●グループウエアのExchange 2000 Serverの機能を強化する追加モジュールが相次いでリリースされた。
●使いやすくなったOutlook Web Access(OWA)機能などを提供するサービス・パック2と,文書を承認するワークフローを簡単に構築できる「稟議アプリケーション・テンプレート」の2種類だ。
●Exchange 2000のバージョンアップはまだ先だが,マイナー・アップグレードといえるくらいに進化している。

 グループウエアのExchange 2000 Serverが追加モジュールで小刻みに機能強化を重ねている。マイクロソフトは,Exchange 2000 Server Service Pack 2(SP2)をリリースし,いくつかの新機能を追加した。また,「稟議アプリケーション・テンプレート」で,文書の回覧と承認をするワークフロー・アプリケーションを容易に構築できるようにした。

 バージョンアップはまだ先であるが,マイナー・アップグレードともいえるほどになっている。

OWAがOutlookの使用感に近付く

 まず,SP2で追加された機能を解説する(表1)。WebブラウザのInternet Explorer(IE)で,Exchangeのメールボックスやパブリック・フォルダにアクセスするOutlook Web Access(OWA)の操作性や,Active Directoryへのアクセス方法の改良によるパフォーマンスの向上,トラブルシューティングを容易にするレポート機能の強化などがある。

Exchange 2000 Server Service Pack 2
Outlook Web Access の操作性向上
ディレクトリ・サービスへのアクセス方法を改善
Exchange 移行ツールの強化
Conferencing Server のセキュリティを強化
Windows Error Reporting によるトラブル発生時の分析ファイルを自動生成
メッセージ・アーカイブ用デバッグ・ツールでメッセージの流れを調査
配信状態通知(DSN )に新しいエラー・コードを追加
稟議アプリケーション・テンプレート
稟議書などを決まったユーザーに回覧して承認作業ができるワークフローを構築
Web ブラウザでアプリケーションを構築できる
決済金額で条件分岐する,1 段階に複数の承認者を設定するなどの複雑なフローに対応
Office 文書を回覧文書のテンプレートとして指定できる
表1●Exchange 2000 Serverの最近の追加モジュール
Outlook Web Access機能などを改善したサービス・パック(SP)2とExchangeのワークフロー・エンジンを利用したワークフロー・アプリケーションを構築できる「稟議アプリケーション・テンプレート」の2種類がある。どちらもマイクロソフトのWebサイトから無償でダウンロードできる。SP2は,http://www.microsoft.com/japan/exchange/downloads/2000/sp2/
稟議アプリケーション・テンプレートは,
http://www.microsoft.com/japan/exchange/downloads/tool/ringi_temp.asp

 SP2の追加機能で注目したいのは,OWAの使い勝手が向上したことだ。Exchangeで管理している情報にアクセスするには,通常であればOutlookを使用する。ただし,クライアントにOutlookがインストールされていないPCやインターネット経由で遠隔地からアクセスするなど,WebブラウザだけでアクセスできるOWAを利用したい場合がある。SP2以前でもOWA機能はあったが,Outlookクライアントと比べて欠けている機能が多かった。SP2ではよりOutlookに近付いた。

図1●新しいOWAではOutlookと同じように再読み込みをしなくても新着メールを通知する
画面はWindows 2000上のWebブラウザの場合。Windows XPではタスクバーの右端にポップアップ表示される。
図2●OWAでも受信トレイやパブリック・フォルダの全文検索も可能になった
図3●ディレクトリ・サービスへのアクセス方法を改善
ドメイン・コントローラの稼働状況を判断して,最もレスポンスが早いサーバーにディレクトリ情報を問い合わせる。
図4●Webブラウザでワークフローを構築できる「稟議アプリケーション・テンプレート」
文書の承認をするユーザーや承認するための条件などを設定する画面。設定項目はWebブラウザの画面で図示されるので分かりやすい。
図5●Webブラウザで回覧する文書を管理する
ユーザーはWebブラウザで文書の承認依頼を提出できる。どの段階まで承認されたかなど進ちょく状況も一覧できる。

 具体的には,新着メールがメールボックスに届いた場合,ユーザーに通知するようになった(図1[拡大表示])。従来はIEの更新ボタンを押して画面を再読み込みしなければ新しいメールが届いているかどうか分からなかった。新着メールをチェックするためだけにWeb画面をリロードするのは面倒であった。

 SP2では,Exchange ServerのOWAコンポーネントがユーザーのメールボックスに変更がないか一定間隔でチェックしている。変更があればOWAコンポーネントがIIS(Interenet Information Services)を経由してユーザーに通知する。新着メールだけでなく,「予定表」に会議のスケジュールを設定している場合,設定した時刻になるとポップアップ・ウインドウで通知する機能も追加されている。

