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 1994年に発表されて以来,商用ベースのディストリビューションとして,数多くのユーザーを獲得してきた旧Red Hat Linuxの開発が終了し,Fedora Projectという新たなプロジェクトがスタートしてから約2カ月が経過した。

Red Hat Linuxの開発は終了,2004年4月にパッチ提供も終了

 旧Red Hat Linuxは,米Red Hatが開発,公開していたディストリビューションである。多数のハードウエア/ソフトウエア・ベンダーによるサポートがあることなどから,相当数のユーザーがいる。しかし,旧Red Hat Linuxの開発はすでに終了しており,最新バージョンのRed Hat Linux 9も,2004年4月で修正パッケージ(パッチ)の提供が終了する。

 旧Red Hat Linuxのユーザーは,自分で修正パッケージを作成して使い続けるか,さもなくば他のディストリビューションへの移行を迫られることになる。または,サード・パーティが提供する修正パッケージを利用するという方法もある。日本では,筆者が所属するテンアートニが,有償のアップデート・サービスを提供している。

 本稿では,移行するディストリビューションの候補として,Red Hat Enterprise Linux 3とFedora Core 1を取り上げ,サーバー用途,デスクトップ用途のそれぞれにおけるメリットとデメリットを整理する。

Red Hat Linuxはコミュニティ・ベースのFedora Coreに
Red Hatは企業向けEnterprise Linuxに専念

 Fedora Linux Projectは,コミュニティ・ベースの,Red Hat Linux向けのパッケージを整備するプロジェクトだった。米Hawaii大学のWarren Togami氏が中心となって活動していた。今年9月に,Red HatのRed Hat Linux Projectと,Fedora Linux Projectの合併が発表され,新生 Fedora Projectがスタート。11月のはじめには,新生Fedora Projectからの初リリースとなるFedora Core 1がリリースされた。

 Fedora Core1は,下記のような特徴を持ったディストリビューションである。

  • コミュニティ・ベースでの開発,無償利用可
  • 最新バージョンのソフトウエアを採用
  • 短いリリース・サイクル (4~6カ月)
  • アップデート・パッケージ・マネージャ「yum」の採用
  • デフォルト・ロケール(多国語対応)のUTF-8化
  • アプリケーションの起動を高速化するprelinkの採用

     一方の,Red Hat Enterprise Linux3 は,旧Red Hat Linuxをベースにした製品であり(将来のリリースはFedora Coreベースになる予定),下記のような特徴を備えている。

  • 米Red Hatが開発,有償
  • 安定バージョンのソフトウエアを採用
  • 長いリリース・サイクル(12~18ヶ月)
  • ソフトウエア・ベンダー,ハードウエア・ベンダーによる動作検証
  • 最長5年間,修正パッケージを提供
  • サポート・サービスが付属

    デスクトップとしてのFedora Core---最新実装を利用できる,問題はロケール

     Fedora Coreは最新の実装を取り入れるというポリシーで開発されている。そのため,旧 Red Hat Linuxほどの安定性は期待できないと考えた方がよい。また,開発スピードが速く,リリース・サイクルが短いのも特徴である。4カ月~半年で次のバージョンがリリースされ,旧リリースの修正パッケージの提供は短期間で終了する。

     これは,一見デメリットのように思えるが,最新の実装を手軽に利用できるというメリットととらえることもできる。

     Fedora Core 1から新しく採用された「yum」は,パッケージの依存関係の解決を簡単にしてくれるので,デスクトップ関連パッケージのように,複雑な依存関係を持つパッケージ群の管理に威力を発揮する。また,アプリケーションの起動を高速化するprelinkも,デスクトップ用途において性能の向上に大きな効果を発揮する機能である。

     ただし,日本語環境におけるデスクトップ用途での利用を考えた場合,ひとつ大きな問題がある。それは,デフォルト・ロケールがUTF-8に変更されたことである。ロケールの変更を行うためには,各アプリケーション・パッケージの設定変更やデータ変換もあわせて行う必要がある。しかし,一部のパッケージにおいてそれらの修正が不完全であり,日本語の表示その他がうまく行えないという不具合が発見されている。

     今後,アプリケーションやパッケージのUTF-8対応や,UTF-8環境における不具合を回避するためのノウハウや設定がFedora Projectにフィードバックされていくものと考えられるが,しばらくの間はユーザー自身が対処していく必要がある。

