(Elliot King)

 米EMCが2003年,米Legato Systemsと米Documentumを買収したとき,世間の意見は同社がハードウエア・ベンダーとしてのポジションをソフトウエア・ビジネスに移そうとしている,というものだった。

日用品化しつつあるストレージ装置
 この考え方には,コンピュータ・プラットフォームのようにストレージ・ハードウエアが急速に日用品と化して,価格が下落するだろうという背景がある。生き残りを策したベンダー各社は,自らソフトウエアを提供することで,付加価値を考えなければならないだろう。EMCはちょうど,技術投資の減退が一息ついたそのときに,格安な値段でよい技術を持った2つの会社を即座に買ったと思われた。

 しかし,EMCがVMwareを買収した件は,明らかにこのストレージの覇者が,ソフトウエアの提供範囲をこれまで以上に多様化しようと,強く意識していることを示している。実際にEMCは,完全な変貌を進めて,自分のポジションを企業内システムの“仮想レイヤー”の提供者へ変えるということも可能だ。

まだ話先行であるが
将来重要になる仮想化技術

 しばらくは,このことが最大の関心になっていたが,ストレージの仮想化(ストレージ・バーチャリゼーション)は多くのレポートによると,効果的に実装された例よりも,まだ話が先行している。しかし,何百,何千もの小さなサーバーの上に,管理用レイヤーをかぶせることは,異種が混在するストレージ装置の集合に,管理用レイヤーを追加するのと同じくらい難しい。グリッド・コンピューティングの全体概念は,何千もの小さなコンピュータをあたかも1つの実体であるかのように,効果的に管理することだ。

 いろいろな意味で,サーバーの仮想化は,合併の「陽」に対する「陰」である。仮想化の実装の流行は,過去3年間の呪文みたいだった多数の小さなサーバーの統合から,もっと数の少ない大きなものへと揺れ動こうとしている。このように仮想化は企業の様々なレベルで,ますます重要になっていく。

VERITASもソフト会社を多数買収
 EMCだけが,今後数年間におけるストレージ業界の新しい挑戦者というわけではない。米VERITAS Softwareは2003年夏,アプリケーション管理ソフト・ベンダーのPrecise SoftwareとJareva Technologiesの買収を完了した。そして2004年1月には,利用率ベースのITアセット管理と,サービスを中断せずリアルタイムにアプリケーションをサーバー間で移行する製品を主力に持つEjasentも買収した。もはやVERITASはストレージ管理製品の会社ではなく,その活動の中心をアプリケーション管理へと果敢に移しつつある。

 VERITASは2003年12月に,主要なリレーショナル・データベースとともに使えるアプリケーション性能管理パッケージ「Storage Extension」の出荷を発表した。Storage Extensionは,EMCのストレージ・アレイを最適化したり,EMC製品の環境で最高の性能を出せるようアプリケーションとデータベースをカスタマイズしたりする製品だ。これまでVERITASは,他の主要なストレージ製品ベンダーの技術で動作する同様な製品をそろえていた。EMCだけが自社ハードウエア向けにその機能を提供していた。今やVERITASもその機能を提供して,管理者にOSとデータベースを介してアプリケーションからストレージ・アレイに至るまで目に見えるようにした。

ストレージは他のシステムと
結びつかなければ管理できない

 まず,VERITASとEMCによる自らの変貌は成功するだろうか? この質問への答えは,「うまくいくだろうが,絶対とは言えない」というものだ。その場その場で,自らを変革してきた会社として,IBMの例がある。IBMは,ハードウエア・ベンダーとしての遺産にもかかわらず変革を遂げ,コンピュータのハードウエアとソフトウエアに加え,さらにサービスも売るハイブリッドな会社として再登場した。成功してはいるが,その変身は容易ではなく,IBMはストレージ製造部門とPC製造ラインを切り捨てねばならなかった。

 彼らの動きはストレージ産業にどういう意味を持つだろうか。一見すると買収が意味するのは,EMCもVERITASも,自分がストレージ専門企業のままでは,将来も繁栄を続けられると思っていないことと,両社とも急速に成長している分野への参入を急いでいたことである。だが,その分析は間違いだろう。むしろ,ほとんどの企業システムにとって,ストレージ技術の役割が変わりつつあるという認識がある。ストレージを支配するアプローチとして,SAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)が台頭してから,ストレージはますます他のITインフラとの統合を強めるようになった。ストレージは独立して管理できない。それは企業内のアプリケーションやサーバーやネットワークと相互に関連した形で管理しなくてはならない。

 EMCの幹部は長い間,「ストレージの管理者はデータベースやネットワークの管理者ともっと密接にかかわって仕事をしなければならない」と力説してきた。今回の買収によって,EMCとVERITASの両社は自分たちがいってきたことを実践に移そうとしているのだ。