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●米Microsoftが開発者向けの技術セミナーで次期Windowsである「Longhorn(開発コード)」の詳細を初めて明らかにした。
●WinFXと呼ぶ新しいプログラミング・インターフェースを用意し,これまでのWin32とは一線を画した.NET完全対応の環境を実現する。
●新ファイル・システムでは,データベースの技術を応用し,フォルダ表示の自由な変更や,他のパソコンやサーバーとのデータ自動同期が可能となりそうだ。

図1●PDCで明らかになったWindows製品の開発スケジュール
クライアント向けWindowsの後に,その技術を組み込んだサーバー向けWindowsが登場するパターンになってきている。Longhornの登場は早くても2005年後半の見込み。
図2●Longhornで実現する新API「WinFX」のアーキテクチャ
画面表示のための「Avalon」,データを格納する「WinFS」,通信を実現する「Indigo」の3つの新機能で現在のWin32を置き換える。
図3●Longhornベータ版候補のユーザー・インターフェース
画面の右端にリアルタイム・データを表示するサイド・バーが追加されている。それ以外に半透明のウインドウ表示などを実現する(出典:Windows & .NET Magazine Network)。
図4●新ファイル・システムのWinFSはNTFS上で実現する
WinFSにはデータベースの技術を組み込んでおり,レプリケーションを応用したデータ同期やトリガーを応用した自動実行などが簡単に実現できる。通常のファイル・システムとして,これまでと同様に操作することも可能。
図5●WinFSの同期サービスを利用・管理するSyncManager
同期の状況や競合といったエラー状況などが分かる。

 10月末に米ロサンゼルスのコンベンション・センターで「Professional Developers Conference(PDC)2003」が開催された。PDCは,米Microsoftが主に開発者を対象として開催する一大イベント。これまでもMicrosoft製品でキー・ポイントとなる新技術を説明する場として高い注目を集めてきた。92年は32ビット,96年はActiveXやActive Server Pagesといったインターネット技術,2000年は.NETが,このPDCで発表されている。

 2年ぶりの開催となる今回のテーマは次期Windowsである「Longhorn(開発コード名)」。基調講演で初めて公開されたほか,関連セッションが数多く開催され,今回のPDC会場はLonghorn一色となった。

Longhornの新技術が今後多くのMS製品に採用される

 残念ながら今回のPDCではLonghornのリリース時期は明らかにならなかった。参加者にはテクノロジ・プレビュー版が配布されたが,今後の予定はベータ1を来年後半に提供することを表明したのみ。正式な製品版として登場するのは,早くても2005年後半となる見込みである(図1[拡大表示])。

 しかし,Longhornの技術は,今後多くのMS製品に採用される予定である。Windowsの次期版という以上の影響力がある。

 まず,MSはこれまではうわさでしかなかったサーバー版Longhornの開発を正式に認めた。今年出荷したWindows Server 2003の後継製品は,これまでBlackcombという開発コード名のものとされてきたが,今回のPDCではBlackcomb関連の話題はなく,サーバー版のLonghornが後継とされた。恐らく後述するAeroやWinFSといったLonghornの中核技術を組み込んだサーバーOSとなり,クライアント向けよりも遅れて提供される可能性が高い。

 さらにLonghornの出荷前に,Windows XPとWindows Server 2003のそれぞれに新しいService Packを提供する。このService Packでは,セキュリティの強化などにLonghornの技術が先行投入される予定である。

アプリケーション環境を一新

 Longhornはこれまでマイナー・チェンジ製品とされてきたが,実際にはアーキテクチャを見直すメジャー・バージョンアップ製品といえる。PDCでは,Longhornに全く新しいアプリケーション環境が用意されることが分かった(図2[拡大表示])。

 Longhornは,カーネルやHAL(ハードウエア仮想層)を含んだOS基本サービスの上に,画面表示のプレゼンテーションを担当する「Avalon」,データを取り扱う「WinFS(File System)」,通信のための「Indigo」という3つの機能ブロックを新たに用意する。

