富士ゼロックスは,オフィス・サプライ製品などをオンラインで販売する企業間EC(電子商取引)サイト「x-plaza(クロスプラザ)」を2001年5月末に開設,サービスを開始した。
■BizTalk ServerとSAPジャパンの「SAP R/3」を接続し,XMLベースのオープンなインターフェースでアクセス可能なシステム構成を採った。開発期間はわずか3カ月で済んだ。
■当初はWebベースのECサイトとして運営するが,ユーザー企業のシステムをBizTalk Serverに直接接続する「プライベート・サイト」のサービスも順次提供していく。

図1●x-plazaのトップ・ページ
買い手向けの「バイ・サイト」と売り手向けの「セル・サイト」をそれぞれWebベースで提供する。
図2●x-plaza(クロスプラザ)のシステム構成
BizTalk ServerとSAP R/3を使って,商品カタログのやり取りから受発注,代金決済までを仲介する。当面はWebサイトをインターフェースとした,いわゆるWeb EDIを提供する。Webサーバーを介さずにマーケット・サイトとユーザーの業務システムを直接接続する「プライベート・サイト」向けのインターフェースも公開する予定。

 富士ゼロックスは2001年5月末,オフィス・サプライなどの製品をオンラインで売買する企業向けEC(電子商取引)サイト「x-plaza(クロスプラザ)」の運用を開始した(図1[拡大表示])。従来の富士ゼロックスの販売チャネルとほぼ同等の仕組みをインターネット上に実現している。ここでは,売り手はx-plazaに電子カタログを提供し,発注を待つ。一方,買い手はx-plazaに掲載された電子カタログを閲覧し,製品をx-plazaに発注する。納品や売り掛け/買い掛けの処理もx-plazaが仲介する。

すべての機能をXMLで利用可能に

 x-plazaのシステムでは,マイクロソフトが2001年3月に出荷を開始した,XML(Extensible Markup Language)ベースのシステム間連携ソフト「BizTalk Server」が重要な役割を担っている(図2[拡大表示])。BizTalk Serverはx-plaza の中で「マーケット・サイト」と呼ばれるサーバー上で稼働し,あらゆる売買を仲介している。マーケット・サイトはWebサイトではなく,売買のメッセージをXMLで受け渡しする仮想的な市場である。ERPパッケージ「SAP R/3」とXMLで接続しており,マーケット・サイトが受けた取引はすべてR/3で処理している。
 現在,マーケット・サイトのフロントエンドとして,買い手向けのWebサイトである「Webセル・サイト」と売り手向けの「Webバイ・サイト」を接続している。これらのサイトは,Webブラウザをユーザー・インターフェースとする,いわゆるWeb EDI(Webベースの電子データ交換)サービスを提供する。マイクロソフトのECサイト開発/管理システム「Commerce Server 2000」で構築した。

 x-plaza の主要なサーバーはすべてWindows 2000 Advanced Serverで運用している。マーケット・サイトやWebセル・サイト,Webバイ・サイトは負荷分散装置を使って2重化し,今後のアクセスの伸びに応じてスケール・アウトが可能な構成にした。

BizTalkへの接続方法を公開

 ECシステムで重要なのは,商品カタログや受発注データなど,企業間で送受信するデータ項目の取り決め(スキーマ定義)である。x-plaza では,EC向けの標準仕様として策定中の「RosettaNet」などをベースに,富士ゼロックスが独自に定義したスキーマを用いる。このスキーマ定義やマーケット・サイトへの接続インターフェース仕様は公開する予定だ。

 近い将来,Webセル・サイトやWebバイ・サイトを介さずに,ユーザー企業のシステムとマーケット・サイトを直接接続する「プライベート・サイト」のサービスも提供する計画がある。

 富士ゼロックスは当面,既存の販売チャネルの約30万社に及ぶ法人顧客を中心にx-plazaのWebベースのユーザーを獲得する計画だ。プライベート・サイトについても,従来の販売チャネルで取引のあるソフトバンク・コマースなどが売り手企業として参加を決めている。

 買い手側のプライベート・サイトについては,まだ具体的な参加企業はない。今後,マイクロソフトのCommerce Server 2000をベースにしたパッケージ・システムの販売や,既存システムとのインテグレーション・サービスを組み合わせることにより,参加企業を開拓する考えである。

