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日経マーケット・アクセスの調査*1によれば,企業LANのトラフィックは年率50%で伸びている。データの中身も変わってきており,今後は参照系だけでなく,更新系でもイントラネットの構築が進みそうだ。トラフィックの削減には,レイヤー3スイッチの導入と伝送路の高速化が効果を上げている。

図1●LANトラフィックの伸び率
1998年12月時点のLANトラフィックを1とした場合の,99年12月までのトラフィック増加率と2000年12月までの増加見込み率。両方を回答した581社の平均値を計算した。99年12月を1とすると,2000年12月見込みは1.59倍になる

 社内LANトラフィックは年率50%増(図1[拡大表示])。その要因の一つは,参照系に加えて更新系でもイントラネット化が進んでいること。レイヤー3を中心としたスイッチの導入と伝送路の高速化がトラフィック削減に効果を上げている(図2[拡大表示])。8割の企業が今後1年間でレイヤー3スイッチの導入を予定し,さらに1/3の企業は,今後支線LANを100Mbps(ビット/秒)イーサネット中心にしていく──日経マーケット・アクセスが2000年2月に実施した調査*1によって,このような企業ネットワークの実態が明らかになった。

LAN構築率は96.5%

 調査によれば,「全社的にLANを構築している」企業は全体(有効回答数634社)の76.8%。事業所ごとや特定グループ単位でのLANも含めると,96.5%が社内LANを構築している。さらに,そのうちの87.0%がLAN-WAN接続を実施しているなど,企業のLAN/WAN構築率は高い。

 社内LANのトラフィックの伸びは,98年12月時点を1とした場合,99年12月時点の平均が1.46倍だった。2倍以上と回答した企業も27.5%ある(図1[拡大表示])。調査対象や質問の仕方が若干異なるため厳密な比較はできないが,2年前,昨年の調査*2では前年比が1.66倍,1.58倍だった。伸びが若干鈍化しているものの,前回までは「社内トラフィック」と尋ねていたのを今回は「社内“LAN”トラフィック」と限定したことなどを考えると,依然トラフィックの伸び率は高いと言えそうだ*3

 さらに,95%近くの企業が今後もトラフィックが増加すると見込んでおり,1年後には現状の1.59倍(98年12月比は2.32倍)になると予想している。

図2●ネットワーク環境の変更作業と効果

WebアプリがC/S型を逆転

 では,急激にトラフィックが増えているLANは,どのような用途に使われているのだろうか。やはりファイル/プリンタ共有や電子メールに利用している企業は多い(図3[拡大表示])。電子メールの普及率は,2000年中に90%を超え,計画を含めると約95%の企業が電子メールを導入済み/予定だ。サーバーやホスト間のデータ連携も意外と多い。

 注目すべきは,社内システムのイントラネット化の進展だ。C/S(クライアント/サーバー)型に代表される専用クライアントを用いたシステムと,WWWブラウザをクライアントとするシステムを比べると,99年12月時点では20ポイント近く前者が多かった。それが,今後の利用予定を積み上げると,2000年12月に並び,その後は逆転する。つまり,これから構築するシステムの多くはWWW技術を用いる。将来は社内システムはすべてWebアプリケーションという企業が10%以上もいる。

 実は調査では,WWW以外/WWWを利用した社内システムともに,照会/検索系と更新系を別々に尋ねた。図3[拡大表示]では,どちらか一方を利用している企業を集計している。内訳を見ると,WWW以外のシステムでは,参照系も更新系も,現状利用と将来利用の比率にさほど大きな差はない。

図3●LAN回線の用途
LANを構築していると回答した612社に対して,その用途を複数回答で尋ねた結果。今後の予定も尋ね,利用企業数を積み上げた

 一方のWWWシステムは,現状利用の企業は参照系が34.3%,更新系が16.8%と圧倒的に参照系が多い。だが2000年12月までに利用予定の企業は更新系24.5%,参照系23.4%とほぼ並び,その後の予定では参照系18.7%,更新系24.0%と更新系の方が高くなる。これは,ステートレスなプロトコルHTTP*を用いるWWWシステムは更新系が苦手だが,Webアプリケーション・サーバー*などの充実によって,更新系システムの開発が容易になってきたことが背景にあると思われる。

L3SWでトラフィック削減

 用途の変化は,トラフィック増加の要因変化にもつながる。図4[拡大表示]は,過去1年間で社内LANトラフィックが増加した理由と,今後1年間で増加が見込まれるものを尋ねた結果である。

