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★大きなブームから1年強。Linuxへの関心が再び高まっている。きっかけは,「全サーバーでLinuxをサポートする」と宣言した日本IBMの発表。それを追いかけ,PCサーバー・ベンダー各社がLinux対応を強化している。

★Linuxの扱いは従来,「動作確認」情報を公表するにとどまっていた。ところが,障害対応を含め「動作保証」まで踏み込むベンダーが現れ始めた。

★Linux利用環境はもはやWindows NT/2000に追いついたのか。PCサーバー・ベンダーのLinuxへの対応状況を探ってみた。

 「メインフレームからモバイル機器まで,Linuxを本格的にサポートする」。9月7日,日立製作所の小高俊彦専務 情報・通信グループ統括本部長は発表会でこう宣言した(p.24参照)。NTを基幹業務に適用するための高可用性サポートをいち早く提供するなど,Windows NT/2000に最も積極的だったNECも,「インターネット分野はLinuxの方が有望。独り勝ちしているサンにはLinuxで対抗する」(NECソリューションズの小林一彦執行役員常務)とLinuxへの傾斜を強める。

 ここへきて大手サーバー・ベンダーがLinuxに本腰を入れ始めたのは,日本IBMの発表の影響が大きい。同社は5月17日,大歳卓麻社長以下,サーバー,PC,ソフトウエアの各事業部長が出席し,全社を挙げてLinuxに本気で取り組む姿勢をアピールした。「全サーバー製品でLinuxをサポートするほか,主要ソフトをLinuxに移植する」と,全面的な支持を表明したのである(図1[拡大表示])。実際,「ユーザーの反応もよく,PCサーバーのNetfinityでLinuxを採用する案件が増えている。Netfinityの2000年出荷分のうち,2割がLinuxになりそうだ」(Netfinity&Solution事業部事業企画の藤本司郎部長)という(p.27に関連記事)。

図1●サーバー・ベンダーはLinux情報提供の専用ページを用意し始めた
日本IBMコンパックコンピュータの例。NECや日本HP,富士通も専用ページを持っている。

 本誌は昨年6月号で「NT対抗として勢いづくLinuxの実力」を特集した。記事では大きな課題として,PCサーバー・ベンダーのLinuxに対するサポートがNTに比べ見劣りする点を指摘した。では,どこまで改善されたのだろうか。

IBMはカタログにLinuxを記載
デルは自社サイトで修正モジュール

 PCサーバーでのLinux対応について最も積極的なのは,日本IBMとデルだろう。Netfinityの現行カタログのサポートOS欄を見ると,NT Server 4.0とWindows 2000 Serverと同列に,Red Hat Linux 6.1とTurboLinux Server 6.0が記載されている。「カタログに載せるかどうかはPCサーバー・ベンダーにとって大きな意味を持つ。メーカーがOSの動作を保証することを意味するからだ」(藤本氏)。

 日本IBMは今年2月,厚さ1U(約4.4cm)の薄型サーバーNetfinity 4000Rの発表時に,Red Hat Linuxについて「動作保証」まで踏み込んだ。それまでは,Netfinityでテストした結果を「動作確認」情報として提供するにとどまっていた。サーバーに障害が発生した場合に,切り分けはユーザー自身で行う必要があるが,OSの障害であっても日本IBMのサポート・センターで受け付ける。日本IBMは米IBM経由で米Red Hat Softwareに連絡し,問題を解決する。これは「日本IBMの対応としてはWindows NT/2000と遜色ないレベル」(藤本氏)である。その後,TurboLinux ServerもサポートOSに追加した。

 デルもPowerEdgeでRed Hat Linuxについて,Windows NT/2000並みの動作保証を実施している。米DellとRed Hatは6月20日,戦略的な提携を結んだ。これにより,ユーザーのところでOSの障害が発見された場合,DellとRed Hatが協力して問題解決にあたり,必要であればソースを改良する。改良されたソースはDellのWebサイトでも公開し,ユーザーはそこからダウンロードできる。

 富士通はPRIMERGYでOpenLinux eServerとTurboLinux Serverの動作保証を行っている。同社の「Linux基本サポートサービス」の契約が前提で,障害情報や修正モジュール情報を提供する。

表1●日立製作所のLinux向けサポート・サービス(対象はHA8000シリーズ)
Windows NT/2000のサポートとほとんど遜色ない。価格は基本的に個別見積もり。

動作確認レベルでも実質問題ない

 これに対し,ほかのPCサーバー・ベンダーは,依然として動作確認のレベルにとどまっている。共通する見解は,「フリーソフトの性格上,Linuxの動作保証は実施しない」というものだ。たとえば,コンパックコンピュータはLinuxの専用ページを作り(図1),ProLiantに関して充実した情報を提供している。だが,「情報はあくまでも動作確認であり,動作の保証をするものではありません。このためシステムの導入運用はお客様の責任で実施していただきます」と,断り書きをしっかりと付けている。

