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●マイクロソフトは2005年5月中旬に,Windows XPとWindows Server 2003のx64 Editionを出荷する予定である。x64 Editionは既存の32ビット・アプリケーションをそのまま,しかも実行速度を落とさずに動かせる。32ビットから64ビットへ,スムーズに移行できる。
●同時にマイクロソフトは,「SWAP64」と呼ぶ,32ビットWindowsのライセンスを64ビットWindowsのライセンスにアップグレードするサービスを提供する。
●コンピュータ・メーカー各社はx64 Edition対応マシンを続々と出荷する。SWAP64にも対応する予定である。

表1●x64対応Windowsのラインアップと主な仕様
参考のため,32ビット版Windowsの仕様も示した。
表2●主なx64対応サーバー
価格は各モデルの最小構成時のもの(2005年3月14日現在)。各社のWebサイトのURLは表末を参照のこと。
 x86との互換性を備えた64ビット・アーキテクチャである「x64*」(AMD64およびIntel EM64Tの総称)向けのWindowsが登場する時期が明らかになってきた。マイクロソフトは,デスクトップ向けに「Windows XP Professional x64 Edition」の1製品,サーバー向けに「Windows Server 2003, Standard x64 Edition」「同Enterprise x64 Edition」「同Datacenter x64 Edition」の3製品を,2005年5月中旬から順次,出荷開始する予定だ(表1[拡大表示])。

 x64 Editionは,IPF*(Itaniumプロセッサ・ファミリ)版の64ビットWindowsと異なり,既存の32ビット・アプリケーションをそのまま,しかも動作速度を落とさずに実行できる。IPF版の64ビットWindowsでその性能を引き出すためには,ハードウエア,OS,アプリケーションのすべてを同時に64ビット化する必要があった。32ビット・アプリケーションも動作するが,エミュレーションによるもので実行速度の点で現実的ではなく,事実上,既存の32ビット資産を引き継げなかった。それに対してx64 Editionは,既存の32ビット・アプリケーションをそのまま,実行速度を落とさずに動かせる。

32ビット・アプリでも利点がある

 さらにx64 Editionには,32ビット・アプリケーションしか動かさなくても,利用する価値がある。それは,より大きなメモリー空間を利用できることだ。x64 Edition上の32ビット・アプリケーションは,32ビットの仮想アドレス空間である4Gバイトの領域を,すべてユーザー領域として利用できる。さらにアプリケーションを64ビット化すれば,8Tバイトという広大なユーザー仮想メモリーを利用でき,16本に倍増した汎用レジスタ*を使った高速処理が可能になる。

 このような特徴のあるx64 Editionなら,既存の32ビットのソフトウエア資産をそのまま引き継げる。まずOSだけを64ビットにして既存の32ビット・アプリケーションを運用し,その後64ビット・アプリケーションへと段階的に,スムーズな移行が可能だ。メーカーもこの点を高く評価し,x64 Editionには積極的に取り組む姿勢を見せている。実際,サーバー・メーカー各社は,既にx64対応のサーバー機をそろえ,出荷中である(表2[拡大表示])。

 例えば日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は,2004年2月にx64対応機の開発意向を表明して以来,同年4月には4CPUのOpteron搭載機「HP ProLiant DL585」と2CPUのOpteron搭載機「同145」を発売した。さらに同年8月にはEM64T対応Xeon搭載機,そして2005年2月にブレード型と呼ぶ集積密度の高いモデル「HP ProLiant BLシリーズ」にOpteron搭載機を追加した。

 日本IBMも,EM64T対応Xeonの出荷が始まった2004年8月以来,x64対応機を発売している。2005年3月現在,タワー型,ラックマウント型*ブレード型*のすべてのタイプのサーバーに,x64対応機をラインアップしている。CPU数では1CPUと2CPUの機種のみだが,2005年春にインテルがEM64T対応Xeon MPを出荷すると同時に,4CPU以上の機種も追加する予定だ。独自開発のチップ・セットを使い,最大32CPU構成の機種までそろえる。今まではIPFが占めていたスケールアップのソリューションにも,x86(x64)サーバーで対応できるようになる。

 同様にNEC,デル,日立製作所も,ローエンド機の一部を除いて,2005年3月現在,タワー型,ラックマウント型,ブレード型のすべてのタイプのサーバー製品が既にx64対応済みである。Xeon MPを使った4CPU以上の機種がまだ32ビットだが,インテルからEM64T対応のXeon MPが出荷になり次第,64ビット版を出す予定である。

 これまでx64対応機を出していなかった富士通も,2005年3月に特定のユーザー向けにEM64T対応Xeon搭載機の発売を開始した。4月以降には,一般ユーザーに向けて発売を開始する予定である。

マシンがあればライセンスを提供

 2005年3月現在はハードウエアだけが64ビットでWindowsは32ビットだが,x64 Editionの発売後には,各社ともプリインストール・マシンを用意する予定だ。それだけでなく,既存のユーザーに対しても「SWAP64」と呼ぶサービスを提供する。

 これは,既存のx64対応マシンで32ビットWindowsを運用しているユーザーに対して,32ビットWindowsのライセンスをx64 Editionにアップグレードするサービスである。マイクロソフトはSWAP64を,コンピュータ・メーカーを通して提供する予定で,開始時期や費用,対象機種は各メーカーが決めることになっている。表2に挙げたすべてのメーカーはSWAP64に対応することを表明しているが,開始時期と費用については未定である。開始時期は5月以降になりそうだが,パッケージの発売よりも前にSWAP64によってx64 Editionが提供される可能性もある。また費用は,ほとんどのメーカーで,実費(数千円)程度になりそうだ。気になるのは対象機種だが,ほとんどのメーカーが,今までに出荷したEM64T対応CPUまたはAMD64対応CPUの搭載機を対象にする予定である。

(山口 哲弘)