◆ユーザーの課題◆グローバル ナレッジ ネットワークは,自社が使用しているPBX(構内電話交換機)に不満を持っていた。入居する超高層オフィス・ビル備え付けのPBXを月額40万円でレンタル利用していたのだが,機能が乏しい上に,通話先に誤った番号が通知されるなど不都合が起きていた。

◆選んだ解決策◆2003年5月に事業所を移転する際に,PBXを新調する必要に迫られた。そこで,PBXの専用機ではなく,Windows 2000 ServerベースのIP電話アプライアンス・サーバーを導入し,内線のIP電話化を図った。PBX専用機を導入するよりも,導入費用と運用コストが安かったからだ。

◆結果と評価◆以前よりコストを削減しつつ,「留守番電話機能」「不在時の転送機能」といった電話機能を強化できた。加えて留守番電話の伝言メッセージをボイス・メールとして受け取るというグループウエアとの連携が実現した。音質は当初問題が出たが,音声パケットを優先処理したところ改善した。

 ITプロフェッショナル教育大手のグローバル ナレッジ ネットワークは,自社の電話網に不満を持っていた。入居する超高層ビルのPBX(構内電話交換機)を月額40万円でレンタル利用していたのだが,機能が乏しい上に不具合が発生していたためだ。

 機能上の最も大きな不満は,留守番電話機能を使えないことだった。留守中にかかってきた電話を,携帯電話などに転送する機能もない。

 同社では社員全員に個人直通電話番号を割り当てているが,ある社員が離席している間はかかってきた電話を別の社員が受ける必要があった。営業部門や総務部門では,離席している社員の電話は別の社員が受けた方が都合がよい。しかし同社に多い講師(インストラクター)の場合,別の社員が電話を受けてもあまり意味がない。それどころか「無駄な電話応対で本来の業務が妨げられるデメリットの方が大きかった」(管理本部総務・ITSの竹内隆喜マネージャー)という。

 PBXを自社で管理できないのも不満だった。同社では社員の異動が頻繁にあるので,電話をピックアップし合える「グループ設定」を変更することが多かったが,その度にメーカーの保守要員を呼ぶことが負担になっていた。

 不具合もあった。電話をかけた相手の「ナンバー・ディスプレイ」に,本人の電話番号とは別の誤った番号が表示されることが多かったという。

事業所移転でPBXを新調することに

 2003年に,その不満を解消する好機が訪れた。同社は業務拡大に伴い,2003年5月に本社を別の新築ビルに移転することに決めたが,移転先には据え置きPBXがなく,PBXを新調する必要が生じたのだ。

 せっかくPBXを新調するのだから,これまでの不満は一掃したい。また,留守番電話機能を導入するのであれば,伝言メッセージは電話で聞くだけでなく,グループウエアからも確認できるようにしたいと考えていた。PBX予算には,従来のレンタル料の約3年分となる1500万円を用意した。

 まずPBX専用機を検討したところ,1600万~1700万円でこれまでの不満を解消できる製品を購入できることが分かった。しかし,伝言メッセージをボイス・メール化する機能を付加した場合,合計で2000万円を超える投資が必要になることが明らかになった。また,PBXの設定変更には1回当たり4万円の費用を払って,メーカーの保守要員を呼ぶ必要があった。

IP電話にすればコストを抑制

 一方,企業の内線電話をIP電話化して,PBX専用機を購入しないようにすれば,1500万円の予算で希望がかなうことが判明した。

 そもそもPBXとは,内線電話と公衆網との間に設置して,内線電話同士や内線と外線とを接続する装置である。このPBXの機能は,内線電話がIP電話の場合,Windows上で稼働するソフトウエアで処理可能だ。

 このソフトを搭載するWindows 2000 Serverベースのアプライアンス・サーバーの費用と,IP電話機を導入する費用,伝言メッセージをボイス・メール化するサーバーの費用の合計が1500万円だった。

 同社では,ソフトバンクBBの「BBフォン」などいわゆるIP電話サービスを導入して通話量削減を目指したのではない。外線電話にはNTT東日本のISDN網を利用している。純粋にPBXとしての費用を比較して,内線電話をIP電話化した。

サーバーはすべてWindows 2000

図1●グローバル ナレッジ ネットワークのIP電話システム構成図
PBX(構内電話交換機)をWindows 2000 Serverで代替してIP電話網を構成した。音声のパケットだけが流れるネットワーク(上半分)と,音声とデータの両方のパケットが流れるネットワーク(下半分)は仮想LAN(VLAN)で分割している。

