(Elliot King)

 コンピュータ業界では,標準化や相互運用性の確立に尽力する団体が数多く設立されるが,様々な理由でうまく機能しないことが珍しくない。標準化作業が遅れることは珍しくなく,技術によってはその機会に恵まれないこともある。またあるときは,標準化された技術が期待されたほど使われない。そのため,大手ベンダーの中には,きちんとした標準化に固執せず,市場によってデファクト・スタンダード(事実上の標準)を決める方法を選ぶところもいくつかある。その結果,業界団体などが新しい標準を確立するための作業を始めたと発表したときは,疑いの目で見られたり,軽視されたりすることが当たり前になっている。

 しかし,業界団体による標準化作業は,時にうまく進むのである。その例は,シリアル・アタッチトSCSI(SAS)というディスク・インターフェースの新しい仕様で,シリアルATAインターフェースと協調する技術として標準化が進んでいる。作業はスケジュール通りに進んでおり,本当に実を結ぶだろう。

シリアルSCSIとシリアルATAの
相互運用性の検証を実施

 標準化団体「SCSI Trade Association(STA)」が,SCSIというディスク・インターフェースの次世代標準を策定する作業に着手したのは,2年以上前になる。同団体は2003年1月,「Serial ATA II Working Group」というシリアルATAインターフェースの普及促進を図る業界団体と協調して,SASはシリアルATAとシステム・レベルで互換性を持たせると発表した。そして2004年春,その作業は標準化の新しい段階に突入した。STAは,SASにおける異なるベンダーの製品間の相互運用性に関する初めての接続検証を実施したのである。

 STA代表であり米LSI Logicのインダストリ・マーケティング担当ディレクタであるHarry Mason氏は私に,今回の接続検証はほぼスケジュール通りに行われたと語った。「2004年2月の間に計画が作成され,3月1日に始まった」と言う。

コネクタを小型化できる
 現行の技術であるパラレル接続のSCSIは,いくつかの変遷を経ながらほぼ20年近くにわたって使われている。一方,新しいSASはそれに対して数々の利点が出るように作られている。まず,シリアル接続用のケーブルとコネクタは,パラレル用のそれよりも小型化しやすい。そのため,メーカーは小さなディスク・ドライブを開発でき,ストレージ・アレイの各ベイに実装するデバイスの数を増やせる。その結果,コンピュータのストレージ密度を増やせる。

ケーブルを長くできる
 さらにシリアル・ケーブルはパラレル・ケーブルよりずっと遠くまで延長できる。そしてSASでは,1つのバスに128台のドライブを接続できるようにする。現行のパラレル接続では,1つのバスに15台までなので大幅な増加だ。現実にはパラレル接続では1つのバスに15台のドライブを接続した場合でさえ十分なスループットを出せない。

シリアルATAと混在して使える
 だが多分SASがもたらすかもしれない最大の利益は,シリアルATAとの相互運用性だ。この2つは同じプラグを利用し,ディスクにデータを読み書きするときに同じコマンドを使う。ストレージ管理者はどちらの標準インターフェースを選んでも自分のストレージ・サブシステムに複数のデバイスを混在させ,かつ適合させられるようになる。さらにそうして作ったシステムとその上にあるデータが古くなって価値を失ったときも,管理者は幅広い種類の容量・形状・コストのハードディスクにそれらを移せる。

検証作業に16社のベンダーが参加
 SASは昨年末に標準化を終え,1月から多くの会社がこの新しい標準を採用した製品を発表している。Mason氏によれば接続検証は数々の理由で注目に値するものだった。16社が参加して,参加を望んだすべてのベンダーがテスト用に製品の実物を持ってくる必要があった。「模様眺めのベンダーはいなかった。観客として参加する類のイベントではなかった」と彼は言った。

 参加企業としては,ディスク・ドライブ,コントローラ,テスト用機器,ケーブル,コネクタの各種メーカーやシステム・インテグレータがいた。大物参加企業としては,AdaptecやHitachi Global Storage Technologies,Hewlett-Packard,Maxtor,Seagate Technologyなどがいた。技術的にはイニシエータとターゲット・デバイスにフォーカスが当てられ,接続検証は広範囲に及んだ。物理層やケーブルやバックプレーン,それに転送レートのマッチングのほか,シリアルATAデバイスとSASエキスパンダのテストが特別に行われた。

 ただし,今回の接続検証は標準に厳格に従っていることを調べることを目的にしていなかった。実際のところ,Mason氏は,標準を守らせることはSTAのような組織では荷が重いと語る。同氏は,その代わりにHPやIBMのような大手のベンダーの方が,標準に準拠しているかどうかを調べる力があると思うと言った。

 今年はほかにも数回の接続検証が予定されている。3月のイベントの結果を踏まえて,2004年の第3四半期か第4四半期のうちに,各社から製品が出荷され,2005年の第1四半期にはユーザーが導入を始めるはずだ。そのとき企業は,より効率の良いストレージ装置を,必要度の高いものから低いものまで,幅広いアプリケーションで使えるようになるだろう。