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Oracle9iの実体が明らかになった。中核製品はOracle8iの後継「Oracle9i Database」とAPサーバー「Oracle9i Application Server」である。ASP(Application Service Provider)が利用するような超大規模システムへの適用を狙い,クラスタリングやキャッシュ機能などを充実させる。ただし,一般企業での利用は,当面はOracle8iを考えた方が良さそうだ。

 米Oracleは2000年10月,プライベート・イベント「Oracle OpenWorld 2000」の会場で「Oracle9i」を発表した。Oracle8iはRDBMSの名称だが,Oracle9iは単体の製品ではなく,「DBMSやWebアプリケーション・サーバー(APサーバー),開発ツールなどをまとめたインターネット・プラットフォームの統一ブランド」(日本オラクル 製品マーケティング本部 サーバー・マーケティンググループ ディレクターの生熊清司氏)を表す。

 製品としては,APサーバーであるOracle9i Application Serverを2001年1月に国内出荷する予定。Oracle8iの後継であるOracle9i Databaseは米国で2001年前半に出荷する計画だが,国内出荷の時期は未定である。開発ツールは,Oracle JDeveloperやDesignerなどをパッケージ化したものが登場してくる見込みだ*1

 Oracle9i Databaseを中心に,ユーザーはOracle9iの導入をどう考えるべきかを探った。

狙いはASP級の超大規模システム

表1●Oracle9i Databaseの主な機能強化点
図1●クラスタリング機能を強化して更新処理を高速化
Oracle8iのOPSを利用したクラスタ構成では,複数ノードから同一データへの更新要求があると,その都度データをディスクに書き戻す処理が発生していた。Oracle9i Databaseは,同様の更新要求をノード間通信を使って処理することで高速化を図る
 Oracle9i Databaseが目指す方向をひと言で表せば,“企業という単位を超えるほど大規模なシステムの要求にこたえる”となる。一般の企業ユーザーが求める拡張性や可用性の枠を超えるための機能を備え,ASP(Application Service Provider)が利用するような超大規模システムをもカバーすることを狙う(表1[拡大表示])。

 拡張性を支えるのが,クラスタリング機能のパフォーマンス向上だ。具体的には,Oracle Parallel Server Option(OPS)を使った更新処理のメカニズムを改善し,性能を引き上げる。Oracle8iのOPSでは,複数のノードから同じデータ・ブロックに対する更新要求があった場合,先に更新を行ったノード上のメモリーから,いったんデータをディスクに書き戻す必要がある(図1の左[拡大表示])。そのため,ノードの数を増やしても更新処理の性能がリニアに上がらないという課題があった。

 これに対してOracle9i Databaseは,ノード間通信を使ってデータを転送し,同様の更新要求をメモリー間で処理できる。その結果,Oracle8iに比べてディスクI/Oを削減し,性能を向上できるというわけだ(同右[拡大表示])。

 現時点でOPSの更新処理性能に悩んでいるユーザーは少ない。さらに,通常のシステムで性能を高める場合は,クラスタ構成を組む前にまずはサーバー機のスペックを上げることを考えるだろう。その意味ではクラスタリング機能の性能向上の恩恵を即座に受けるユーザーは余りいない。ただし今後,ASPやEC(電子商取引)系サイトなどでは障害時のフェール・オーバーに備えてクラスタ構成を導入するケースが増えてくる。そこでは,クラスタリング機能の性能向上が生きてくる。

中小規模はOracle8iがターゲット

 このほかのOracle9i Databaseの新機能では,「SGAの動的変更」や「Virtual Private Database」などが目に付く。前者は,システムを止めて保守する時間が確保できないユーザーに向けた機能だ。ただし,共有プール領域やデータベース・バッファの大きさを動的に変更できるといっても,物理メモリーに余裕があることが大前提である。また,各キャッシュのヒット率を監視してチューニングに結びつけるという体制が整っていなければ,この機能の出番は無い。

 Virtual Private Databaseは,新たに加えたリスト・パーティショニングという機能で実現する。これを使えば,1つのテーブルを会社単位に区切って利用できる。しかし,このような機能が必要となるのは,ASPなどの一部のユーザーに限られるだろう。

 このように,Oracle9i Databaseの新機能は総じて超大規模システムに向けられている。もちろん,オプティマイザといったデータベース・エンジンの基本性能も,Oracle8iに比べて改善されるだろう。しかし,すでにOracle8iが性能面,機能面で安定してきたことを考えると,中小規模のユーザーは当面はOracle8iをターゲットに考えておけば良いのではないだろうか*2

APサーバーはキャッシュに期待

 RDBMSよりも先に国内投入されるAPサーバーOracle9i Application Serverは,2カ月前に国内出荷開始したばかりのOracle Internet Application Server 8i(Oracle iAS)R1.0の後継だ。以前はOracle iAS R1.0.2と呼んでいた製品をOracle9iに名称変更した*3

 機能拡張は多岐にわたるが,パフォーマンス面ではデータ・キャッシュを活用していることに注目したい。キャッシュにはDB側とWWWサーバー側の2種類がある。DB側キャッシュは,DBのテーブルやビューをAPサーバーのメモリー上に複製しておき,参照要求に対してはそのデータを検索させることで性能を向上させる。またWWWサーバー側キャッシュは「Web Cache」と呼び,HTMLページをキャッシュする。物理メモリーを豊富に積める環境では,これら2種類のキャッシュ機能によって大きな効果が期待できる。

 携帯電話やPDAといったモバイル機器に向けたWireless Editionを追加することもポイントの一つだ。これはコンテンツ変換機能などを備えた「Portal-to-Go」を統合した製品であり,Enterprise Editionの上位版として登場してくる。

(森山 徹=tmoriyam@nikkeibp.co.jp)