 Microsoftでは,これらを利用するプログラミング・インターフェースに「WinFX」という新名称を付けた。現行のWin32がインテル32ビットCPU時代の標準インターフェースなのに対し,.NET時代の標準インターフェースとしてWinFXを位置付けたい意向だ。

 もちろん,これまでのWin32アプリケーションとの互換性は維持する予定だが,これが実現すれば,少なくともアプリケーションのプラットフォームとしては,Win16からWin32に切り替わったWindows 95以来の大幅な変革となるだろう。

新GUIのAeroで使い勝手が進化

 図2に示した3つの新機能は,開発者だけでなくWindowsを利用するエンドユーザーにも影響する。

 まず,Avalonを搭載することで,Longhornの画面は新しいデザインのものに変わる(図3[拡大表示])。Windows XPやWindows Server 2003の「Luna」と比べ,開発コードで「Aero」と呼ばれるさらに使いやすいものとなる。

 例えば,画面右側に配置されるサイド・バーは,タスク・バーにあったトレイを拡張するものだ。時計やカレンダ,株価などリアルタイムに変化するデータの表示に使うことを想定しており,クリックで拡大表示する“フライアウト”という仕組みを備える。

 それ以外に,ウインドウやボタンの形状およびデザインを変えたり,半透明ウインドウ表示を実現したりする。これにより,他のウインドウに隠れているウインドウの情報を見たり,データの内容を半透明のポップアップで表示したりできる。

データベースを組み込んだWinFS

 エンドユーザーにとって最も大きく影響するのは実はWinFSであろう。WinFSは,現在Yukonというコード名で開発を進めている次期SQL Serverの技術をファイル・システムに取り込んだものとなる。

 今回明らかになった内容からすると,WinFSはほとんどデータベースそのものといってよさそうだ。ファイル・システムといっても現在のNTFSを置き換えるのではなく,その上の新しい仕組みとして提供される(図4[拡大表示])。

 ファイル・システム・サービスを経由して,これまで同様に「\\コンピュータ名\共有名」という形式のUNC名などを使ってファイルをやり取りできるようにする。それ以外に,人物情報や様々な情報を格納できる。また,データを格納するためのスキーマは,開発者などが自由に定義して拡張できるようになる。逆に,様々なデータが格納できる中にファイルも含まれると理解したほうがいいかもしれない。

 ファイル・システムがデータベースとなるメリットは大きい。データ検索のインデックスがあるため,これまでのようにディスクの情報すべてをいちいち検索するよりも圧倒的に早く条件に合うファイルを検索できる。例えば,データの作成者ごとやプロジェクトごとなど,表示フォルダの構成を必要に応じて変えることも可能だ。

 また,レプリケーションと呼ばれるデータベース同士でデータを複製し合う機能を利用し,情報を同期できるようにする。例えば,自宅や部署内にあるマシンの間で,データを自動的に同一にそろえられるようになる。PDAやデジタル・カメラのような外部デバイスやActive Directoryなどとデータを同期する使い方も考えられる。これらの同期状況はSyncManagerというツールから管理できるようにする(図5[拡大表示])。

 もう1つ,「InfoAgent」と呼ぶサービスを用意する。これは,トリガーと呼ばれるデータベースの技術を応用したもの。「あるイベントが発生した場合にどういうアクションをする」というルールをあらかじめ設定しておく。該当する条件が発生した場合にトリガー(引き金)を引くように処理を自動実行できるようになる。例えば,マネージャからメールが届いたらフォワードしたり,重要なデータに変更があったらメールで通知したりする,といった処理が自動で可能になる。

WebサービスでTPを実現するIndigo

 最後のIndigoは,バックグラウンドの通信技術でエンドユーザーにはあまり関係ないかもしれない。

 Indigoは,MSMQ(マイクロソフト・メッセージ・キューイング)やCOM+のようなWindows固有の技術に,Webサービスの標準技術を使った連携機能を加える仕組みだ。インターネットやファイアウオールを超えたトランザクション処理(TP)やメッセージ・キューイングを実現する。

(根本 浩之=nemoto@nikkeibp.co.jp)