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Windows 2000サーバーの可用性を高める手段として,実績のあるクラスタ・システムに加えて「FTサーバー」という選択肢が増えた。「ハード障害時にシステムを停止せずに済む」,「アプリケーションに手を加えずすぐに利用できる」などの利点があるが,クラスタに比べて劣る点もある。双方の特徴を知り,自社に合った製品を選びたい。

写真1●日本ストラタステクノロジーのWindows 2000搭載FTサーバー「ftServer 5200」
CPUやメモリー,HDDなど主要なハードウエア・モジュールを多重化することでハードの耐障害性を高めた
図1●FTサーバーのアーキテクチャの概要(2重化の例)
2重化したハードウエア上で同じ処理を並行して実行している。サーバー内部の専用ASICが複数系統の処理結果を比較し,障害を検出すると当該モジュールを切り離す
図2●あおぞら銀行のシステム概要
2台のFTサーバーに約500台のクライアントPCを接続,処理を分散している。同一店舗内の複数台のクライアントPCは,異なるFTサーバーに接続されており,ソフトウエア障害などでFTサーバーが停止しても,店舗内のいずれかのクライアントPCから他のFTサーバーにアクセスできる仕組みだ
 Windows 2000サーバーの可用性を高める手段としては,複数のサーバーを組み合わせて1台のサーバーと見なして運用するクラスタ・システムが一般的だ。大規模から比較的小規模なシステムまで導入実績は数多い。

 これとは別の手法でサーバーの可用性を高めたのが,FT(無停止)サーバーである(写真1)。NECと日本ストラタステクノロジーが共同開発し,2001年5月に出荷開始した。昨年後半,東芝と日立製作所がOEM供給を受けて販売を開始したことで,国内4社による供給体制が整った(表1[拡大表示])。ユーザー企業への導入も増えつつある。

表1●国内で入手可能なWindows 2000搭載FTサーバーの例

 FTサーバーは,CPUやメモリー,ハード・ディスクなどを多重化し,同期処理を実行する。サーバー内のASIC*が多重化したハードウエアの処理結果を比較し,障害を検知する仕組みだ(図1[拡大表示])。ハード障害時には当該モジュールを切り離すことで,継続運転を可能にする。

 FTサーバーの登場で,Windows 2000サーバーの可用性を高める選択肢は増えた。ただ,FTサーバーはクラスタ・システムを完全に置き換えるソリューションではない。それぞれの特徴を知り,自社に必要なのはどちらかを見極める必要がある。以下,「ハード/ソフトの可用性」,「アプリケーションとの関係」,「価格」の面から両者の違いを探った。

ハード故障かOS障害か

 CPUやメモリーの故障など,ハードの耐障害性についてはFTサーバーに軍配が上がる(表2[拡大表示])。クラスタ・システムは,ハード故障時に他のサーバーに処理を引き継ぐ際,処理が一時的に中断するが,FTサーバーは故障したハードの切り離しが瞬時に完了する。「DBサーバーのトランザクションなどにも影響することなくサーバーの継続稼働が可能」(日立製作所 インターネットプラットフォーム事業部 開発本部 製品マーケティング部 主任技師 大黒浩氏)である。

表2●FTサーバーとクラスタ・システムのハード/ソフト耐障害性の比較

 一方,ソフトウエアの耐障害性はFTサーバーの方が劣る。特にOSやアプリケーションがクラッシュした場合,再インストールかバックアップ・テープからの復旧しか対処策がない。場合によっては長時間システムが停止する恐れがある。サーバーの可用性を高める主たる目的がOSやアプリケーションのクラッシュ対策なら,クラスタ・システムを検討するべきだ。

 ただし,FTサーバーでOSやアプリの障害に耐えるシステムを構築することも可能だ。例えばあおぞら銀行(旧日本債券信用銀行)は2001年9月に情報系システムを刷新した際,ハードの可用性を高める目的でFTサーバーを導入したが,ソフト障害に対するリスクも回避している。FTサーバーは,本支店に設置した約500台のPCからの顧客情報の閲覧や貸出申請書のデータ送受信などの用途に採用。各店舗内のPCは,半数はFTサーバー(1)に,残りの半数は同(2)に接続されている(図2[拡大表示])。ソフト障害などで自分が接続されているFTサーバーが停止した場合は,もう1台のFTサーバーに接続されている他のPCを利用することで,業務が中断することを防いでいる。

FTは稼働アプリの検証作業が不要

 FTサーバーでもクラスタ・システムでも要件に合う場合は,サーバー上で動くアプリケーションの対応状況が重要なチェック・ポイントになる。

 クラスタ・システムでは,アプリケーションごとに,共有するリソースやフェール・オーバーの手続きを記述したスクリプト・ファイルを作成する必要がある*1。クラスタ環境で実績のあるOracleやSQL Serverなどは,クラスタ・ベンダーがあらかじめスクリプトを用意しているケースが多いが,「実績のないソフトや自社開発アプリなどは,スクリプトの作成や動作検証に時間がかかる場合がある」(大黒氏)。

 FTサーバーの場合,自社開発を含めてアプリケーションには一切手を加える必要はない。エヌ・ティ・ティ ネオメイト中国(旧NTT-ME中国)は,その点を評価してFTサーバーを導入した。同社は,地滑りなど土砂災害の発生の恐れのある個所にセンサーを設置し,災害を予見する土砂災害監視サービスを提供しているが,そのサーバーのリプレース時に,当初クラスタ・システムの導入を検討した。しかし「それまで1度もトラブルが起きていないアプリケーションに手を加えたくなかった」(ITビジネス本部 eビジネス担当 担当部長 光永顕氏)ため,最終的にFTサーバーの導入を決めた。

(菅井 光浩=sugai@nikkeibp.co.jp)