     従って,ある程度のスキルを持つ人にとっては非常に魅力的なディストリビューションとなりえるが,旧Red Hat Linuxで楽に実現できていたデスクトップ環境を期待する人は,もう少し待ってから Fedora Core 1に移行するのが賢明かもしれない。

    デスクトップとしてのRed Hat Enterprise---ロケールの問題はなし,課題は価格

     Red Hat Enterprise Linux 3は,Red Hatが販売するディストリビューション・パッケージで,安定性と信頼性の重視を特徴としている。また,一年間のサポート・パッケージと,Red Hat Network 利用権が付属する。企業で利用する場合は,Fedora Core 1 という選択肢はほとんど考えられない。そのため,必然的に Enterprise Linux 3に移行することになるだろう。

     個人ユーザーがEnterprise Linux 3に移行するには,価格の面で難がある。そのため,Fedora Core 1で発生する不具合が大きな問題になるような場合には,サポート・パッケージなしのProfessional Workstationが移行ディストリビューション候補の最右翼となるだろう。

     Enterprise Linux 3やProfessional Workstationでは,デフォルト・ロケールの設定が従来通りなので,Fedora Core 1のような混乱の心配はない。日本語環境でよく利用されるnkfやkccなどのパッケージが削除されているものの,旧Red Hat Linuxからの移行にあたっては,大きな問題は発生しないと考えられる。

     Linux上で商用ソフトウエアを利用する場合には,必然的にベンダーが正式にサポートしているRed Hat Enterprise Linux 3に移行することになるだろう。

    サーバーとしての Fedora Core---短いリリース間隔がサーバーには不向き

     サーバー用途としてFedora Core 1を利用する場合,大きな問題になるのはリリース・サイクルの短さと,修正パッケージ提供期間の短さである。従って,企業利用におけるディストリビューション移行の選択肢としては考えられない。

     個人ユーザーなどによる利用の場合でも,上記が大きな問題になると考えられる。短期間でのリリースと修正パッケージ提供の終了は,サーバー運用に大きな負担となるからである。他の rpm 系ディストリビューションやDebianなどに移行するケースが増えることが予想される。

     ただし,これは現時点での話である。Fedora Projectはコミュニティ主導のプロジェクトである。今後もし,Debianのように旧リリースの修正パッケージを長期間にわたって提供するような方針への変更があったとすれば,最適な移行ディストリビューションの選択肢としての候補にあげられるかもしれない。

     修正パッケージの問題以外に,Fedora Core 1ではデスクトップと同様,ロケール周りで問題が発生することが考えられるので,特に,従来の環境やデータを移行する場合には,充分なテスト・検証が必要である。

    サーバーとしてのRed Hat Enterprise---悩ましい旧Red Hat Linuxユーザー

     企業において,旧Red Hat Linuxをサーバーとして利用していたユーザーが,今回の移行ディストリビューション選択に最も頭を悩ますユーザー層であろう。低コストでサポートが含まれないディストリビューションは,ある程度のスキルを持つユーザーやインテグレータが積極的に利用してきた。

     企業におけるLinuxのサーバー利用で,Fedora Core 1を選択するケースはほどんどないと考えられる。しかし,Enterprise Linuxは有償のため,場合によっては価格がネックとなる。そうなると,旧Red Hat Linuxのユーザーは,他のディストリビューションかEnterprise Linuxのどちらを選択するかという大きな決断を迫られることになる。

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     以上,旧 Red Hat Linuxのユーザーが,移行するディストリビューションを選択するためのヒントを示してきた。しかし,これはあくまでディストリビューションを利用する立場での話である。

     Fedora Projectは,Linux自体がそうであるように,コミュニティ主導のプロジェクトとして生まれ変わった。プロジェクトの発足は,プロジェクトに参加する大きなチャンスである。今までディストリビューションを利用するだけだった人も,この機会にFedora Projectに参加してみてはいかがだろうか。

    国賀 由慎(Yoshinori Kuniga)

    ■著者紹介 国賀 由慎 (くにが よしのり)
    株式会社テンアートニ 第二事業部エンジニア。株式会社テンアートニは1997年設立のLinuxとJava専業とする企業。第二事業部はLinux/オープンソース関連のソフトウエア開発,SI(企画,コンサルティング,構築,運用等),サポート,教育,製品の販売等を手がける。