◆ユーザーの課題◆東急建設は,メインフレーム上の基幹システムが経営環境の変化や相次ぐ組織変更に対応するだけの柔軟性を失ったため,その再構築に迫られていた。一方,1995年ごろに大量導入した3000台以上のWindows 95パソコンも更新期を迎えていた。

◆選んだ解決策◆まず,今年4月までに全クライアントPCをWindows 2000パソコンに入れ替え,全国9支店と約600カ所の作業所を結ぶネットワーク環境も刷新した。インフラを整えた上で,2003年4月までにメインフレーム上の基幹システムをWindows 2000 Serverベースのシステムにリプレースする。

◆結果と評価◆サーバー統合によりサーバーの導入コストを以前より約2割減らせたほか,ネットワークの刷新によって通信費を半分以下に抑えられた。Windowsベースの新基幹システムの稼働後に,年間2億円の維持費がかかるメインフレームを撤去する予定。

 東急建設は現在,情報システムの全面再構築を進めている。2003年4月までに,基幹系システムからクライアントPCに至るまで,社内のあらゆるコンピュータをWindows 2000 ServerやWindows 2000 Professionalマシンにリプレースする計画だ。

 既に,システムのインフラになるネットワークや約3600台のクライアントPCは今年4月までに移行が完了した。現在は統合業務パッケージなどを使って,基幹系システムをはじめとする10システムを順次開発中である。

組織変更に伴うシステム対応に半年も

 今回のプロジェクトが始動し始めたころ,東急建設ではあらゆるコンピュータに硬直化や陳腐化が進んでいた。例えば1960年代から機能拡張を続けてきたメインフレーム上の基幹システムは,コード体系の一部を手直しするだけでも,数十万~数百万行のCOBOLプログラムを調査する必要があるほど複雑な状態になっていた。同社は1999年に大きな組織変更を実施したが,そのとき基幹システムの修整に半年もかかったという。経営環境の厳しい建設業界ではスピード経営や国際会計基準への対応,コスト削減などが求められているが,それに追随できるシステムの柔軟性が欠落していた。

 クライアントPCも,1995年ごろから大量導入したWindows 95パソコンを更新する必要があった。東急建設はクライアントOSの標準化を徹底していたため,社内の9割以上のパソコンはWindows 95が占めていたのだ。

 こうした状況の中で東急建設が下した結論は,社内のありとあらゆるコンピュータを一気に入れ替えることだった。対象範囲は,基幹業務システム,電子メールやイントラネットなどの情報系システムをはじめ,ネットワーク,クライアントPC,プリンタにまで及ぶ。これらの一部分だけを新しくしても十分な効果が得られないので,「どうせやるなら,すべてを変えないと意味がない」(経営企画室の木吉博志システムグループリーダー)という強い姿勢で挑むことになった。

3段階でシステム刷新を進める

図1●システムの全面再構築に向けた3つの作業フェーズ
東急建設は3つのステップに分けて,システムの全面再構築を進める。初めにシステム関連業務の見直しとシステム・インフラの整備を済ませてから,基幹業務システムの再構築に着手した。既に一部のサブシステムは稼働済み。2003年4月までに,すべての業務システムを再構築する。

 システムを総入れ替えするに当たって,東急建設は3つのフェーズに分けて作業を進めた(図1[拡大表示])。周辺から整備していって,最後に基幹システムをリプレースする戦略だ。

 第1フェーズは,システム管理業務を見直した。パソコンやプリンタの管理,ネットワーク監視,ヘルプデスク業務などを,基本的に外部のベンダーにアウトソーシングすることに決めた。東急建設は,建設現場ごとに作業所を設置し,そこに社員がパソコンを持ち込んで利用している。作業所の数は全国で約600カ所に及び,年間400カ所以上の作業所が工事の開始/完了に伴って開設/閉鎖されている。そのため,コンピュータやネットワーク機器の移動/設置だけでも大変な労力が必要だったのだ。このアウトソーシングにより,情報システム部門の業務を企画・開発作業に集中化できる。

 第2フェーズで取り組んだのは,システム・インフラを構成するクライアントPCとネットワークの刷新だ。基幹系システムを再構築する上で不可欠な準備である。Active Directoryでドメインを作り直し,同時にサーバー統合も進めた。

 東急建設は従来,本社と各支店にそれぞれNTドメインを構築し,電子メール・サーバー(Exchange Server 5.0)も各ドメインで独自に運用していた。また,作業所にいるユーザーは,本・支店のいずれのドメインにも参加していなかった。

 このドメイン構成の問題点は,社員がドメインをまたがって異動するとパソコンのネットワーク設定を変更する必要がある上,メール・アドレスまで変わってしまうことだった。東急建設では作業所の開設/閉鎖によって頻繁に異動があるため,ユーザーはその度にパソコンを設定変更し,メール・アドレスの変更を顧客や関係者に知らせる必要があった。ドメイン・コントローラでユーザー・アカウントを登録/削除する手間も当然かかった。

(渡辺 享靖=takayasu@nikkeibp.co.jp)