(Elliot King)

 「情報ライフサイクル・マネジメント(Information Lifecycle Management:ILM)」のコンセプトが,ストレージ業界で評判になっている。ほとんどの大手ストレージ・ベンダーは,自社のILM戦略を売り込んでいる真っ最中だ。新製品が出荷されるたびに,ベンダーたちはILMの枠組みの中で,それらの製品が果たす役割を盛んに口にする。自社のILM製品の系列を増すことを狙って,他社を買収したりもしている。

ILMは,SRMとも違う,HSMとも違う
 1つの概念が業界を席巻する場合によくあることだが,ILMという言葉は,ユーザーが属するコミュニティごとに非常に異なる意味を持つことがある。さらに,ベンダーが違えば,全く違う理由で,そのアイデアを薦めることもある。従って,この言葉は,混乱を招く余地がたくさんあり,その混乱が顧客の選択の幅を狭めたり,実装を貧弱にしたりする可能性もある。

 ILMは,最近登場した「ストレージ・リソース・マネジメント(Storage Resource Management:SRM)」と同じ分類に入るものではない。ILMは,時がたってデータの価値が下がるにつれて,それをより安価なストレージ技術で保存すべきだという,常識的な概念を基にしている。ILMはデータの階層化を実践することである。

 米StorageTekの企業戦略担当ディレクタのTodd Rief氏は,「ILMは昔の"階層的ストレージ管理(Hierarchical Storage Management:HSM)"の考え方とは違う」という。HSMは単にデータの移動だけに重点を置いているのに対して,ILMはデータの保護も考慮しているからだ。Rief氏によれば,乗客の本質を悟った航空産業のように,ストレージのプロたちは,あるデータがほかのデータよりも価値があり,そういう場合は違った扱いをすべきだとはっきり意識するようになったのだという。

ストレージ業界におけるILM人気2つの理由
 この業界は現在,少なくとも2つの理由でILMに夢中になっている。第1に,ストレージ技術がより洗練され,高速かつ安価になったため,より複雑なストレージ・インフラを構築しつつあるということだ。企業ユーザーは,ローカルの高性能なハードディスクやSAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)から,低コストでオンラインに近いストレージにデータを移したあと,テープに移す。あるいはデータを直接テープへ移したりもできる。さもなければ,本番稼働中のハード・ディスクで,データの保存中に,ほかのデータをアーカイブすることも可能だ。このように複雑化していく傾向にある。

 第2に,データ保護の種類が爆発的に増えていることだ。例えば,ユーザー企業はミラーリング,即時スナップショット,無停止バックアップを使える。一方で顧客は,一番高価で高性能な本番稼働用のストレージを,完璧には使いこなしていないと感じている。業界のオブザーバーは,高性能なディスク群がそれらの容量の30~35%しか使われていないことがよくあると指摘した。SRMは,そうした状況を改善することを狙っているが,ソリューションの実装は遅々として進んでいない。

企業にとっては,法令順守とビジネス継続性
 ILMの考え方に,企業がこれほどはっきり共鳴している理由は,技術の進歩だけとは限らない。"法令順守"と"ビジネス継続性"への関心が高いため,改善されたデータ管理レイヤーと,優れたアーカイブ・レイヤーが必要になる。特定のファイルを迅速に検索できることに加えて,ユーザー企業はそれらのファイルが不法に改ざんされなかったことを証拠書類で立証できなければならない。

「柔軟で効果的」なストレージ基盤は"両刃の剣"
 うまく実装すれば,ILMは低コストでより柔軟性があり,より効果的なストレージ・インフラを提供するはずだ。しかし,こうした恩恵を現実化する道筋は,完全には明確になっていない。ILMのパズルを解くすべてのピースを提供している企業はまだないようだ。米Princeton Softechという最近,米Network Applianceと契約したアーカイブ技術ベンダーがある。そこの製品マーケティング担当副社長のJames Lee氏は,複数のソリューションのうち特定のピースを選ぶためのbest-of-breed(訳注:ベンダーが異なっても機能ごとに最適な製品を選ぶ)アプローチが,ILMには必要だと論じている。

 とはいえ,best-of-breedの技術を選択することは,人々に難しい選択を強いる。さらにbest-of-breedソリューションは複雑さを伴う。異なるベンダーが,異なる解答を提供しているので,それらのピースを統合しなければならない。しかも,多数のインテグレーションを必要とするプロジェクトには,たくさんの落とし穴がある。

 一方,落とし穴がたくさん生じるかもしれない複数のソリューションを実装することは,プロの本能として相容れないものだ。上級管理者は,どの技術を使うかを決める場合に,最重要の基準として投資対効果(ROI)を持ち出す。現場にいる人間にとっては,リスクの最小化こそが最優先である。もし,システムが落ちて,極めて重要なデータが失われれば,実装にかかる経費の効果はもう問題にならないだろう。

ILMは,サービスであり,コンサルティングである
 多くのベンダーにとって,ILMはサービス提供の一環として始まる。ユーザー企業が,自分たちのデータがどこにあって,どうやってストレージの仕組みを再構築するか。その評価をコンサルタントたちが助けるわけだ。換言すると各ベンダーは,ユーザー企業がILMのレンズを介して,現在の段取りをどう見直せるかを考える手助けをする。しかし,まだ検討段階に入ったばかりで,結果はまだ見えない先にある。