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 すでにSE(システム・エンジニア)として仕事をしている人も,SEを目指して勉強中の人も,そしてSEと付き合っていかなければならないプログラマも,SEがどのような仕事で,どんな知識が必要になるかを理解することは意義があることだ。

 プロジェクトのチームをまとめるリーダー,顧客対応が中心でほとんどコードを書くことのないSE,顧客先に常駐してメンテナンスを行うSE,外部の人間とあまり会わずにほとんどプログラマのようなSE――さまざまな種類のSEがいる。

 ここではそうした人たちに楽しく読んでもらえそうな書籍,もしくはそうしたSEがどのような仕事をしているのかを知ることのできる書籍を紹介する。

SEの真の姿が伝わる一冊

SEのフシギな生態
失敗談から学ぶ
成功のための30ヶ条

きたみりゅうじ 著
技術評論社 発行
2003年5月
254ページ

 最初に紹介するのは「SEのフシギな生態」である。企業システムの開発/営業,パッケージ・ソフトの開発を経てライター兼イラストレータになった著者が,自身の経験と豊富な取材からSEのつらさと楽しさを面白おかしくまとめた本である。

 マンガであらすじを見せて,続く文章で詳しく述べる構成になっており,とにかく読みやすい。笑って読んでいられるうちはいいが,これを読んでSEになるのをやめようとは思わないでほしい,と心配になるのは筆者だけか。

業界用語を理解するために

人月の神話
――狼人間を撃つ銀の弾はない

Frederick P. Brooks Jr. 著
滝沢 徹,牧野 祐子,富澤 昇 訳
アジソン・ウェスレイ・パブリッシャーズ・ジャパン 発行
1996年2月
320ページ
リファクタリング:
プログラミングの体質改善テクニック

Martin Fowler 著
児玉 公信,友野 晶夫,平澤 章,
梅澤 真史 訳
ピアソン・エデュケーション 発行
2000年5月
423ページ

 SEの世界には「銀の弾」「リファクタリング」といった,ほとんど一般の人には意味がわからないキーワードがある。

 例えば「銀の弾」は,「人月の神話――狼人間を撃つ銀の弾はない」で語られるキーワードだ。本書は,SEに限らず,IT業界に属する人,もしくはそれを目指す人ならぜひ読んでおくべき定番中の定番である。初版の発行は1975年。世界中の多くのSEたちに読まれ,SEの共通知識となっている。

 内容は,当時IBMのメインフレームの開発者だった著者が,プロジェクトを進行させるうえでの問題について考えたもの。「銀の弾」とは,ソフトウエアの生産性を確実に向上させる“万能の”プログラミング技法のことで,本書のテーマは「そんなものは無い」だ。

 「リファクタリング」は,「リファクタリング:プログラミングの体質改善テクニック」で語られる,「ソフトウエアの品質を向上させるテクニック」のこと。よく使われるキーワードなので,知っておいて損はない。本書は技術解説書だが,リファクタリングがどのようなときに有効で,何を実行すべきかを把握できる。裏表紙の見開きにある,システムの問題(の前兆)と対処策のリストが役立つはずだ。

相談されたときに読むべき本

コンサルタントの秘密
――技術アドバイスの人間学

Gerald M. Weinberg 著
木村 泉 訳
共立出版 発行
1990年12月
254ページ
コンサルタントの道具箱 
勇気と自信がもてる16の秘密

Gerald M. Weinberg 著
伊豆原 弓 訳
日経BP社 発行
2003年7月
264ページ

 開発プロジェクトの話で多く引用されるといえば,Gerald M. Weinberg(ジェラルド・M・ワインバーグ)氏の著書が有名だ。IT業界でコンサルタントとして働き,そこで得たノウハウを数多くの本に書いている。

 彼の著作をまだ読んでいないなら「コンサルタントの秘密――技術アドバイスの人間学」と「コンサルタントの道具箱 勇気と自信がもてる16の秘密」をお薦めする。2冊とも彼のコンサルタントに対する考え方のエキスがよく染み込んでいて,読めば読むほど味が出てくる。

 「コンサルタントの秘密」は代表作といえる作品。コンサルタントはなぜ大変かに始まって,ものの考え方,価格設定の仕方まで広くコンサルティング業についてアドバイスしている。