 現状では,「パソコンの利用者/台数/利用頻度の増加」を挙げた企業が79.9%と最も多く,それに「メールの利用者/台数/頻度の増加とメールの質の変化」が68.8%と続く。これが,今後は「グループウエアやワークフロー業務(メール以外)の利用者/回数が増加」,「WWWを用いた社内システム利用の増加」などの比重が高くなる。

図4●社内LANトラフィック増加の理由
LANを構築している企業(612社)に,過去1年間のトラフィック増加の理由と今後1年間の増加が見込まれる理由を尋ねた結果(複数回答)

 前回の調査結果でも兆候があったが,トラフィック増加の理由が,物理的な接続数の増加から質(ネットワークの使い方)の変化へ移行する傾向が強まっている。LANやクライアントのインフラ整備が一段落し,いかに有効活用するかの段階に入ってきているからだ*4

 次に,各企業はトラフィックの増加に,どのように対応しているかを見てみよう。98年12月~99年12月に実施したネットワーク環境の変更内容と,それがトラフィック削減もしくはTCO削減に効果があったかを尋ねた結果,レイヤー3スイッチ*(L3SW)が最もトラフィックの削減に効果があった(図2[拡大表示]参照)。導入企業(全体の34.5%)のうちの43.4%が,「効果あり」と回答した*5

 L3SWによるトラフィック削減効果と,図1[拡大表示]で示した増加率の相関関係はなかった。むしろクライアントの台数に比例する。台数が100台未満の場合,L3SWを導入した企業の中で効果ありと回答したのは25.0%に過ぎない。これが100~299台だと36.2%,300~499台だと40.6%,500台以上では55.9%と過半数を超える。

図5●利用している支線LANの種類

支線LANが一気に100Mへ

 L3SWを導入すると,同じブロードキャスト・ドメインに属するマシンの台数を減らせるなどでトラフィックを削減できる。ただ,1台当たりのトラフィック増加に対応するには,伝送路を高速化するしかない。実際L3SWほどではないが,支線LANやバックボーンLANの高速化もトラフィック削減に効果を上げている(図2[拡大表示]参照)。

 この支線LANの高速化は,2000年に一気に進みそうだ。LANを構築していると回答した企業に対して,現在支線LANとして利用しているネットワークを複数回答で尋ねた結果,すでに50%を超える企業が100Mbpsイーサネットを使っている(図5[拡大表示])。とはいえ,主流は,やはり10Mイーサネットだ(同左下)。ただ,今後1年間の主力を尋ねると,10Mイーサネットと答えた企業は半数を割る。33.7%の企業が100Mイーサネットと答えた。

 なお,バックボーンLANでは,現在の主流は10Mイーサネットが47.5%で100Mイーサネットが30.9%。今後1年では,26.0と44.8%と,完全に逆転する。さらに今後はGビット・イーサネットと回答した企業も5.2%いた。

プロトコルはIPに統一へ

 今回の調査では,利用しているプロトコルも尋ねている。その結果,企業で利用するプロトコルのIP化が急速に進み,すでにLANを構築している企業の95%近くがIPを使っていることが分かった(図6[拡大表示])。

図6●利用しているプロトコルの種類
IPとホスト系プロトコルのみを取り出して,グラフ化した

 特に,米IBMのSNA(Systems Network Architecture)に代表されるホスト系プロトコルを利用している企業に着目してみると,そのうちの65.2%がホスト系プロトコルをIPカプセル化してLANに流している。そして,すでに37.7%の企業がホスト系プロトコルそのものはLANには流していない点が興味深い。スイッチを利用したネットワークでは,複数のプロトコルが混在するよりもIPに統一したほうが,より低価格でスイッチの効果を出しやすい。社内システムのイントラネット化も含め,今後も利用プロトコルのIP一本化の傾向は強まっていくと思われる。

 また,担当者がLAN/WANの運用管理をする際に,何らかの作業負荷を感じているかを尋ねたところ,34.5%が「負荷が大きい」と答え,「負荷が多少ある」を合わせると,82.1%が負荷を感じている。そして,IPを利用している企業の1割強が,IPを導入したことで,「資産管理/構成管理」,「セキュリティ」,「ユーザーからの問い合わせ」の作業負荷が増大したと回答した。

(小原 忍=kobara@nikkeibp.co.jp