◆ユーザーの課題◆アサヒビールは,グループ会社内で情報を共有するナレッジ・マネジメントを推進していたが,ビジネスをより円滑に遂行するためにさらなる情報共有が求められていた。
◆選んだ解決策◆グループ会社の社員が各種情報や業務システムに迅速にアクセスできるように,社内ポータルを用意した。ポータル画面は,Outlook上にデジタル・ダッシュボードを使って作成した。社内文書や掲示板などはExchange 2000 Serverのパブリック・フォルダで管理している。
◆結果と評価◆デジタル・ダッシュボードを使ったことで,低コストでポータル画面を作成できた。また,ユーザーのカスタマイズ要望にも柔軟に対応できた。今後は,より既存の業務システムとの連携を目指して,ポータルを育てていく計画である。
アサヒビールは,企業内の情報を共有し活用するナレッジ・マネジメントに積極的に取り組んでいる企業だ。
これまでも社内での情報共有の仕組みを整備してきた。例えば,同社には営業部門向けのナレッジ・マネジメント・システム「営業情報玉手箱」があり,営業担当者が日々の活動で集めてきたマーケティング情報や過去に使用した企画書などを登録している。重要な情報はグループ会社の全社員に公開している。同様に,技術部門向けの「技術部門知恵袋」では,技術部門が業務を通じて得た技術やノウハウなどを登録している。
また,部門ごとにWebサイト「部門ホームページ」をイントラネット上で立ち上げており,部署が独自で持っている情報を公開している。
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図1●社内の情報を集約してユーザーに見せる社内ポータルを構築 既存の業務システムや社内文書などを1つのポータル画面から迅速に呼び出せる。ポータル画面はデジタル・ダッシュボードでOutlookの画面上に作成している。 |
このように,エンドユーザーが持っている知識の公開を推進することで,業務上の課題を解決したり生産性向上が効果的に行われるようにしている。
ただし,営業情報玉手箱や部門ホームページなどの各システム間は連携しておらず独立して稼働している状況である。社員が必要とする情報を取得するには,個別の業務システムやファイル・サーバーの共有フォルダにアクセスする必要があった。社内に蓄積した情報を一元的に見せる仕組みがなかったのである。
そこで,社員が必要な情報にアクセスしやすくするために社内ポータルを構築した(図1[拡大表示])。ポータル構築の目的は「情報を集約して各社員に見せるようにすること」とアサヒビールのIT部 尾関博主任はいう。必要な情報は部署ごとに異なるので,営業部や生産部門,管理部門など部門ごとに6種類のポータル画面を用意している。社内ポータル経由でアクセスできるのは,営業情報玉手箱や技術部門知恵袋といった既存システムや掲示板,業務マニュアルといった共有文書などである。
Windows 2000で統一
同社は,社内ポータルを構築するときに,グループウエアを含めて社内の情報インフラをWindows 2000ベースで再構築している。
まず,2001年6月から8月にかけて,クライアントPCのOSをWindows 2000 Professionalに統一した。以前は,Windows 95/98/NT3.51などが混在していた。OSを統一したのは「情報インフラを安定して稼働させるのが目的」(尾関氏)であるという。
Windows 2000 Professionalの導入と同時に,これまでNTドメインで管理していたユーザー・アカウントをActive Directory(AD)で一元管理するようにした。
「ADを導入したのは時代に乗り遅れないため。情報インフラなので,長く使いたい。今後はADを前提としたアプリケーションが増えるだろう」(尾関氏)と考えて早めの導入を決断した。
その後,2001年11月に,グループウエアをNECのStarOfficeからマイクロソフトのExchange 2000 Enterprise Serverに変更している。Exchangeを採用したのはWindowsシステムとの親和性を重視したからだ。
Exchange 2000 Serverは,ユーザー管理をADで処理できるのが特徴である。ADと連携できないグループウエアの場合は,クライアントPCにログオン用とグループウエアを使うためのユーザー・アカウントを別々に管理する必要があり,ユーザー管理が煩雑になってしまう。そのような事態を避けるために,ADとExchangeの組み合わせを採用した。