 具体的に何をするべきといった押し付けがましいものはなく,関連したエピソードの中から自分でその意味をくみ出すといった読み方が必要になる。エピソードは面白く,読み物として読めるが,行間まで読み取ろうという気持ちで読めば,より深く理解できるだろう。さっと読んで楽しんでもよいし,心して取り組めば得るものがある。IT関連のコンサルタントでなくても,何らかの会合をする機会がある人(ほとんどすべての人だろう)なら,本書の良さが理解できるはずだ。最終部分に,文中で説明した法則をリストアップしてあり,ここを読んで面白いと思えた部分から読んでもよいだろう。

 本書の続編が「コンサルタントの道具箱」である。とはいえ,必ずしも「コンサルタントの秘密」を読んでからこちらを読む必要はない。内容としても重なる部分は少なく,独立した書籍と考えていい。

 体裁も大きく違う。「コンサルタントの秘密」は縦書き2段組,「コンサルタントの道具箱」は横書きだ。翻訳者も違うので,できればさわりを読んでみて,読みやすいと感じる方を選ぶのがいいだろう。

SEの現場の鉄則を身に付けたいなら

信頼される
SEの条件

馬場 史郎 著
日経BP社 発行
2003年3月
207ページ

 コンサルティング全般に対する考え方ではなく,ずばり優れたSEになるための注意をまとめた本が読みたいというのなら「信頼されるSEの条件」がよい。SEとして成長するための教訓がストレートに記されていて,ワンランク上を目指すならうってつけだ。

 この本は,著者である馬場史郎氏が長年のSE経験とSE教育の経験から得たノウハウをまとめたもの。ベースになっているのは,日経コンピュータの同氏による連載だ。語気が強く,メッセージも明解な文章は,読者に元気を出させてくれる。苦労の多いSEの仕事でへこみそうになったときにこの本を読めば,もう一度がんばり直そうという気分にさせられる。

 内容は,SEの鉄則とその説明であり,そこに筆者がどのような経験をしてどのように成功または失敗したかが織り交ぜてある。経験談が多く,読み物としてページをめくって楽しむとこともできる。読んでいるうちに,知らぬ間にノウハウが身に付くだろう。

テスターになるための教科書と現場に即した鉄則本

ソフトウエア・テストの技法
Glenford J. Myers 著
長尾 真 監訳
松尾 正信 訳
近代科学社 発行
1980年3月
192ページ
ソフトウエアテスト
293の鉄則

Cem Kaner,James Bach,Bret Pettichord 著
テスト技術者交流会
<LLST翻訳チーム> 訳
日経BP社 発行
2003年4月
303ページ

 ソフトウエア開発技術の中で,目立たないが重要な作業工程と言えるのがテストである。SEと言われてテスターを思い浮かべる人は少ないだろうが,テスト工程が必要ないというSEはいないだろう。SEとしてテスト技術を学ぶのは,コンサルティングのような対人技術と同じくらい重要なのだ。

 テスト技術を学ぶのにぜひお薦めなのが「ソフトウエア・テストの技法」である。初版が1980年発行の古い本であるが,それだけにこの本を読んでテストを学んだ人も多いはず。多くのテスターたちの共通知識になっている。

 カラーのページはない,図も少ない,堅苦しい雰囲気…,一見して読みやすいとは言えない。だが実際に読んでみると,素直な文章で理解しやすいことがわかるだろう。現代のソフトウエア・テストの基礎となっている技術/考え方がしっかりとまとめられているので,入門者には最適な一冊である。テスターになる準備として読んでもよいし,我流のテスト技術しか持たないプログラマが体系化されたテスト技法を学ぶのにも役立つ。

 一方,現場で活躍中の現役テスターに役立つメッセージが欲しいという場合には「ソフトウエアテスト293の鉄則」が最適だ。

 この本には,テスター経験の長い著者たちが現場で培ったノウハウが書かれている。例えば,「数字しか見ない経営陣ほど危険なものはない」「部下を一人の経営者として扱え」「ユーザー・インタフェースは変わるためにある」といった,含蓄のあるメッセージが並んでいる。ただ,鉄則のタイトルには深い意味が込められているものもあり,表面だけを見て中身を想像するのは難しい。さらっと読むこともできるが,じっくりと意味をくみ出して読んでほしい。

 293という中途半端な数字は,無駄なものを入れていたり,無理して追加したわけではないことを表している。必要十分な量の鉄則なのである。