江崎グリコはグリコ・グループ3社のシステム統合に備えて,2001年10月にWindows 2000による新しいネットワークとシステム管理インフラの導入に着手する。
■企業の枠を超え,グループ全体へActive Directoryドメインを展開する。ドメイン設計の最適化により,サーバーの台数も従来と比べて約2割少ない39台に削減できる見込み。
■将来は,グループ各社が個別に運用している基幹系システムを,Windows 2000などを使ったグループ統合システムに再構築していく。

図1●グリコ・グループにおけるシステム統合への道のり
グループ3社の情報システムを統合するためのファースト・ステップとして,今回はネットワークの再構築とActive Directoryによるシステム管理インフラの整備を行った
図2●企業の枠を越えたグリコ・グループのActive Directoryドメイン構成
グループ3社で密接なアプリケーション連携やデータ共有を実現するために,グループ全体でドメインを構築。企業をまたがった人材の異動や分社化の動きなどにも容易に対応できる柔軟さを備える

 「グリコ・グループの3社で,基幹系システムの統合化を目指している。そのファースト・ステップとして,グループ共通のインフラを構築することが今回のプロジェクトの目的だ」(江栄情報システムの平中義人システム開発部マネージャー)。

 江崎グリコはこのインフラを整備するために,グリコ・グループ3社へActive Directoryドメインを展開する。既にドメインの設計は完了し,今年10月から導入作業を開始する予定だ。複数の企業にまたがるActive Directoryドメインの構築は,先駆的な取り組みといえる。

 同時に,全国の拠点を結ぶネットワーク回線も再構築する。従来のフレームリレーを使ったスター型のネットワーク・トポロジからVPN(仮想プライベート・ネットワーク)によるメッシュ型のトポロジに切り替え,拠点同士で直接通信できる柔軟性を確保する。

グループ内のリソースをほぼ共通化

 グリコ・グループには,江崎グリコを筆頭に,牛乳や乳製品を手掛けるグリコ協同乳業やハム,チルド食品を扱うグリコ栄養食品がある。この3社は現在,それぞれ独自のネットワークとメインフレームを中心とした基幹系システムを運用している。

 だが,2003年春をメドに,それぞれのシステムをグループ共通のものに統合する計画である(図1[拡大表示])。「グループ企業間の連携を強化し,ビジネスとシステム運用を効率化するため」(平中氏)だ。既にグリコ・グループは,1999年10月に3社のシステム部門を集約し,江栄情報システムとして分社化。着々と準備を進めている。

 3社合計で約2800台あるクライアントPCのOSも標準化する方針だ。今は企業ごとにWindows 95か同98で標準化しているが,今後はWindows 2000 Professionalに統一する。今年末ごろから,まず江崎グリコでクライアントPCの切り替えを始める。

分社化や企業間の異動にも柔軟に対応

 システム統合の第1歩となるインフラは,図2[拡大表示]のようなActive Directoryドメインが中核となる。グループ企業ごとにActive Directoryのサブドメインを構築し,それらを統括する最上位のドメインを置く構成だ。

 このドメイン構成で,グループ内のユーザーやコンピュータを一元管理する。企業間でデータの共有をする場合やアプリケーションを密接に連携させる場合には,特に有利になる。

 グループ企業間の人事異動や分社化の動きなど,今後のグループ戦略によって起こりうる事象にも対応しやすくなる。例えば,新しいグループ企業が生まれた場合でも,Active Directoryサブドメインを1つ追加するだけでよい。ユーザー・アカウントの移動もグループ全体を横断して実行できる。

 グループ共通ドメインへの移行は段階的に進める。「まず江崎グリコが移行し,そこで得たノウハウを基に他の企業に横展開する計画」(平中氏)だ。江崎グリコは従来,NetWareサーバーを使ってインフラを構築していたが,これを全廃してWindows 2000サーバー(デルコンピュータのPowerEdge 2400)に切り替える。

設計を最適化しサーバーを2割削減

図3●Active Directoryドメインの設計を最適化することによりサーバー台数を削減
サイトやドメイン・コントローラ,WINSサーバーなどの配置を最適化することにより,サーバーの台数を従来と比べて20%程度削減できる見込み

 新しいドメインを設計するに当たって,江崎グリコはデルのシステム構築支援サービスであるデル・テクノロジー・コンサルティングを利用した。Active Directoryは江崎グリコにとって未経験の技術だったためである。実際の作業は,デルとそのパートナの日立ソフトウェアエンジニアリング,江栄情報システムが共同で進めた。

 グリコ・グループの新しいActive Directoryドメインは,各拠点の認証ユーザー数や地理的要素,ネットワーク・トラフィックを十分に把握した上で設計された。全国約60カ所にある拠点は20のサイトに分けられ,サイト間の複製を制御するサイトリンクは大阪本社と東京の拠点をハブとするハブ&スポーク型の構成にした。サイトリンクの優先順位を決める「コスト値」などの分析結果に基づいている。ドメイン設計そのものに目立った特徴はないものの,デルや日立ソフトが持つノウハウや一定の設計ルールに基づいて,ドメイン構成やドメイン・コントローラなどの配置が最適化された。

 この結果,従来はNetWareサーバーが50数台稼働していたが,新ドメインでは約2割少ない39台のWindows 2000サーバーで済む予定だ(図3[拡大表示])。「新しいドメイン設計によってサーバーの配置がスッキリした」と平中氏は語る。

 NetWareサーバーからWindows 2000サーバーへのデータの移行は,Windows 2000のNetWareゲートウエイ・サービス(NWGS)を利用する。ただし,ユーザー・データの移行は必ずしも容易ではなく,特に「複数のNetWareサーバーを1台のWindows 2000サーバーに集約するケースでは,各種の設定を手作業で実施することが多くなる」(平中氏)。

 組織単位(OU)の構造は管理の容易さを考慮して,「あまり階層を深くせず,3階層以内に収めることを原則にした」(デル・テクノロジー・コンサルティング事業部の須釜勉氏)。基本的には,「本部」-「部」-「ユーザーとグループ」または「コンピュータ」といった構造になる。

基幹系もWindows 2000で統合へ

 インフラを整えつつあるグリコ・グループは,並行して基幹系システムの統合・再構築の計画も進めている。これまで各社が個別に運用していたメインフレーム・システムを1つにまとめ,「できるだけPCサーバーを使って再構築したい」(平中氏)という。

 実際,現在進行中の物流系システムの再構築では,Windows 2000サーバーの採用を前提に検討している。他の基幹系システムについても,ERPパッケージ(統合業務パッケージ)とWindows 2000サーバーを組み合わせた場合の実現可能性を調べている。

 だが,基幹システムでWindows 2000を使う場合,Windows 2000サーバーが大量のトランザクションに耐えられるのかどうか,まだ少し不安があるという。「グリコ乳業は牛乳を毎日配送するため,トランザクションが非常に多い。実績のあるERPパッケージでも,このような業務にWindows 2000サーバーと組み合わせた導入例がまだない」(平中氏)からである。UNIXサーバーとWindows 2000サーバーを天秤にかけながら,慎重に評価を進めている。

(渡辺 享靖=takayasu@nikkeibp.co.jp)