■中部電力は,基幹系と業務支援系のシステム統合を進めている。その一環としてクライアントOSをWindows 2000 Professionalに統一していく。
■パソコン上で基幹業務も処理するため,OSの安定性を最も重視した。パソコン管理用にWindows 2000 Advanced Serverも200台導入する。
■ベータ3版からずっと評価してきた。ただし,IntelliMirrorなどの新機能は評価が済んでいないこともあり,導入には慎重な姿勢をとる。

 中部電力は今年9月から,7000台のWindows 2000 Professionalと200台のWindows 2000 Advanced Serverを導入していく。最終的にWindows 2000 Professional機は1万6500台まで増やす予定だ。99年夏からベータ3,製品候補版と順次評価し,現在は製品版で最終テストを行っている。

図1●中部電力の現在のシステム構成と今後の計画
現在,基幹システムと業務支援システムの2系統があるが,それを統合していく。オフィス・ソフトやメール送信を行う業務支援システムでは,Windows 95を搭載する1万2500台のノートPCを導入済み。今後はノートPCのOSをWindows 2000 Professionalにリプレース。基幹業務も処理することで専用端末は撤去する。オフコンもUNIXサーバーに切り替えていく。ノートPCは最終的に1万6500台導入する。ノートPCを管理するためにWindows 2000 Advanced Serverを200台設置する。
 同社が全社システムの見直しを検討し始めたのは98年4月。業務支援システムのパソコンと,基幹業務システムの専用端末の統合構想が持ち上がったのがきっかけだ。

 現在,中部電力のシステムは図1[拡大表示]のように大きく2系統に分かれている。1つは,掲示板やメール,会議室予約といったイントラネットおよびオフィス・ソフトを処理する業務支援システム。約150台のUNIXサーバーと,Windows 95を搭載したノート・パソコン1万2500台で構成する。

 もう1つは,経理や人事,発電所への燃料調達といった基幹業務システムである。メインフレームの下に約100台のオフコンを設置し,OS/2ベースの専用端末3000台で処理している。専用端末は各部署ごとに数台ずつ設置。オフコンは本店や各支店などに設置されている。

NTの導入も考えたが2000を待つ

 2つのシステムは完全に分離しており,社員からは机上のパソコンですべて処理したいという要望が出ていた。加えて,オフコンはメーカーが機能強化を凍結する方針を出していたこともあり,オフコンを廃止してオープン・システムで再構築する案が持ち上がる。

 こうして98年4月,具体的な検討を開始した。まず問題になったのはパソコンの信頼性とセキュリティだった。「Windows 95マシンで基幹業務を処理するのは信頼性の面で難しい」(情報システム部オープン化推進グループの山田健史副長)と判断したためだ。

 そこで浮上したのがWindows NT Workstation 4.0であり,調査を開始した。だがそうこうしているうちに,次期版であるWindows 2000 Professionalが見えてきた。新しいOSを採用することには迷いもあったが,一度導入すると簡単にアップグレードできないこともあり,Windows 2000で展開することにした。マイクロソフトから早期導入ユーザーのプログラムへの参加を促されたことも理由だ。

Pentium II-266MHz以上が必要

 クライアントを統合するに当たり,まずは実現可能性から調査した。その結果,基幹業務と業務支援系の両方を1台のパソコンで処理するには,最低でもPentium II- 266MHz,128Mバイトのメモリーが必要と判明した。既存のWindows 95マシンの中には,Pentium II- 300MHzやCeleron- 400MHzなどを搭載する比較的最近導入した機種もある。それらはメモリーを追加してOSをアップグレードすればよい。それ以前の古い機種は廃棄し,新しいマシンに順次入れ替えていくことにした。一方,これまで専用端末上で稼働していた基幹業務アプリケーションについては,Javaで一から作り直すことを決めた。

ハングアップしない安定性を高く評価

 Windows 2000の評価を始めて,「特に目を引いたのはOSの安定性だ」(同グループの林昌徳氏)。実際,評価中にハングアップしたことはほとんどないという。「Windows 95ではOSがハングアップして,作成中のデータを失うことも少なくなかった」(同)。

 Windows 2000の新機能の中では「グループポリシー」を活用する。安定稼働させるために,「ユーザーが勝手にアプリケーションをインストールしたり,OSの設定変更ができないように制限していく」(同)。これまでWindows 95マシン上で起きたトラブルの多くは,勝手にインストールしたアプリケーションなどが原因で起こっていたからだ。

IntelliMirrorの導入は見送る

 1万6500台のクライアントPCを管理するために,計200台のWindows 2000 Advanced Serverを本店や各支店に設置する。システム管理ツールのSMS(System Management Server)2.0で,インベントリやライセンスの管理,アプリケーションの配布を行う予定だ。Advanced Serverを選択したのは,「2万人を超えるユーザー数とその負荷を考慮し,一部に4CPUのサーバーを導入するため」。負荷が小さいサーバーにはWindows 2000 Serverの導入も検討したが「OSの混在に抵抗感があった。将来はサーバーの2重化も予定しており,Advanced Serverにした」(山田氏)。

 Active Directoryドメインは「複数のドメインを構築すると管理が複雑になる」(林氏)という理由から1つにした。DNS(Domain Name System)については,UNIXベースのDNS環境がすでにあるため,Active Directoryドメインを既存DNSの子ドメインとして定義する。

 中部電力では毎年,数千人規模の人事異動がある。IntelliMirror機能を活用すれば,マシンはそのままに社員だけ移動して,移った先のマシンに自分のアカウントでログオンするだけで自分のデスクトップ環境を再現する,といったことが可能だ。だが,SIベンダーに見積もりを依頼したところ,「ハードウエアへの投資が膨れ上がることが判明したため当面は見送る」(林氏)。IntelliMirrorで2万人のユーザー・データをサーバー側で管理するには,テラ・バイト級のハードディスク容量が要求されるためだ。

 今回,基幹システムを再構築するにあたり,オフコンはUNIXサーバーへリプレースする。Windows 2000で基幹サーバーを再構築するに至らなかった理由を,「Windows 2000をそこまで使うのには不安があったため」(林氏)と説明する。

(菅井 光浩=sugai@nikkeibp.co.jp)