★Windows 9x系最後のOS,Windows Meが早ければ今年10月にも登場する。マイクロソフトは「家庭ユーザーにフォーカスした」と明言しているが,現行のWindows 98のように実際には企業でも使われるだろう。
★5月末にプレス向けに配布されたベータ版を使って,ネットワーク機能など企業システムで生かせそうな機能を評価してみた。
★システム復元機能をはじめとする,障害対策用の新機能は魅力である。しかし,「落ちやすい」というWindows 9x系の基本構造は改善されていない。Windows 2000のActive Directoryと連携する機能も備わっていない。

図1●Windows Meのデスクトップ
デスクトップやメニューの表示はWindows 2000 Professionalと区別がつかないほど似ている。しかし,OSの機能自体はWindows 98 Second Editionとほぼ同じだ。

 マイクロソフトは,Windows 98 Second Edition(SE)の後継となるクライアント向けOS「Windows Millennium Edition(Windows Me)」を今秋出荷する。6月に製品候補版(RC:Release Candidate)を一部のハードウエア・ベンダーに提供し始め,プリインストール・マシン向けのRTM(Release To Manufacturing)版を7月中にも出荷する。パッケージ版の出荷は10月が有力だ。米国では9月14日に出荷することが決まった。

 マイクロソフト プラットフォーム製品マーケティンググループの御代茂樹グループマネージャは,プレス向け説明会で「Windows Meは家庭ユーザーにフォーカスしている。企業で利用してもらいたいのはWindows 2000 Professional」と強調した。しかし,実際にはそう思惑どおりにはいかないだろう。日経マーケットアクセスが上場企業を対象に行った調査では,2000年度に導入するクライアントOSの65%をWindows 95/98が占めた。Windows Meが出れば,これらの代わりに導入される可能性は大だ。

 確かにWindows NT/2000の導入比率は着実に増えているが,Windows Meが企業システムのクライアントOSとして選ばれることも十分にあり得る。Windows 2000出荷後の新OSということもあり,Windows 2000との連携機能などに期待を寄せているユーザーも多いはずだ。ここでは,5月末に配布されたベータ版を使って,企業システムで使った場合のWindows Meの実力を見ていこう。

見た目はWin 2000,中身はWin 98

図2●Windows 95/98の仕様はそのまま残る
13文字以上の共有フォルダを表示できなかったり,複数のアカウントを使い分けられないといったWindows 95/98の仕様はそのまま残っている。
 Windows Meは一見すると,Windows 2000と見間違うほどよく似ている(図1[拡大表示])。アイコンが同じだけでなく,使用頻度の高いメニューだけを表示する機能なども同様に備わっている。

 しかし,中身はWindows 98とほとんど変わりがない。Windows MeはWindows 98 SEのマイナー・バージョンアップ版であり,いわば「Windows 98 3rd Edition」である。OSの構造もWindows 98と基本的には同じだ。システムとアプリケーションとでメモリーを分けて管理していないため,「アプリケーションが原因で,OS自体もハングアップする」という問題は解消されていない。また,「長い名前の共有フォルダを表示できない」「ログオン時とは異なるアカウントを使ってサーバーにアクセスできない」といったネットワーク機能の制限も残っている(図2[拡大表示])。NTドメインが複数ある環境や,ワークグループ環境では使い勝手が悪いままだ。

 さらに,Windows 2000 Serverが出荷されたあとのOSではあるが,Active Directoryと連携する機能は一切備わっていない。ユーザーの所属組織に合わせてアプリケーションを自動インストールするといったことは不可能だ。近い将来Active Directoryでネットワークを管理する計画があるならば,Windows Meの導入はやめた方が無難だろう。

システム障害の対策機能が充実

 一方,Windows 95/98を使っていて何ら不都合がなく,当面はActive Directoryでクライアント・マシンを管理する予定もないのであれば,クライアントOSの候補となる。Windows 2000には見劣りするが,Windows 98 SEに比べれば機能が強化されているからだ(図3[拡大表示])。

 Windows Meには,システム障害対策のための3つの機能が備わった。1つは,システム・ファイルを削除/置換できないようにする「ウィンドウズ・ファイル保護機能」。2つ目はマイクロソフトが保証していないデバイス・ドライバの導入時に警告を出す「ドライバ署名」である。これらは,Windows 2000ではすでに搭載している。そして,3つ目がWindows Meの最大の特徴となる「システム復元機能」だ。Windows 2000にも備わっていない新しい機能である。

日時を指定するだけで元の状態に

図3●Windows 98,およびWindows 2000との比較
Windows 98よりはシステム障害に強くなった。しかし,Active Directoryとの連携できない点は,Windows 2000への移行予定がある企業ではマイナスとなる。
 デスクトップの設定を変更したり,フリーウエアをインストールしたりして,トラブルに陥ることがある。システム復元機能を使うと,初心者でも簡単にシステムを正常な状態に戻せる。 

 Windows Meでは,アプリケーションを導入したりシステムの設定を変更すると,レジストリの更新情報やデスクトップの設定情報を\_RESTOREフォルダに自動的にバックアップする。もし,システムを正常な状態に戻したいときは,パソコンの調子がよかったと思われる日時をカレンダ上で指定するだけでよい(図4[拡大表示])。バックアップ情報を元にシステムを復元する。 

 ただし,アプリケーションのインストール・プログラムが「Install Shield 6.1」以降でないと削除されなかったり,すでに削除した(ごみ箱を空にした)ファイルは元に戻らないという制限があるため,過信は禁物だ。何ら設定を変えなくても1日に約3回設定情報をバックアップし,そのたびに約4Mバイトずつディスクを消費する点にも注意したい。

SOHO向け設定ウィザードを追加

図4●システム復元機能で障害前の状態に
定期的にシステムの変更状態などを記録することで,いつでも以前の状態に戻せる機能がついた。アプリケーションのアンインストールも自動的に行われる。
 数台のパソコンを利用しているSOHO(Small Office Home Office)向けの機能も強化された。「ホームネットワークウィザード」である。

 Windows 95/98には,ファイルやプリンタを共有するネットワーク機能がある。Windows 98 SEでは,インターネットの接続状態を複数のクライアント・マシンで共有する機能も追加された。しかし,これらの設定はWindows 95/98を熟知していないと難しかった。ホームネットワークウィザードを使えば,設定を対話的に,しかも簡単に行える。

 ファイルをネットワークで共有したり,インターネットに複数のマシンから接続させたいがサーバー機までは必要ないといったSOHOユーザーにとって,ホームネットワークウィザードは心強いユーティリティになる。

来年にNTカーネルの後継OSが登場

 Windows Meは,MS-DOSの16ビット・アーキテクチャを引き継ぐ最後のOSとなる。マイクロソフトは,2001年中にもWindows 2000の次期版Whistler(開発コード)を出荷する見込みだ。Whistlerには個人向けパッケージもあり,それがWindows Meの後継となる。

 3年から5年のスパンで計画を立てる企業システムで,いずれ本流からはずれてしまう製品を選択すべきかどうかは悩ましい。Windows 2000 Serverを導入する計画があれば,Windows 2000 Professionalを導入するか,Whistlerを待った方がよさそうだ。

(目次 康男=metsugi@nikkeibp.co.jp)