 同社が実際に導入したシステムを図1[拡大表示]に示す。IP電話に必要なハードウエアとソフトウエアはすべて,シスコシステムズ製品を採用した。

 エンドユーザーはIP電話機またはWindows 2000/XP上で稼働するIP電話ソフトを使用する。IP電話機が100台,IP電話ソフトが100クライアントある。IP電話機を使っているのは,営業など電話を頻繁に使う社員が多い。

 ユーザーの音声は,パケットとなって社内LANに送られる。音声パケットの送り先をさばくPBXの役割は,「CallManager」というソフトが担っている。Windows 2000 Server上で稼働し,サーバーは本番用,待機用の2台でクラスタリングしている。ハードウエアは1Uのラックマウント型だ。

 留守番電話機能や電話転送機能もCallManagerが担当している。CallManagerが受信した伝言メッセージは,「Unity」というボイス・メール・サーバーを経由して,Exchange 2000 Serverに送信される。Unityの仕事は,CallManagerの電話帳(ディレクトリ)とActive Directoryとを結びつけて,ボイス・メールを送信することである。UnityもWindows 2000 Server上で稼働する。

 NTT東日本の公衆網とはISDNでつながっており,ゲートウエイ・スイッチが音声データをパケットに変換している。ネットワークはすべて,100BASE-TXのイーサネットだ。ゲートウエイとCallManagerサーバー,Unityサーバー,IP電話機がつながるネットワークは,他のネットワークとルーターで分けている。

 システム構築は,アプライアンス・サーバーを導入するだけだったので,「同時に行ったExchange Serverのアップグレードよりはるかに楽だった」(管理本部総務・ITSの久保宜生スペシャリスト)という。

どこでも“自分の電話”が利用可能に

 IP電話化のメリットは大きかった。IP電話機やIP電話ソフトは,LANにつながっていればどこででも1つの電話番号で利用できる。そのため,社員の異動に伴う工事が不要になった。

 また会議のときでも,IP電話機かパソコンを持っていけば,会議室で自分の電話が使用できる。VPN(Virtual Private Network)を使ってLANにリモート・アクセスしていれば,出張先や自宅からでも利用可能だ。

 ユーザーは,内線電話をかけるときにCallManagerのディレクトリを検索すればよくなったので,内線電話表が不要になった。このほか,3人が同時に通話する「Virtual Conference Room」機能も利用できる。そのため,簡単な会議であれば,どこかに集まる必要はなくなった。

図2●IP電話の留守番電話機能とExchange Serverとを連携
グローバル ナレッジ ネットワークのIP電話では,留守番電話に残されたメッセージはボイス・メールとしてExchange Serverに送信される。このメッセージはOutlook,IP電話ソフト,IP電話機から参照できる。

 留守番電話の伝言メッセージはすべてボイス・メールに変換されており,Exchange Serverのクライアントから確認できる。またIP電話機/ソフトからでも,Unityサーバー経由してExchange Serverにアクセスして,伝言メッセージを聞ける(図2[拡大表示])。留守番電話の応答メッセージは,自分でwave形式の音声ファイルを準備する。

 CallManagerの設定はすべてWebブラウザから処理できるため,管理も楽になった。またハードウエアがWindows Serverなので「何かあった時も,自分たちだけで対応できる」(久保スペシャリスト)という。

PCの音量設定が難題

 導入時にはトラブルが多少あった。IP電話ソフトの社内ユーザーから「聞こえづらい」という苦情が寄せられた。これは,ユーザーPCの音量設定がバラバラだったためだ。情報部門のスタッフが出向いてボリューム設定を変更すれば,大抵が解決した。

 しかし,ボリュームを調整しても不満を持つユーザーがいたので,社内LAN内では音声パケットを他のデータ・パケットよりも優先処理するように,スイッチを設定した。これにより,音声に関する不満はほぼ解決したという。IP電話が使う帯域は,64kビット~128kビット/秒程度なので,他のアプリケーションの利用にはほとんど影響が出なかった。

 同社では今後,大阪支社もIP電話化する予定だ。東京にある本社と大阪支社とは,1Mビット/秒の帯域保証をした広域イーサネットで接続する。この回線を使って,大阪支社の内線電話も東京のネットワークに統合してしまうのだ。こうなると,東京-大阪間の通話が内線電話になるので,今後は通話料の削減も見込んでいる。

(中田 敦=anakada@nikkeibp.co.jp)