 Windows NT/2000では,Microsoftといういわば元締めがいるため,HCL(Hardware Compatibility List)への掲載という形で保証が得られるが,Linuxでは何を持って保証とするかが難しいという事情がある。ただ,ほとんどのベンダーが,導入後のハードウエア保守はWindowsと同様に実施している。また,Linuxに障害があれば,ディストリビュータと協力して修正プログラムを提供する体制をとっており,実質的にはWindows NT/2000のサポートと変わらないところまできつつある。

 たとえば,日立は9月11日から,「C/S高度サポートサービスfor Linux」と呼ぶサービスを提供し始めた。基本的なQ&Aレベルのサポートから,基幹業務での適用を想定した高度な運用サポートまで4段階のメニューを用意した(表1[拡大表示])。Linuxのディストリビューションは頻繁にバージョンアップするが,最上位のサービスでは,導入時のバージョンについて長期的にサポートを継続する(表中のシステム環境固定)。当面,Linuxの技術者を100人確保し,今後さらに倍増する計画だ。

プリインストールについては及び腰

 しかしプリインストールについては,PCサーバー・ベンダーは及び腰だ。動作確認というスタンスのベンダーは,「Linuxの動作を保証していると誤解を与えてしまう」(NECソリューションズ ワークステーション・サーバ販売推進本部製品マーケティンググループの泓宏優主任)ことを危惧する。

 もう1つ大きな理由は,Linuxに関して知的財産権を主張する者が出てきたときに,プリインストールして提供していると訴訟の標的になりかねない点だ。このため,「インストールの代行」という形をとって,逃げ道を用意しているところが多い。日本IBMもプリインストールは避けている。

 こうした中,あえてプリインストールに踏み切ったのが,デルと日本HPだ。デルはRed Hatとの提携で,OSの開発段階からデルのPowerEdge上での動作検証作業が可能になり,プリインストールできるようになったという。日本HPも7月,Red Hat Linuxをプリインストールしたモデルを発表した。知的財産権の問題は解消されたわけではないが,そのリスクを冒してもユーザーの利便性をとったといえる。

 実際,現時点でPowerEdgeのOS比率は,Windows NT/2000:RedHatが5:1と,Linuxの比率が他社に比べ高い。デルは「プリインストールによって,バンドルだけの競合他社に比べ,顧客からの信頼を得られたため」と見ている。今後ほかのベンダーが追随してプリインストールしてくる可能性は高い。

図2●Linuxの適用分野(サーバー用途)
富士通の2000年第2四半期のLinuxビジネスの状況。インターネット関連が74%を占める。また,評価導入が減少し,実運用が増えているという。

用途はインターネット分野が中心

 では現状,Linuxはどのような分野で使われているのか。最も多いのはインターネット関連サーバーだ。Webサーバーやメール・サーバーなどである。富士通の資料によれば,実に74%がインターネット関連である(図2[拡大表示])。

 ユーザー層としては,「ある程度自社でシステムを構築できるスキルを持っているところが多い」(日本IBMの藤本氏)。逆に,「スキルが乏しく,OSを気にしないような中小規模企業がアプライアンス・サーバーの形でLinuxを意識せずに導入するケースもある」(日立製作所インターネットプラットフォーム事業部マーケティング部の木村政孝部長)。日立では,Webサーバーやファイアウォールなどを1台のサーバーにパッケージしたアプライアンス・サーバー「HA8000/InterStation」を99年10月から販売しているが,すでに500システムを出荷したという。

 Linuxをベースにしたアプライアンス・サーバーは,現在各社とも注力している分野だ。たとえば,NECは7月31日に,「Express5800インターネットアプライアンスサーバ」など製品を大幅に拡充した。日本IBMも9月4日,「Netfinityインターネット簡単パック」を発表した。

アプリがそろえば2000とぶつかる

 インターネット分野以外では,「ファイル・サーバーや部門のデータベース・サーバー用途なども少しずつ出てきている」(日立の木村氏)。だが,業務アプリケーションのサーバーとして使っている事例はほとんどない。

 その最大の理由はアプリケーションの対応が進んでいないことだ。早くからLinux対応をうたったOracle8iにしても,これまではWorkgroup Server しかなく,大規模システム向けのEnterprise EditionのLinux版は,8月30日にようやく出荷されたところ。業務パッケージの対応も遅れている。ターボリナックスジャパンの小島國照社長は「今後の最大の課題はアプリケーションの拡充。来年半ばまでに1000まで増やしたい」と話す。

 気になるのは,アプリケーションがそろってきたときに,PCサーバー・ベンダーがWindows 2000とLinuxをどう売り分けていくのかだ。日立製作所Linuxソリューション本部の森伸正本部長は「あくまでお客さまの選択であり,我々としてはバランスをとりながらビジネスを展開していく」と,優等生的に答える。各社とも「Windows 2000の重要性は今後も変わらない」と口をそろえる。

 しかし,「Microsoftと心中するわけにはいかない」(ある大手ベンダーの担当者)という声がサーバー・ベンダーの本音を代弁している。特に,IA-64搭載サーバーのOSとしては,Windows 2000の実力は未知数であり,インテルを含めサーバー・ベンダーが,Linuxを保険として重要視し始めたのは確かだ。

(桔梗原 富夫=kikyouba@nikkeibp.co.jp)