 これ以外にも,Exchangeを実行しているサーバーのインデックスを利用した受信トレイとパブリック・フォルダの全文検索(図2[拡大表示])や連絡先フォルダでの配布先リストの編集,予定表で非連続な複数の日を選択した一覧表示などが可能になった。

 これらの機能は,Outlookクライアントでは最初から備えている機能であり,特別なものではない。IE上でOutlookに近い操作ができることに意味がある。ただし,画面のデザインなど,Outlookと異なる部分は多い。マイクロソフトは今後もOWAの機能拡張を続ける予定である。

ADへのアクセス方法を改善

 Exchange 2000 Serverはユーザー管理をActive Directory(AD)で処理しており,メールのあて先を検索するなど,ADにアクセスする機会は多い。このとき,Exchange 2000はADドメイン内のドメイン・コントローラ(DC)に保管されているアカウント・データベースやグローバル・カタログを参照するわけだが,参照先のマシンが停止していたりアクセスが集中しているとパフォーマンスが低下する。

 SP2では,DSAccessというExchangeのコンポーネントが,ADを検索する前に,DCが稼働しているか,応答時間はどの程度なのかテストし,稼働しているDCの中で最速のサーバーに対して検索する(図3[拡大表示])。これにより,パフォーマンスが向上する。

Webベースのワークフローを構築可能。条件分岐する複雑なフローにも対応

 もう1つの追加モジュールは「稟議アプリケーション・テンプレート」(以下稟議テンプレート)だ。サーバー・マシンなどを購入するための稟議書や住所変更届など上司や経理,総務などの承認を経て文書を回覧するワークフローを構築できる。Office文書などをそのまま回覧できる。

 Exchange 2000は標準でワークフロー・エンジン「Workflow Event Sink」を備えている。パブリック・フォルダに文書を投稿すると,承認者にメールを送るなどの設定ができる。ただし,実際にアプリケーションを構築するには,プログラミングが必要になるなど,開発は面倒である。稟議テンプレートはワークフロー・エンジンを使いやすくするツールであり,プログラミングの知識がなくても使える。

 ワークフローを構築するには,稟議テンプレートを展開し,ワークフローで使うファイルなどを格納する「サイト」と呼ぶパブリック・フォルダを作成する。サイトはWebブラウザでアクセスされるので,URLでパブリック・フォルダの場所を指定する。手順は,稟議テンプレートをダウンロードしたWebページから入手できるチュートリアル文書に詳しい。構築にはパブリック・フォルダの作成以外に,ワークフロー・エンジンのプロパティを変更するなど,多少複雑な部分があるが,チュートリアルを参照しながら作業すれば難なく導入できるだろう。

 次に,ワークフローを使うユーザー・アカウントやグループ,承認経路を設定する。サイト作成時に設定する管理者のユーザーでログオンし,WebブラウザでサイトのURLを開く。すると,サイトのトップ画面が表示されるので,そこから「サイト設定」をクリックして,設定画面(図4[拡大表示])を呼び出す。すべての設定をWebブラウザでできるのが特徴だ。承認経路などは図で示されるので分かりやすい。

 承認経路は,申請者が提出した書類を課長と部長が承認するといった一直線の経路から,1段階に複数の承認者がいる複雑なものまで設定できる。承認者はADに登録されているユーザーを指定する。このとき,「上長」という特殊なユーザーも設定できる。ADで申請者のユーザー・アカウントのプロパティに上司のユーザー・アカウントが登録してあれば,申請者の上司に書類が回覧される。人事異動などで申請者の上司が変わってもADの設定を変更するだけで済む。

 条件分岐する複雑なフローにも対応する。例えば,物品の購入申請で,20万円未満であれば課長の承認のみが必要で,それ以上だと課長と部長の承認が必要になる場合,購入金額に応じて経路を変更できる。これは,Excelファイルの合計金額を入力したセルに名前を付けておくと,ワークフロー・アプリケーションがセルの内容を参照して,承認ルートの設定で登録した条件で文書を回覧するようになる。

 ユーザーが文書を申請するのもWebブラウザを使用する(図5[拡大表示])。登録した文書が一覧になっており,どこまで承認されたのか進ちょく状況を把握できる。ユーザーが文書を申請すると,承認者にメールが送られ,承認処理が促される。承認者は,申請された文書に対して,承認や却下,差し戻し,依頼などのアクションをとれる。

(伊藤 康生=yaitou@nikkeibp.co.jp)