表1●国内で入手可能なデータ伝送速度54Mビット/秒の無線LAN製品(2002年2月時点)
 データ伝送速度が54Mビット/秒の高速無線LAN「IEEE802.11a」規格に対応した製品の出荷が始まった。インテルとディアイティは2002年2月末,相次いでアクセス・ポイントと無線LANカードを出荷開始した(表1[拡大表示])。マルチ・ベンダー環境で利用できる機器としては,2社の製品が初となる。

 昨年11月には,ソニーマーケティングが同規格に対応した機器を出荷していたが,同社のパソコン「バイオ」シリーズの周辺機器との位置付けだったため,バイオ・シリーズ以外のパソコンで利用すると動作保証外だった。上記2社から製品が出荷されたことで,ようやく高速無線LAN機器の選択肢が広がってきた。

企業ユースに特化したインテル
個人でも購入可能なディアイティ

 インテルとディアイティの両製品は,ターゲットとするユーザー層と販売方法が異なる。

 インテルの「PRO/Wireless 5000 LAN」ファミリは,完全に企業ユースにフォーカスした製品だ。オフィスでの利用を想定した機能をいくつも備える。その1つがLANケーブル経由でアクセス・ポイントに給電する機能だ。アクセス・ポイントを天井などに設置する際,電源工事が不要となる。また,同社の有線LANカードと無線LANカードを同一画面で一元的に管理するユーティリティ・ツールも付属する。店頭売りは予定しておらず,インテグレータを経由して拡販する。

 一方,ディアイティの「Skyline 802.11a」シリーズは,小規模な企業システムのほか,個人での利用も想定しており店頭でも発売する。手軽に使えるよう機能を簡素化し,アクセス・ポイントの価格を6万9800円と低く抑えた。同社はSkylineシリーズとは別に,大規模システム向けの「Harmony」シリーズも提供している。

各規格の特徴を押さえ用途に合わせ選択

表2●無線LANの主要3規格の主な特徴
 新しく登場したIEEE802.11a規格は,他の無線LAN規格に比べて,どのような長所・短所を備えているか把握しておこう(表2[拡大表示])。同11aの長所の1つは「速い」こと。最大54Mビット/秒のデータ転送速度は,現在普及しているIEEE802.11b規格の11Mビット/秒に比べ5倍近い値だ。ほかにも同11gという規格で最大54Mビット/秒が実現すると見られているが,製品化の具体的な時期は明らかになっていない。

 同11aのもう1つの長所は,他の機器と電波干渉が起こりにくいことが挙げられる。同11bが利用する2.4GHz帯は,コードレス電話や電子レンジなどで古くから利用されており混み合っている。それに対し同11aが利用する5.2GHz帯は,他の機器で利用されていないため電波干渉が起こりにくい。同11b製品のユーザーで,他の機器との電波干渉に悩んでいるなら,同11a製品を検討する価値は十分ある。

 一方,同11aには短所もある。壁などの障害に弱いのだ。周波数が高くなると電波の直進性が増し,壁などを回り込む回折性は落ちる。2.4GHz帯を利用した同11b規格に比べ,5.2GHz帯を利用する同11aは,壁やパーティションなどの影響を受けやすい。「見通しの良い天井にアクセス・ポイントを設置するなど,同11b規格の製品以上に気を配ってほしい」(ディアイティ営業本部営業企画部の飯嶋淳シニアマネージャー)。

図1●インテル製品はオプションを装着すれば2つの規格を同時に利用できる
1台のアクセス・ポイントで,IEEE 802.11aと同11bの両規格の無線LANカードと通信することが可能となる。オプション・キットは2002年5月提供予定
 同11aのもう1つの欠点は,屋外で利用できないことだ。現在の法律では,同11bが採用する2.4GHz帯は屋内外で利用できるが,5.2GHz帯は屋内でのみ利用が許可されている。ただし近々,屋外でも利用できるよう法改正が行われる可能性があり期待したい。無線LANカードの消費電力については,カタログ・スペックを比較するかぎり両規格に大差はない。

当面は同11a/11bの併用が現実的

 同11a規格の製品出荷が始まってみたものの,無線LAN規格の勢力図が同11bから同11aに急速にシフトする可能性は低そうだ。インテルで無線LAN機器を担当する梅野光プロダクトマーケティングマネージャーは,「価格帯も開きがあることなどから,同11a製品がすぐに市場を席巻するとは予想しにくい。当面は同11b製品と共存していくだろう」と見ている。

 インテルのアクセス・ポイントは,オプション・キットを装着することで,同11b対応の無線LANカードとも通信できる仕組みを備える(図1[拡大表示])。「扱うデータ容量に応じて,2つの規格を使い分けてほしい」(梅野氏)。ディアイティの大規模向け「Harmony」シリーズも同11aと同11bの両規格を統合管理する装置を用意している。

 同11a規格の製品は,最大手のメルコを始め,シスコシステムズやアイ・オー・データ機器など他のベンダーも製品化を検討している。今後,参入ベンダーが増えれば,実売価格の低下も期待できそうだ。

(菅井 光浩=sugai@nikkeibp.co.jp