大企業向けのサービスから方針転換

 x-plazaのシステムは実質的に3カ月程度で開発できた。しかし,稼働にこぎつけるまでに,富士ゼロックスはいろいろと回り道をしてきた。

 富士ゼロックスがx-plazaを発表したのは,1年以上も前の2000年2月だった。発表時,既にユーザー企業16社を対象にテスト運用を開始しており,2000年4月にも本格的なサービスを始める予定だった。しかし,「発表時点で運用していたシステムは商用サービスに至らなかった」(eコマース推進部ビジネスプランニンググループの白井浩之氏)。

 当初,富士ゼロックスは大企業の購買業務を効率化するためのサービスとしてx-plazaのビジネスを展開するつもりだった。そのため,ユーザー企業内の承認プロセスなどに合わせてシステムをカスタマイズすることを前提としていた。ところが,これを実行に移すには手間が掛かりすぎることが分かった。「あまりにもユーザー企業の要求が多様すぎた」(白井氏)のである。そこで,サービス方針をオンライン売買機能の提供に特化し,システムも全面的に作り直すことにした。

 当面のターゲット・ユーザーはカスタマイズの必要性が少ない中小企業に変更した。これだけの機能ならば一般的なWeb EDIシステムでも実現できる。しかし,大口顧客などのシステムを接続する手だては残したい。こうしたシステム要件を背景に出てきたのが,「XMLベースの仮想市場を構築し,フロントエンド・システムの1つとしてWebサーバーを用意する」というアイデアである。この用途にBizTalk Serverはうってつけだった。

R/3とのXML接続が難航

 BizTalk Serverを中心に据えて,XMLですべてのシステムをつなぐという発想はとてもシンプルだ。しかし開発作業は思いのほか困難だったという。特に苦労したのは,売買を実際に処理するSAP R/3とBizTalk Serverとの接続だった。

 R/3には,XML形式でデータを入出力する「SAPビジネス・コネクタ」というミドルウエアが用意されている。ところが,このミドルウエアが一筋縄ではいかないものだった。XMLデータのやり取りは技術的に問題なく処理されていたものの,そのデータの中身を分析する作業に膨大な時間がかかったのだ。とにかくXMLの要素(データ項目)の数が多く,似たような内容のものがたくさんあった。ケタ数に制限のある要素があったり,複数の要素間に暗黙の依存関係もあった。野村総合研究所や日立情報システムズが開発を担当したが,「R/3とBizTalk Serverの接続は世界的にも前例が見あたらず,2カ月近い試行錯誤の末,ようやくつながった」(eコマース推進部システムグループの菅野透氏)。

BizTalkツール群が威力を発揮

 それでもXMLやBizTalk Serverには十分なメリットがあった。「妙な制限があるといっても,とりあえずR/3はXMLデータを読み書きできる。後はXMLデータの仕様を確認するテストさえ繰り返せば,いつか正しくつなげられるという安心感があった」(菅野氏)という。

 BizTalk Serverに付属するビジュアル開発ツールも威力を発揮した。「BizTalkマッパー」は入出力するXMLデータの変換方法をビジュアルな操作で設定できる(図3[拡大表示])。「これらのツールがなかったら2カ月でつなぐことは到底無理だった」と菅野氏は話す。

図3●BizTalkマッパー
連携するシステム間で受け渡すXML文書の形式をBizTalk Serverで相互に変換できる。
図4●BizTalkオーケストレーション・デザイナ
外部のシステムと連携したビジネス・プロセスを視覚的なツールで設計できる。

 BizTalk Serverのもう1つの特徴である「オーケストレーション・デザイナ」も有用だった(図4[拡大表示])。一方が送ったデータをどう受け取るか,その確認のメッセージをどういうタイミングで返すか,といった手順をビジュアルな操作で定義できる。「XMLのシステムを作るときは,スキーマの違いを吸収することばかりに目が向きがち。しかし実際のシステム構築では,複数のシステムをうまく連携させて1つの業務プロセスにまとめ上げることも同じくらい重要だ」(菅野氏)。実質3カ月という短期間での構築にBizTalk Serverが果たした役割は大きかった。

(斉藤 国博=kuni@nikkeibp.co.jp)