マイクロソフトは,Windows 2000 Serverの後継になるWindows .NET Serverベータ3をリリースし,開発者向け情報サービスであるMSDN(Microsoft Developer Network)やTechNet Plusの会員に提供を始めた。また,Webサイト(http://www.microsoft.com/japan/windows.netserver/)でも情報を提供している。

 ベータ版はこれが最後で,今後は2回の製品候補版を経て正式出荷になる見通し。製品版の出荷時期は,当初米国で今年の前半と見られていたが,遅れが伝えられている。早くても今年の後半以降にずれ込みそうだ。

Windows 2000をベースにした次世代サーバーOS

 Windows .NET Serverは,Windows 2000 Serverと同様に,広範囲の用途を想定した非常に多機能なサーバーOSである。Windows 2000 Serverからの改良点だけでも多数あり,製品全体を一言でまとめるのは難しい。

 やや強引にまとめると,3つの視点で分類できる。1番目は,Windows 2000 Serverの改良版という側面である。Windows 2000ではじめて導入したディレクトリ・サービスであるActive Directoryの機能を大幅に改良したことと,Webサーバーの機能を提供するIIS(Internet Information Services)について基本的な部分から見直すことでセキュリティの強化と性能向上を図っている。

 2番目の側面は,新技術を取り込んだ次世代のサーバーOSという位置付けである。Windows .NET Serverは,その名称の通り,Microsoft .NETに基づいたアプリケーション実行環境である.NET Frameworkを実装する初めてのサーバーOSになる。Webページの記述には,現在のASP(Active Server Pages)を改良したASP.NETが利用でき,データベースなどへのアクセスにもADO.NET(ActiveX Data Objects)をサポートする。

 出荷が始まったVisual Studio .NETが提供する開発環境と組み合わせることで,.NET仕様のWebサービスを効率よく開発・提供できる。

 SIP(Session Initiation Protocol)と呼ぶ通信プロトコルのサポートも注目される。SIPはIETF(Internet Engineering Task Force)のRFC 2543として規格化されており,音声や動画,データを含んだマルチメディアのリアルタイム通信を実現するためのプロトコルである。応用例としては,テレビ電話やテレビ会議などのアプリケーションが考えられるが,サーバーOSがネイティブでSIPを実装することで,今までになかった新しいサービスが登場する可能性もある。

図1●起動画面とログオン画面
Windows XPとよく似ている
 3番目は,Windows XPのサーバーOS版という側面である。今までは,Windows NTでもWindows 2000でも,クライアントOSとサーバーOSは常に同時にリリースされていた。実装している機能に違いはあるものの基本的な部分は共通になっているからだ。

 Windows .NET Serverは,昨年11月にリリースされたWindows XPとの共通部分が多い。実際,インストール手順のインターフェースや,起動画面,ログオン画面(図1[拡大表示])はWindows XPとよく似ている。ただし,デスクトップの画面デザインはWindows XP標準のLunaではなく,Windows 2000を踏襲している。

セキュリティ強化のためにIISをデフォルトで組み込まない

 Windows .NET Serverの新機能や改良点については,今後本誌でも継続的に取り上げる予定だが,ここではWindows .NET Serverの全体像をレビューする。

 図2[拡大表示]は,Windows .NET Enterprise Serverの[スタート]メニューからを[管理ツール]を開いた画面である。Windows 2000 Serverと目立った違いはない。コントロール・パネルの中身(図3[拡大表示])も,アイコンのデザインがWindows XPと同様になった以外はWindows 2000の違いは少ない。

図2●管理ツールの内容
色枠はWindows 2000ではなかった項目
図3●コントロール・パネルの内容
アイコンのデザインは変わっているが,内容はWindows 2000とほとんど変化なし。色枠の2つが新しく追加された

 Windows 2000と比べて大きく変わったのは「サーバーの構成ウィザード」(図4[拡大表示])である。Windows 2000では,Webページ風のヘルプ画面とウィザードを混ぜたようなインターフェースだったが,.NET Serverでは,ウィザード形式に統一されている。

 図5[拡大表示]は,Active Directoryの管理ツールの1つである「Active Directoryユーザーとコンピュータ」の画面である。Active Directory自体は.NET Serverで大幅に機能強化されている。例えば,フォレスト間に信頼関係を設定したり,ドメイン名の変更ができるようになった。管理ツールの外見にあまり変化はないが,オブジェクトをドラッグ&ドロップできるようになったり,検索機能が強化されるなど使い勝手が向上している。

図4●サーバーの構成ウィザード
図5●ユーザー・インターフェースを改良したActive Directory管理ツール

 IISについて最も大きな変化は,デフォルトではインストールされなくなったことだ。また,インストールすると,まず最初にロックダウン・ウィザードと呼ぶセキュリティ強化ツールが動作する。ここでユーザーが必要とする機能だけを選択できる。意図しないWebサーバーやコンポーネントが動作して,そこからウイルスやワームが侵入するのを防止するのが目的だ。ただし,設定するには,IISの内部構造をある程度知っている必要がある。IIS内部の基本構造を見直したことにより,管理ツールのインターフェースも多少変わっている(図6[拡大表示])。

図6●IIS(Internet Information Services)の管理画面

 全くの新機能としては,図7[拡大表示]のシャドウ・コピーと図8[拡大表示]の.NET Framework管理ツールがある。シャドウ・コピーは,共有フォルダ内のファイルを定期的にバックアップしておき,ユーザーがサーバー上のファイルをうっかり消去してしまっても簡単に復旧できることを目指している。

図7●新しく追加されたシャドウ・コピー機能の設定画面
図8●.NET Frameworkの管理ツール
Windows .NET Serverには.NET Frameworkが最初から組み込まれている

 Windows .NET Serverの製品系列としては,Windows 2000のServer/Advanced Server/Datacenter Serverに対応するStandard Server/Enterprise Server/Datacenter Serverがある。このほか新しくWebサーバーとしての用途に限定したWeb Serverという製品を提供する。Webサーバー用のOSとして広まりつつあるLinuxに対抗する意図があり,戦略的な低価格になるもようだ。各エディションの機能的な違いはWebサイト(http://www.microsoft.com/japan/windows.netserver/evaluation/choosing/default.asp)に公開されている。

 Windows XPと同様にパッケージ版ではプロダクト・アクティベーション機能が組み込まれる予定だ。ベータ3もアクティベーションが必要になる。

(新出 英明=shinde@nikkeibp.co.jp