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業務システムのフロントエンドにFlashやPDFを採用する企業が相次いでいる。WWWブラウザでは実現が難しい要件を実装できるほか,ほとんどのクライアントPCに導入済みで無償で利用可能な点も普及を後押ししている。ただし,開発環境の貧弱さや,特有の仕組みなどに注意する必要がある。

表1●FlashやPDFを業務システムのフロント・エンドに利用している企業の例

 「表計算ソフトのような複雑な画面を作ろうとすると重くなる,サーバーにアクセスしないと画面遷移ができないため遅い」,「リターン・キーやファンクション・キーに機能を自由に割り当てられない」,「既に申請用紙があるのに,画面を作り直さねばならず,しかも用紙とかけはなれたレイアウトになってしまう」――業務システムのフロントエンドとしてWWWブラウザを採用した際に,不満を抱くユーザーは多い。このような問題を解決するために,ほとんどのクライアントPCに導入済みで無償で利用可能なFlashとPDFを利用するユーザーが増えてきた(表1[拡大表示] )*1

 トレイダーズ証券は2002年3月にFlashを全面採用してインターネット外貨取引システムを構築した。ソニー銀行もインターネット・バンキングのインタフェースにFlashを採用している。アクサ生命保険やコメット情報は,実際の帳票と同じレイアウトを備えるPDFファイル上に,Acrobatのフォーム機能で入力項目を設けて,データを入出力するフロントエンドとして活用している。

図1●WWWブラウザで実現が難しい要件をFlashやPDFで実現
トレイダーズ証券では,為替相場などリアルタイムに変化する情報をPush型で表示する手段としてFlashを活用。一件楽着インターネットサービスではFlashを採用することで,ローカルPC上で動作する会計システムと同様の操作感を実現した。一方,コメット情報やアクサ生命保険は,既存の紙の帳票をそのままインタフェースとして活用する目的でPDFを採用している

 FlashやPDFが利用され始めた理由は,冒頭に挙げたような,WWWブラウザでは実現が難しい要件が容易に実装できるためだ(図1[拡大表示])。トレイダーズ証券はFlashを採用し,刻々と変化する為替相場をサーバーからクライアントにPush型で配信することで,サーバーへのアクセスを減らし,負荷を抑えた。一件楽着インターネットサービスもFlashを活用し,ローカルPC上で稼働する表計算ソフトと同様の機能をASPサービスとして実現した。

 Flashを提供するマクロメディアによれば,「正確な数は把握できていないが,2003年中には100社近くの採用事例が出てくる予定」(取締役CTO 田中章雄氏)という。

 一方のPDFは,「既存の帳票をPDF化したものを入力インタフェースとして使用できる」などの点が採用の決め手となっている。PDFにスクリプトを埋め込み,記入漏れや計算ミスなどのチェックをすることも可能だ。

 従来,WWWブラウザの機能を補う,かつクライアント・モジュールが無償の技術としては,JavaアプレットやActiveXコントロールなどが使用されることも多かった。しかし,Javaアプレットは低スペックのマシンでは性能が出ないほか,Windows XPに標準搭載されておらず,かつJava VMのサイズが大きいため,稼働環境の配布という面では,FlashやPDFの方が容易になっている*2。また,ActiveXコントロールは稼働OSがWindowsに,WWWブラウザがInternet Explorerに限られてしまう(表2[拡大表示])。

 逆に,JavaアプレットやActiveXコントロールと比べたFlashやPDFの問題は,開発生産性などである。開発環境の貧弱さや,特有の仕組みなどに注意する必要がある。

Flashで使い勝手を改善

 Flashはアニメーションやゲームを実行するツールであり,開発しさえすれば,あらゆる操作性やデザインを実現することが可能だ。

表2●WWWアプリケーションのフロントエンドとしてライセンス無償で使用できる主な技術

 一件楽着インターネットサービスは,インターネット経由で会計データを入力,サーバー側でデータを処理するASP(Application Service Provider)サービス「楽着会計」のデータ入力画面にFlashを採用した*3

 同社は当初,HTMLとJavaScriptだけでフロントエンドを構築する予定だったが,HTML中に,入力候補を表示するSELECTタグを多用したフォームを30列ほど埋め込んだところ,ファイル容量が1Mバイトを超えてしまった。加えて「JavaScriptの処理がクライアントPCのリソース*を食いつぶしてしまい,Windows9xとInternet Explorerの組み合わせではWWWブラウザが落ちてしまう現象が起きた」(一件楽着インターネットサービス ネットワーク事業部部長の岩田靖史氏)。

 インタフェースを簡素化することでサービス開始に漕ぎ着けたが,「一度に1行しか編集できず,編集したい行を選んでから入力しなければならない画面になってしまい,使い勝手が犠牲になった」(岩田氏)。

 そこで同社は,HTMLとJavaScript以外の技術を模索した。ActiveXコントロールとJavaアプレットが候補として浮上したが,「ActiveXコントロールはクライアント環境がWindowsに限定されてしまう。Macintosh上でも稼働することを売りにしたかった」(岩田氏)ため,ActiveXコントロールは候補から外した。一方,Javaアプレットでは使い勝手の問題はクリアーできるが,「画面描写のレスポンスが遅い」(同)ためあきらめた。

 最終的に残ったのがFlashだった。「表計算ソフトのような画面を作成してもリソースや性能の問題はない。リターン・キーによる入力項目の移動やファンクション・キーの割り当てが可能。画面描写のレスポンスも想定していた速度が実現できた」(岩田氏)。

 トレイダーズ証券の「外貨王」では顧客向け取引画面にFlashを採用した。画面上に刻々と変わる為替相場を表示しているが,「Pull型でWWWブラウザをリロードして為替相場を表示する方法だと,ユーザー数の増加にともないサーバーに大きな負荷がかかる。WWWブラウザの『戻る』ボタンを無効にしたかった理由もありFlashの採用に踏み切った」(開発を担当したエア・ロジック 代表取締役社長兼CEO 羽生章洋氏)。解決方法としてJavaアプレットも検討したが,「Windows XPにJava VMが標準搭載されておらず,Java VMの配布や問い合わせ対応の手間がかかる」(羽生氏)点がネックとなった。