(Elliot King)

 野球のレジー・ジャクソン選手は,1970年代後期に優勝したニューヨーク・ヤンキースにとって自分が「飲み物をかきまわすストロー」だったことをよく自慢していた。同選手を擁したヤンキースは1977年,78年と2年連続で全米一になった。彼は1977年のヤンキースとドジャースによるワールド・シリーズ第6戦で,3本塁打を放った伝説の人だ。

 最近の2つの発表は,EMCが中規模と大規模のストレージ分野で「飲み物をかき回すストロー」であり続けていることを示した。面白いことにどちらの発表も,EMCによるものではない。

IBMとHitachiがともにEMCを意識した製品を発表
 まず9月初め,IBMはiSCSI(Internet SCSI)技術をベースにした中規模システム向けエントリ・レベルのディスク・サーバーを発表した。同社は「TotalStorage DS300」を,WindowsとLinuxシステムで利用可能で,部門向けのeServer xSeriesとBladeCenterでの使用に適した製品と位置付けた。しかし,DS300の最も目立つ特徴は,EMCが5月に発表した類似製品のほぼ3分の1以下の値段だということだ。

 その後まもなく,Hitachi Data Systems(HDS)が新しい主力製品を公開した。それはかなりハイエンドの市場を狙ったもので,名称は「TagmaStore Universal Storage Platform」である。この製品は,HitachiのLightningストレージ・プラットフォームの第3世代であるとともに,2000年以来続くその製品系列を初めて一新する役割を担っている。ここでもEMCが競争相手として意識されている。

 TagmaStoreはキャッシュ有効時に68Gバイト/秒の転送速度と毎秒200万I/Oオペレーションを実現する優れた製品で,その性能は以前の製品のほぼ5倍である。製品系列は3つあり,最上位機のUSP1100は332Tバイトのストレージを内蔵する。TagmaStoreはさらに各種接続オプションを提供する。具体的にはファイバ・チャネル,FICON(Fiber Connectivity),ESCON(Enterprise Systems Connection)とNAS(ネットワーク接続ストレージ)である。

 数人のアナリストは,この製品がHDSにハイエンド市場での技術的優位をもたらすものの,それには時間がかかると主張している。実際,ハイエンドのHDS製ストレージをOEM販売しているHewlett-Packard(HP)は直近の四半期で企業向けストレージのビジネスに苦戦したことが明らかになった。原因はHPが売り込んでいた技術が古くなったためといわれた。

いずれも意欲的で非常に優れた製品
 非常に優れたハードウエア・スペックにかかわらず,TagmaStoreが最前面に打ち出した特徴は新しい仮想化技術だった。EMCとIBMのストレージが採用しているようなネットワーク・ベースの仮想化とは違い,TagmaStoreは32ペタ・バイトまでの内部/外部ストレージを制御できる仮想化技術をコントローラに組み込んでいる。

 さらにTagmaStoreには全ストレージを単一のツールで管理可能にするソフトウエアも付属する。これを使うと異機種が混在するストレージ・システムでデータの複製や移動が可能になる。過去にHDSは仮想化に対する戦略を明確に打ち出さなかったことで批判されてきたが今回は違う。TagmaStoreの発表資料によるとHDSのCTO(チーフ・テクノロジ・オフィサー)であるHu Yoshida氏は,新しい仮想化機能は最重要技術だったと強調している。

 だが,そう強調したことは,専門家にはあまり強い印象を残さなかった。事実,その発表の当日にMerrill LynchのアナリストShebly Seyrafi氏が,仮想化はTagmaStoreの一番重要度の低い側面だと発言している。Seyrafi氏によると仮想化はあまり支持されていない「生半可なコンセプト」であり,大規模ストレージのユーザーの一部が受け入れているぐらいだという。彼はユーザーが自らのストレージ・システムのフロントエンドにHDSの技術を置く選択をするだろうかと疑問を投げかけた。その一方,同氏はTagmaStoreの他の特徴は,ハイエンド市場においてHDSに6~8カ月トップの座を与えると思っている。

ライバルの動きで逆にEMCがリーダーであることを明確化
 では,IBMが中規模の市場でプライス・リーダーとして気を吐き,HDSがハイエンドで実績ある先駆者として現れたことで,EMCの落ち着き場所はなくなるのだろうか?そうではない。よりはっきりしてきたことは,EMCがストレージ・ソフトウエア市場のリーダーであるという点だ。そしてそれはそう悪い地位ではない。

 9月上旬に発表されたIDCの「World Wide Quarterly Storage Tracker」によれば,2004年第2四半期はEMCが世界のストレージ・ソフトウエア市場のシェアの32.5%を獲得し,昨年と同じ四半期に比べて3.4%増やしている。さらにストレージ・ソフトウエア市場全体が毎年16.9%と好調に成長している。それと対照的にストレージ・ハードウエア市場は年間で(ソフトウエアよりも)控えめな5%程度の成長に留まると前述のSeyrafi氏は推定する。ストレージ・ソフトウエア市場で最も急成長しているのはSRM(ストレージ資源管理)の分野であり,それはEMCが2003年夏にLegato Systemsを13億ドルで買収するなどで重点的に投資してきたところである。

 EMCはライバルよりもう1歩先にいるのかもしれない。1990年代後期に多くのアナリストは,大企業がEMCのような独立系ベンダーからソフトウエアを買い続けるのか,それともHPやSun Microsystemsのようなシステム・ベンダーからストレージを購入するのかを予想しあぐねていた。結論はこうだ。システム・ベンダーたちは利益を得たが,EMCは守りきり,さらにシェアを拡大した。今やストレージは大企業や中規模企業において独立した技術インフラになりつつある。EMCはその開発を先導し続ける良い位置にあって引き続き「ストレージ・ドリンク」をかき回すストローの役回りをこなすように思える。