「サービスがハードウエアの売り上げを加速している」。米Dell ComputerのMichael Dell会長兼CEOは,米国オースチンの本社で開いた記者向けのグループ・インタビューで,サービス事業の重要性をこう語った(写真1)。

写真1●米Dell ComputerのMichael Dell会長兼CEO

 現在同社は,サーバーやストレージ製品の売り上げ拡大に躍起だ。社内には,サーバー分野で世界シェア1位の座にある米Compaq Computerの打倒を掲げたポスターが貼られ,全社一丸でエンタープライズ市場に注力する姿勢がうかがわれた。Dell会長は,「サーバーは過去4年間の累積で99%増,ストレージは前年比76%増と急速に伸びている。今後も世界2位のサーバーのシェアを伸ばし続け,2001年内にはCompaqを抜いて1位になる」と意気込む。冒頭のDell会長の発言は,サーバー・シェア1位を実現するために推し進めてきたサービス事業の強化について言及したものだ。

 Dellが重視するのは,サービスの収益より,あくまでもハードの拡販。サービスに力を入れるのは,パソコン事業で成功を収めた同社のビジネス・モデルに,エンタープライズ分野で必要な付加価値を提供しなければならなかったからだ。ハードよりサービスで稼ごうとする他の大手メーカーとは一線を画す。「大規模なエンタープライズ向けのハードを提供しても,どのように使えば最も効率的かを提案できなければ,顧客にとっての価値は下がってしまう」(Dell会長)。

ユーザーからの窓口を一本化

 Dellはサービス強化のため,1999年から約1年半に渡り,「Dell Technology Consulting(DTC)」と呼ぶコンサルティング・サービスを提供してきた。提供分野は同社自身のシステム構築の経験に基づいた電子商取引のインフラ整備やWindows 2000の導入支援,サーバーやストレージの導入計画など。コンサルティングを受ける場合は,基本的にDellのハードウエア製品を購入することが前提だ。

 DTCの特徴はパートナ企業との協力体制にある。提供するメニューのうち,サーバーやストレージの導入計画など,Dellが得意とする分野はDell社内のコンサルタントが担当する。一方,アプリケーション関連の案件などは,専門のパートナ企業に実際の作業を委託する。プロジェクト管理はDellのコンサルタントが行い,ユーザーからの窓口はDellに一本化する。ユーザーは,Dellとパートナ企業の双方とのやり取りで煩わされなくて済む。

 Customer Services Marketing DirectorのRobert Riazzi氏は,「Virtual Integration」と呼ぶこの方式のメリットを,「最良のパートナと組めば,常に最良のサービスを提供できる。自社ですべてを抱えても,いいソリューションを提供できるとは限らない」と強調する。そもそも協力体制を採るのは,社内に足りない人材やノウハウを補うのが目的だったが,今後もすべてを自社で賄う予定はないという。

 DTCの一環として,Dellはユーザーのシステムを評価検証する施設「Dell Technology Solution Center(DTSC)」を世界5カ所に設けている。ユーザーのシステムをDTSC内に再現して,負荷テストや動作検証などを実施する。米本社のセンターにはサーバー約50台を備え,同時アクセス・ユーザーが1万人を超える負荷テストを実行できる環境を整えている。

表1●デル・テクノロジー・コンサルティング(DTC)の主なサービス・メニューとサービス内容の例

国内でもDTCの提供を開始

 国内法人のデルコンピュータも,2000年11月15日から,DTCの提供をスタートした(表1[拡大表示])。2001年の5月には,DTSCの開設も予定している。リレーションシップマーケティング営業技術支援部の長谷川恵本部長は,「これまでのようなハードだけの販売では,ハードの更新に合わせてOSやアプリケーションのアップグレードもやりたいというユーザーの商談を断らざるを得ないケースがあった」と明かす。DTCの提供により,デルの製品を購入したいユーザーは,導入・技術支援もまとめてデルに依頼できる。長谷川氏は,「これまであきらめていた案件を取れるようになる。継続的な商談にもつながる」(同)と期待する。

 国内のサービスも米本社と同様,パートナ企業との協力が前提だ(図1[拡大表示])。パートナには,日立ソフトウェアエンジニアリング,野村総合研究所,マイクロソフトなど現在10社が名を連ねる。各社はサービスの分野ごとに,デルと協力してサービスを提供する。

 例えば日立ソフトが提供するのは,主にWindows 2000のコンサルティングや導入,評価サービスなど。同社は自社単独でも同様のサービスを提供しており,この技術やノウハウを使ってデルに協力する。

プロジェクト管理の人材確保が急務

図1●デルのコンサルティング・サービスの提供形態
サービスの内容ごとに,特定のパートナ企業と協力でコンサルティング・サービスを提供する。ユーザーの窓口はデルに一本化して,サービス内容に関する責任はすべてデルが負う。

 国内でもDTCの仕組みは整えたが,現状では「ユーザーからの依頼に応じ切れない状態」(長谷川氏)という。コンサルタントが不足しているためだ。DTCのサービスを正常に機能させるには,パートナ企業との円滑なプロジェクト運営が欠かせない。そのため,デル社内でプロジェクト管理者の確保や養成を進めている。デルでDTCを担当するのは営業技術支援部の7人の専任コンサルタントだ。2001年中には,コンサルタントの数を20人程度まで増やす計画という。

 米Dellでは,DTCの提供開始から半年程度,その運営がうまくいかない時期があったという。しかしこれまでに,「試行錯誤しながらも,6,7種類の典型的な方法論を確立してきた」(米DellのRiazzi氏)。国内でも,先行する米本社が培ったノウハウをいち早く吸収し,ユーザーの需要に応じていく考えだ。

(森重 和春=morishig@nikkeibp.co.jp)