野村証券は,本支店に配置した約850台のWindows NT/2000サーバーのうち,約140台のNTサーバーをセンターに置く3台のUNIXサーバーに集約し始めた。
■同社はこれまで,Windows NT/2000を利用した大規模な分散システムを構築してきたが,システムの一部を集中化する方向に舵を切り始めた。

 「顧客データベースを搭載した140台のNTサーバーは全廃し,すべて3台のUNIXサーバーに集約していく」。野村証券は2000年9月から,本支店など約130拠点に分散配置していたデータベース・サーバーの集約化に取り組んでいる。今年9月に完了する。

 同社は基幹システムの再構築のため,過去5年間で850台以上のWindows NT/2000 Serverを導入し,大規模な分散型システムを構築してきた。しかし最近は,システムの集中化と分散化のバランスを取り始めた。「集中と分散のどちらが有利か」という問題は技術の革新によって常に揺れ動くものだが,サーバーやネットワークを総合的に検討した今回の野村証券の判断は,NT/2000でシステムを構築するとき,1つの指針になるだろう。

顧客情報の統合化に迫られ集中処理へ

 集約化の対象となったデータベース・サーバーは,支店ごとの顧客情報を管理するためのものだ。野村証券は,地域の特性に合わせて支店ごとに収支計画を立てる経営方針を採っていたこともあり,顧客データは各支店ごとに独立して管理していた。顧客情報を格納したデータベース・サーバーは本支店内の業務システムと連係しているほか,営業戦略を立てるための分析用途にも利用されている。

 野村証券がデータベース・サーバーの集約に踏み切った理由は2つある。顧客情報を一元管理しなければならなくなったことと,数百台もある分散サーバーの運用管理が大きな負担になり始めていたことだ。

 同社は今年2月,顧客が証券取引などについて電話で照会できるコール・センターを立ち上げた。これにともない,コール・センターから全店舗の顧客情報にアクセスする必要が生じた。

 都合のいいことに,支店ごとに分散管理していた顧客情報は,バックアップのためにセンターのUNIXサーバー上に毎晩吸い上げられていた。現在,コール・センターのシステムは,とりあえずこのデータを利用している。

 だが本来,バックアップ・データを業務システムに流用することは望ましくない。これを機に,全社規模の顧客情報データベースを構築し,センターで一元管理することにした。

 分散サーバーの運用管理については,もっと悩ましい問題があった。「サーバー1台ごとに見るとトラブルは少ないが,140台もあると毎日のように1台や2台のサーバーが落ちている。管理者の負担を減らすためにもデータベースの集約を決断した」と,野村証券システム企画部の金澤亨次長は語る。

分散化と集中化のコストに大差なし

 分散したデータベースを集約するにあたって,当初は分散サーバーと同クラスのNT/2000サーバーをセンターに数十台規模で設置する案も出た。しかし,NT/2000サーバーで分散処理するシステムの構築費用とハイエンドUNIXサーバーで集中処理する場合の構築費用は,実はそれほど違わなかったという。「コストに大きな差がなかったので,集約化による管理のしやすさと大規模システムでの信頼性を採ってUNIXを選択した」(金澤氏)。

 各営業店のデータベースをセンターに完全に集約すると,多ければ1日に40万件のアクセスが集中するという。当然ネットワークの負荷は高くなるので,「これまでセンターと各支店間は384Kビット/秒の専用線で接続していたが,768Kビット/秒の回線に順次切り替えている」(同)。

5年間でNTサーバーを次々導入

 支店向けのNTサーバーに限って言えば,野村証券はこれまで,ほぼ一本調子で台数を増やし,分散化を推し進めてきた(表1)。今回のデータベースの集約は,サーバーの台数が増えすぎることによる弊害を抑え,分散と集中のバランスを調整することにあった。

図1●野村証券が構築したWindows NT/2000システムの分散化と集中化の主な流れ
野村証券は1996年,それまでメインフレームで処理していた業務の一部をWindows NTの分散クライアント/サーバー・システムで再構築した。一方,顧客情報を格納した140台のデータベース・サーバーを3台のUNIXサーバーに集約するなど,システムの集中化も進めている。システム構築は野村総合研究所が請け負った。
 同社が初めてWindows NTを使った分散システムを導入したのは,業務システム向けとしては早い1996年のことだ。システムの運用コストを半分以下に引き下げる「野村BPR」というプロジェクトにより,それまでメインフレームで処理してきた業務システムの一部をNTベースの分散システムに置き換え始めた。本支店に350台のNT Serverと1万2000台のNT Workstationを置く,当時としては最大規模の分散クライアント/サーバー・システムである。このときから各支店ごとに店舗業務サーバーを立て,顧客情報を店舗ごとに分散管理してきた。

