(Elliot King)

 最近発行された一連の市場調査の研究と企業収益のレポートは,企業向けストレージ市場における相反する傾向を明示している。

 1つの傾向は,ハイエンドのストレージ分野が,ハードウエア製品の移行サイクルの真最中であるということだ。移行とは,ハードウエア・ベンダーに起こっているものというより,ファイバ・チャネルSANの分野のできごとだ。

 別の傾向は,EMCがその移行をゲームのルールを変えるために利用しているということだ。ストレージ管理を提供するEMCは,3つの大きなソフトウエアの買収を完了し,ハードウエアと同様にソフトウエアとサービスまで含めた重要なデータ管理企業と自社を位置付けている。こうした相反する傾向が昇華していく様子は,将来のストレージの性格に大きな影響を与えるはずである。

ファイバ・チャネル用部品の売上が予想を下回る
 多分企業向けストレージ市場の新しい方向を示す一番面白い兆候は,Yankee Groupが出した最新のレポートだ。このレポートは,ファイバ・チャネル用部品の市場が2004年第2四半期に,第1四半期と比べて減少したことを示している。この市場調査会社による第2四半期の収益予想が4億1549万ドルという数字は,2003年の四半期の平均収益4億7580万ドルよりも低いものだ。その評価によると,ファイバ・チャネルSAN用部品の市場は第2四半期に全面的に弱含みだったという。

 ファイバ・チャネルSAN用部品の主なセグメント,つまりスイッチやダイレクタやホスト・バス・アダプタ(HBA)は,2004年第1四半期から第2四半期にかけて連続で下落した。2004年第2四半期に1億3280万ドルの収益を生み出したダイレクタの区分だけは,2003年の四半期平均と同等の成長を示した。ダイレクタは2003年の四半期平均で1億1770万ドルの売り上げを記録している。現時点の2004年第2四半期の業績の結果として,Yankee Groupはダイレクタだけが以前の売り上げ予測に達し,それを含む全体は,以前の予想を20%下回ると考えている。

最大の原因は大企業が移行サイクルに入ったこと
 Yankee Groupのアナリストたちは,この不振の理由をいくつかあげている。過去1年にわたってファイバ・チャネルSANベンダーは,以前より小規模な企業をターゲットにしており,これが収益を減少させることにつながった。さらにIP SANの利用が拡大したことで,ベンダーは自社の製品の品ぞろえを広げたことも指摘している。しかし,多分一番大きな原因は,大企業がハイエンドで起きている製品の移行サイクルのおかげで,ストレージ・インフラへの投資を控えたことだ。

 移行サイクルの影響は,日立製作所,Hewlett-Packard,IBMの第3四半期の収益報告に明白に現れている。IBMではミッドレンジ・ディスクのカテゴリでは27%増加したにもかかわらず,ディスク・ストレージ全体の収益は前年比で1%減少した。Merrill Lynchのアナリストによると,この減少はIBMのハイエンド製品である「Shark」(IBMのエンタープライズ・クラスのストレージ・サーバー「Enterprise Storage Server 800」のコードネーム)の売り上げが第3四半期に急激に落ちたことを示すものだ。

 実際のところMerrill Lynchによると,IBMのメインフレーム用ストレージ事業は第3四半期には26%減少したという。HPのストレージでの収益は,オンライン・ストレージが23%と大きく落ち込んだこともあって,前年比で15%下落した。日立もMerrill Lynchの調査担当者によるチャネル・チェック(対象企業について第三者が提供した企業情報を基にした分析)ではエンタープライズ・ストレージで軟調を示した。どの事例でも購買者たちは12月から市場に登場し始める予定の新製品を待っていたのだ。

EMCだけが収益を伸ばした
 しかし,この話がEMCでは全く違っており,同社の収益は2003年の同じ時期の四半期に比べ34%増加し,純所得は37%もはね上がった。Documentum,Legato,VMwareが上げた収益を除いたコアの部分の収益は19%増えた。

 EMCは明らかに,日立とIBMを出し抜いて市場のシェアを奪ったのだが,そうして得た地位は短命かもしれない。日立とIBMの両社が提供する次世代のハイエンドの高性能なエンタープライズ向け製品は,強い印象を与える技術仕様を提供するもので,多くの業界のオブザーバーたちはその新技術によって両社が失った地歩を取り戻すだろうと予想している。

 EMCはその点を考慮して,自社を性能で首位に返り咲かせる新世代の技術を準備中だと表明している。

 しかし,EMCはハードウエアの仕様では善戦しようと準備しているように見えるが,実はもっと重要な事態が進んでいるのかもしれない。EMCは,基礎となるハードウエアよりも,長期に渡ってデータ・ストレージを管理する情報ライフサイクル管理(ILM:Information Lifecycle Management)とソフトウエア・アプリケーションによりフォーカスを当てている。現実に,ストレージは今やコンピューティングと同じモデルに従う可能性がある。そのモデルでは基礎となるハードウエアはますます日用品に近くなり,重要な違いのほとんどは技術の集積のさらに上に現れるようになる。

 長い時間をかけて,ストレージは完全に分離したITインフラとなり,個別の管理戦略と個別のツールを必要とするようになった。企業はデータを生み出す生産システム群と,データが生成されたあとにそれを管理するための独立したインフラを持つようになるだろう。こういう筋書きが現実になれば,多くのIT関連の組織は大規模な再構築に迫られることになるだろう。