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 最近,下り速度30Mビット/秒をうたうCATVインターネット・サービスを始める事業者が増えてきた。数十メガの速度表記ですぐに思い出されるのがADSLサービスのうたい文句だ。「24メガ」や「26メガ」などと言ってはいるが,実際にはほとんどのユーザーがそんな速度で通信できていないのはよく知られている。では,CATVインターネットの「30メガ」サービスも,多くのユーザーは30Mビット/秒で通信できていないのだろうか。今回はこの点を解き明かしていく。

 実は,30メガといっているCATVインターネットでは,局からの距離にかかわらず伝送速度は一定である。モデム自体は間違いなく30Mビット/秒以上の速度で通信している。

 30Mビット/秒以上の伝送速度を実現するケーブル・モデムは,DOCSIS(ドクシス)という標準規格に準拠したもの。DOCSISは,米国の業界団体であるケーブル・ラボが策定した規格で,1998年に最初の仕様1.0が登場した。このときの速度は下りが30.34Mもしくは42.88Mビット/秒,上りが最大10.24Mビット/秒というものだった。

 DOCSISの最新版は2002年1月に決まった2.0である。1.0と2.0の大きな違いは,上り速度を最大30.72Mビット/秒まで高速化したこと。下りの仕様は変わっていない。つまり,DOCSIS準拠のモデムを使っている限り,下り方向の伝送速度は,必ず30Mビット/秒以上を実現しているのである。

 ただし,単純にDOCSISモデムを導入した時点で伝送速度を「30メガ」とうたってサービスを提供したCATV事業者はごくわずかしかいなかった。なぜなら,DOCSISモデム導入当時は,センター側で1ユーザーあたりの帯域を最大数Mビット/秒に絞っていた事業者が多かったからである。

 さらに,一つの帯域を利用するユーザー数も多く設定していた。CATVインターネットは,一つの回線を多くのユーザーで共有して使うタイプのサービスである。そのため,共有するユーザー数が多いと,一人当たりの速度は低くなる。当時は,30メガの回線1本に1000~1500人の加入者を収容している事業者もあった。こんな状況だと,アクセスするユーザー数が少ないときは30Mビット/秒に近い速度で利用できても,多くのユーザーがアクセスすると数十kビット/秒しか速度が出ない。

 CATV事業者各社は,30メガのCATVインターネット・サービスを始めるために,いくつかの対策を講じた。まず,センター側での帯域制限を取りやめた。さらに,一つの回線に収容するユーザー数の上限を低く設定し直した。方法は二つ。1本の同軸ケーブルで収容するエリアを狭くする方法と,CATVインターネットに利用する帯域(チャネル)を複数用意してユーザーごとに割り振る方法である。これらの対策によって,30メガのサービスを提供中のCATV事業者の多くは,ユーザー数の上限を500以下に設定しているようだ。

 こうした対策を講じることで,多くのユーザーが快適にCATVインターネットを利用できるようになった。現在CATV事業者各社はこうして「30メガ」という速度を掲げたインターネット・サービスを提供しているわけである。

山田 剛良