 初代の店舗業務サーバーは,業務アプリケーションと顧客情報を管理するためのOracleデータベースを搭載していたほか,ファイル/メール・サーバーの用途も兼ねていた。その後,店舗業務サーバー,特にデータベースの利用率が急上昇したため,97年にデータベースだけを単体のサーバーとして切り出した。同じ年,顧客に提示する印刷データの履歴を管理するために,約460台のプリント・ログ・サーバー(NT Server 4.0)も追加導入した。

 97年末までの2年間に導入したNTサーバーは,実に1000台近くなった。さらに2000年には,初代の店舗サーバーを最新マシンとWindows 2000 Serverにリプレースし,同時に全社メール・システムをExchange Server 5.5に切り替えた(図1[拡大表示])。

時期 Windows NT/2000システムの変遷 狙い
1996年
9月
本支店など各拠点でNT Server 3.5搭載サーバーを約350台,NT Workstation 3.5搭載クライアントPCを約1万2000台導入。営業支援システムとして利用を開始 当時のシステム運用費を半分以下に下げるため,メインフレームで処理していた業務の一部をWindows NTのC/Sシステムで再構築
1997年
8月
既存のNTサーバーに組み込んでいたデータベース機能を切り出し,単体のデータベース・サーバー(NTServer 3.51)として約140台を追加導入 データベース・サーバーの負荷増大への対処
1997年
10月
印刷データを保存するためのプリント・ログ・サーバー(NT Server3.51)を約460台導入 顧客に提示した情報(帳票など)の管理を徹底するため,すべてのプリント・イメージを収集
1998年
3月
NT Workstation 4.0搭載のクライアントPCに順次リプレース クライアントPCの老朽化やシステムのWeb化などに対処
2000年
8月
本支店のNTサーバー(NT Server 3.5×250台)をWindows 2000 Serverに移行開始(2001年6月に完了) グループウエア・ソフトの切り替えと,老朽化したサーバーのリプレース
2000年
9月
97年に導入した140台のデータベース・サーバーを3台のUNIXサーバーに集約開始(2001年9月に完了予定) データベース・サーバーを集約することにより,運用管理コストを低減
表1●1996年9月以降に野村証券が構築してきたWindows NT/2000システムの変遷(一部抜粋)
1996年からNT Serverを店舗システムとして導入し始め,2001年6月時点では,NT Server 4.0を約600台,Windows 2000 Serverを約250台稼働中。このほか,ATM端末用途などにもNTを活用している。

残された分散サーバーは運用を簡素化

図2●外付けディスク装置を利用してバックアップのトラブルを回避
ファイル・サーバーのデータは,夜間にDLTテープにバックアップしていたが,データをいったん外付けディスク装置にコピーしてからバックアップする方式に切り替えた。この方式だと,バックアップ時間を気にする必要がなくなり,トラブルも激減した。利用するテープ装置はDDS-4のオートローダー。
 データベース以外の分散サーバーは特に集約化していないが,運用管理について何も対策を打たなかったわけではない。その1つが,分散サーバーのバックアップ方法の改善である。同社は従来,夜間に分散サーバーのデータをテープ装置にバックアップしていた。各支店に専任の管理者は配置しておらず,営業担当者などがバックアップ作業を受け持っていた。

 しかし,「テープが切れてしまうなど,バックアップ中のトラブルが多く,担当者の負担は増大していた。営業開始時間前に終わらせる予定のバックアップに失敗してしまい,日中にサーバーを停止せざるを得なくなることもたびたびあった」(システム企画部特別専門職の原靖則氏)。

 そこで,サーバーのデータを外付けのディスク装置にいったん落としてからバックアップする方式に変更した(図2[拡大表示])。外付けディスクへのバックアップ処理は,ほぼトラブルなく,瞬時に完了する。そこからテープ装置にバックアップすれば安全確実というわけだ。「限られた時間内にバックアップするという制約がなくなり,トラブルも激減した」(原氏)。

アプリケーションも集中化の方向へ

図3●ATM(現金自動預け払い機)端末にもWindows NTを採用
 サーバーなどのシステム基盤だけでなく,アプリケーション・システムについても集中処理と分散処理のバランスを見直している。各支店に配置したNTベースのATM(現金自動預け払い機)端末で動作するアプリケーションがその一例だ(図3[拡大表示])。画面表示の一部にWebブラウザ(Internet Explorer)の機能を組み込み,表示内容を臨機応変に変更可能にした。例えば,「画面に表示する時候の挨拶などを,季節に合わせてセンターから一括変更できるようになった」(原氏)。

 同社は現在,他の業務システムのWeb化も推進している。「Visual Basicなどで開発したシステムは,OSのバージョンなどに影響を受けやすい」(原氏)ためだ。「現在,システムのWeb化は全体の1割程度だが,2002年には2割以上まで高めていく」(同)。

(菅井 光浩=sugai@nikkeibp.co.jp)