図1●Microsoft Operations Manager 2000(MOM)の管理画面
Windows 2000標準のMMC(Microsoft Management Console)機能を使って表示する。項目はMonitor,Rules,Configurationの3大項目の詳細を,階層構造によって一覧表示することができる。
 米Microsoftは2001年5月,新しいシステム管理ソフト「Microsoft Operations Manager 2000」(以下,MOM)をリリースした(図1)。MOMは,Microsoftがシステム管理ソフト・ベンダーの米NetIQから「NetIQ Operations Manager」に関するライセンス供与を受けて,Windows 2000 Server向けに開発されたものだ。

標準のMMCを利用して設定・表示する

 MOMは一般的なシステム管理ソフトと同じく,管理対象であるサーバーから上がってくる様々なイベント,パフォーマンスを分析し,警報を発するといった一連の作業を行っている。

 管理状況の表示と設定は「MOM Administrator Console」で行うが(図1),これは元々Windows 2000に標準付属のMMC(Microsoft Management Console)を利用している。MOMのインストール時にMOM用スナップインを組み込んでいるのだ。

 従来,パフォーマンス・モニターやシステム・モニター,ネットワーク・モニターのように,バラバラに監視していたイベントとパフォーマンスを,MOMでは一元的に管理できるようになった。また,従来のパフォーマンス・モニターでも自分以外のコンピュータを監視することは可能であったが,改めて登録する手間があった。MOMでは始めからネットワーク全体のコンピュータを視野に入れながら,階層表示で一覧できる見やすい表示になっている。

図2●MOMがサーバーを管理する仕組み
MOMサーバーにあるエージェント・マネージャが,管理されるサーバー上で動いているエージェントに対して管理項目を指示する。エージェントは,プロバイダから情報を入手し,ある程度のフィルタ,分析をしたあと結果をエージェント・マネージャに伝える。集まった情報は,DAS(Data Access Server)経由でデータベースに保存される。モニターしたり,設定を変えるにはMMCを利用する。MMCはMOMサーバー上になくても,クライアントのMMCからでも操作できる。Webコンソール機能によりブラウザからでも閲覧は可能。

 図2[拡大表示]はMOMの配置の概要を示したものだ。まず,MOMの本体は,Windows 2000 ServerとSQL Serverが稼働する専用のサーバーにインストールされる。これまで複数のサーバーを管理する場合,管理する側と管理される側の立場が明確ではなかったが,MOMサーバーという形で専用マシンが一元管理を行う設計になっている。

 MOM本体は,エージェント・マネージャ,DAS(Data Access Server),MOMの管理コンソールから構成される。ディレクトリ・サーバーやExchangeサーバーなど,管理対象のサーバー上には,エージェントと呼ばれるプログラムが常駐している。

 個々のエージェントは,Windows標準の管理システム「WMI(Windows Management Instrumentation)」やOSのログ・ファイル,標準化されたネットワーク管理プロトコル「SNMP(Simple Network Management Protocol)」といった,プロバイダ(またはデータ・プロバイダ)からデータを収集する。集めたデータはエージェント・マネージャに伝えられ,エージェント・マネージャはそれをDAS経由でデータベースに保存する。このとき,エージェントはイベントをフィルタにかけたり,ある程度の状況判断を独自に行っており,ネットワーク・トラフィックを抑えることに役立っている。

 MMCはDASから管理情報を入手して一覧表示する一方で,エージェントがどのような情報をフィルタにかけるか,パフォーマンスがどの値を示した時に対してイベントを発するかといった,設定条件を変更するところだ。設定条件はDAS経由でエージェント・マネージャに送られ,各エージェントに指示を与える。

 このような設定条件は「ルール」と呼ばれ,どのような情報に対してどう反応するのかが決められている。例えば,ハードディスクの故障に対して警告を表示するといった単純なものから,パケットの増加とデータベースのアクセス状況といった複数のイベントから,電子商取引のサーバーを順次ダウンさせるシナリオを制御するといった複雑なものまである。また,複数の兆候を分析して,起こり得るトラブルを予測し,場合によってはどのような対処をするべきか,マイクロソフトのサポート技術情報(Knowlegde Base)にリンクしてアドバイスを行えるようにするなど,従来に比べてかなり手回しのいい管理ソフトになった。

 警告はMMCにももちろん表示するが,電子メールで管理者に伝えたり,Webページにレポートを掲載するといったこともできる。管理者はWebブラウザを使って離れたところから管理状況を把握できる。

マネージメント・パックで設定条件を提供

 事前にどのような設定にしたらいいのか,専門家の考えた“ルールの組み合わせ”があって,これを「マネージメント・パック」と呼ぶ。MOMには標準で付属するマネージメント・パックにより,OSなどの最低限必要な設定条件が行えるようになっている(表1)。他にも同社はサーバー・アプリケーション用の「アプリケーション・マネージメント・パック」を販売する。また,ソフト/ハード・ベンダーが自社製品を管理するためのマネージメント・パックを開発・配布できるようにする予定で,既に米NetIQでは,LinuxやSolarisなどWindows以外のプラットフォームをMOMから管理するためのマネージメント・パックを準備中だ。

 価格はプロセッサ・ライセンスが846ドル,アプリケーション・マネージメント・パックのプロセッサ・ライセンスは949ドルである。

 MOMの日本語版に関してはリリース時期が未定だ。日本語版の開発は,2バイト・コード対応などに時間がかかっているためだ。あまりずれ込むとWindows .NET Serverが出てしまうので,遅くとも2002年第1四半期には出るものと思われる。


標準のマネージメント・パック(OSや基本サービスに関するもの)
Windows 2000,Active Directory,DHCP(Dynamic Host Cofiguration Protocol),Microsoft Message Queuing,IIS(Internet Information Services),MOM(Microsoft Operations Manager 2000),SMS(Systems Management Server 2.0),FRS(File Replication Services),WINS(Windows Internet Name Services),Routing and Remote Access,MSDTC(Microsoft Distributed Transaction Coordinator),Terminal Services,MTS(Microsoft Transaction Server),Windows NT 4.0 system log
別売のアプリケーション・マネージメント・パック(サーバー・アプリケーション用のもの)
Exchange Server 2000/5.5,Site Server 3.0,SNA Server 4.0,SQL Server 2000/7.0,Proxy Server 2.0
表1●MOMが管理できるOSやサービス,アプリケーションの種類
ルールの組み合わせであるマネージメント・パックを使って,どのような項目を管理するかを組み込む。これ以外にベンダーが提供するマネージメント・パックを使えば,どんな製品も管理できる。

(木下 篤芳=kinosita@nikkeibp.co.jp)