやUTP(非シールドより対線)ケーブルを使う。こうしたケーブルを使うと,電気信号の減衰の関係で伝送できる距離が決まってくる。広域イーサネットでは,こうした電気信号の伝送技術を切り離し,ほかのケーブルや回線でもイーサネットのデータ(MACフレーム)を送れるようにしたのである。

 一番簡単なのは,電気信号を光信号に変換して送る方法。これだと,イーサネット標準や標準を一部拡張した光伝送方式がそのまま使える。そのほか,ATM(asynchronous tranfer mode)などを使う専用線サービスも利用できる。MACフレームさえ送れればいいので,回線の種類に制限はない。つまり,WANサービスの回線を使うことで距離の制限もなくなるのである。

斉藤 栄太郎