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非互換性問題で大きな進歩

 MicrosoftのOS間で,アプリケーションの非互換性に悩まされてきたユーザーは多いだろう。互換性をうまく保てなかった最大の原因は,同じ「Win32」と呼ぶAPIを採用したOSでありながら,同じAPIを同じようにコールしても異なる値を返す場合があるからだ。そのため,Windows95/98/98SE/Me/NT4.0/2000のあるOS上で開発したアプリケーションが他のOSで正常に動作するとは限らない。

写真2●「AppFix」の実行画面
ラジオ・ボタンでエミュレーションするOSを選ぶ
 XPはこの欠点を抜本的に改善する「AppFix」と呼ぶ仕組みを実装した。例えば,Windows95用にコーディングしたアプリケーションを,あらかじめWindows95用であると設定してXP上で起動できる(写真2[拡大表示])。XPはアプリケーションがAPIにアクセスした時に,Windows95のWin32環境と同じように振る舞う。このため,非互換性問題が発生しにくい。

自動判別するモードも備える

 AppFixがエミュレーションするOSはWindows95,NT4.0,98/Me,Windows 2000の4つ。また,APIへアクセスした際に,エミュレーションするOSを自動的に判別するモードも備える。実際,この自動モードで「Microsoft Office 97」,「駅すぱあと」,「Netscape Communicator 6」などを試してみたが,どれも問題なく動作した。さらにWindows95専用のゲーム・ソフトや,Windows95/98以外では動作しなかった独自アプリケーションも,XPで正常に動作した。現在マイクロソフトは,ソフト・ベンダーと協力して自動判別モードのデータを収集している。

 この機能を利用することで,これまでのOSほど手間をかけずに,自社開発アプリケーションをXPに移行させられそうだ。ただし,XPがアクセスを許可していないファイルやメモリーにアクセスするアプリケーションは,AppFixを用いても動作しない。対応作業が必要になる*3

TSEのサーバー機能を標準搭載

図2●リモート・アシスタンス
Windows XPではOS標準の機能だけで,ネットワークを介したPCの遠隔制御が可能になった。この機能を利用して「リモート・アシスタンス」と呼ぶ遠隔操作を含むヘルプデスク業務ができる
 
図3●Windows XPに移行すべきか
移行すべきか否かは,移行の手間と,移行によって得られるメリットのトレード・オフで判断する。その内容は,現在利用しているOSによって異なる
 企業ユーザーが注目すべきXPのもう一つの機能がヘルプデスク業務をサポートする「リモート・アシスタンス」である。

 XPはサーバー向けのWindows 2000またはWindows NT 4.0,Terminal Server Editionのみが備えていたターミナル・サービスのサーバー機能を標準で備えており,リモートからデスクトップを操作できる。

 この機能に,管理者に障害を通知する機能や画面上でのチャット機能,音声通話機能を組み合わせたのがリモート・アシスタンスである(図2[拡大表示])。例えばある社員のPCで問題が発生した場合,ネットワーク経由でそのPCに接続することで,その社員の場所に行かなくても該当PCを操作できる。遠隔地からアプリケーションやデバイス・ドライバをインストールし,PCを再起動することも可能だ。

あなたはXPに移行すべきか?

 企業ユーザーがXPに移行すべきか否かは,移行によって得られるメリットと,移行にかかるコストの損得勘定で判断する。どのようなメリットが得られるかは現在利用しているOSによって異なる。Windows9x/NT4.0/2000から移行するメリットとコスト要因をそれぞれ見てみよう(図3[拡大表示])。

 Windows9xを利用するユーザーは,(1)Windows 2000に移行する,(2)XPに移行する,(3)移行しない――の3つの選択肢がある。(1)と(2)に共通するメリットとしては,メモリー保護やシステム・ファイル保護などによってOSの安定性が向上する,Active DirectoryなどWindows 2000の新機能を利用できることなどが挙げられる。コスト要因としては,OS単体の価格が上がる*4,高いハードウエア・スペックが必要になることがある。加えて(1)のWindows 2000なら,すぐに移行のための検証作業に入れる。しかし,自社アプリケーションがOS間の非互換性に悩まされる可能性が高い。(2)のXPであれば,XP独自の新機能が利用できる上に,非互換性で苦労するケースも少なそうだ。その代わり,必要なハードウエア・スペックはWindows 2000よりも高くなるし,製品版が出荷されるまで評価できない。

 Windows 2000やXPの新機能が不要であれば,(3)の移行しないという選択もあり得る。ただし,新しいセキュリティ・ホールが見つかっても修正パッチが出ないなどサポート面の不安は残る*5

 NT4.0を利用するユーザーが移行を検討する場合も,ポイントは似たようなものである。既存アプリケーションを移行する面倒はWindows 2000よりもXPの方が少ないが,XPの製品版出荷を待つ必要がある。またWindows 2000を利用するユーザーがXPに移行するメリットはXPの新機能ぐらいしかない。一般的な移行コストを考えると,効果は少ないだろう。

(矢崎 茂明=yazaki@nikkeibp.co.jp