テレビ会議システム市場は,IP(インターネット・プロトコル)対応製品の増加で
企業内の会議以外にも用途が広がりつつある。医療や学校,工場などにも
導入が進むことで,2001年度の出荷台数は4割以上の増加が見込まれる。

図●主なテレビ会議システムの出荷台数
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表●国内で販売されている主なテレビ会議システムの出荷状況と販売強化策
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 2000年度のテレビ会議システム市場は,堅調に推移した。主なベンダー6社の2000年度の出荷台数合計は7530台(日経システムプロバイダ推定,以下推定値には*を記す)で,前年度比約6.6%増の伸びを示した。

 今回調査の対象としたテレビ会議システムは,映像/音声の信号をアナログ/ディジタル変換する機器とカメラ,マイクがセットになった製品。テレビに接続してISDN(総合ディジタル通信網)やIP(インターネット・プロトコル)経由で遠隔地を結んだ会議が行える。

 テレビ会議システム市場は,ピクチャーテルやポリコムをはじめとする外資系ベンダーが大きなシェアを占めている。国内メーカーではソニーやNECエンジニアリングが健闘しているが,これまでテレビ会議システムを販売していた国内メーカーの一部は,新製品を市場に投入しないなど撤退の動きを見せている。例えば,97年以来新製品を発表していない,ある大手メーカーは「受注分は出荷しているが,特に販売は強化していない」という。市場が拡大しているとはいえ市場規模はまだ小さいので,大手メーカーにとってはうまみが少ないようだ。

 テレビ会議システムは,社内のIPネットワーク・インフラが整備されるのに従い,これまで主流だったISDN対応製品に加えてIP対応製品のニーズが高まっている。実際,市場に出回っているテレビ会議システム製品は,ISDNとIPの両方に対応しているものがほとんどだ。今後はブロードバンド・インターネットの普及に伴い,ADSL(非対称ディジタル加入者線)への対応も課題になりそうだ。

 テレビ会議システムの用途は,社内でのテレビ会議のほか,医療や教育現場,工場の施設監視などにも広がっている。こうした市場の広がりで,メーカー6社は2001年度に出荷台数合計で前年度比4割増の1万860台*を見込んでいる。

共同プロモーションを計画

 99年6月に日本法人を設立した米ポリコムは全世界で1位のシェアを誇り,国内でも確実に出荷台数を伸ばしている。2000年度の出荷台数は1770台で,前年度比約3.7倍の伸び。

 ポリコムのテレビ会議システムViewStationは,接続地点数や転送速度に応じてローエンド機からハイエンド機まで11種類の製品ラインアップをそろえている。この中で販売の中心となっているのは,4地点を接続可能なハイエンド機。「多地点の会議を接続できる製品のニーズは高い。企業や学校,病院などに幅広く売れている」と奥田智巳セールス&マーケティングマネージャーは話す。

 100%間接販売を展開しているポリコムの販売パートナは1次代理店が5社,2次代理店が約50社ある。販売パートナには「テレビ会議システム単体の提案ではなく,なるべく企業ネットワークの活用方法の一つとして提案してもらいたい」(奥田マネージャー)。これまで英語版のみだった製品情報の資料を2001年から日本語化するなど,パートナ支援も強化している。

 2001年度の出荷台数は前年度の2倍以上の3800台を目標にしている。ただし「目標を達成するためには,テレビ会議システム市場の拡大を妨げる阻害要因を取り除かなければならない」(奥田マネージャー)。その阻害要因とは,テレビ会議利用の文化が日本でまだ浸透していないことだ。「日本人はまだテレビに向かって話すことに違和感を持っており,テレビで会議を行うことに抵抗感がある」(同)。

 そこで,ポリコムは競合他社や通信事業者と手を組みテレビ会議システムの業界団体を結成して共同プロモーションを展開することを計画中だ。プロモーションの具体的な内容は未定だが,同社は今後,外資系企業や海外に進出している日本企業をターゲットに,海外と日本を結んでテレビ会議を行うことで出張費を削減できる点をアピールしていく方針だ。

パートナ拡充を急ぐピクチャーテル

 2001年5月に,ポリコムによる買収が発表されたピクチャーテルは,買収完了後もピクチャーテル・ブランドのテレビ会議システム製品を引き続き販売する。ピクチャーテルの99年度の出荷台数は約3000台*だったが,2000年度は約2500台*に減少。これは,ある大手企業へのOEM(相手先ブランドによる生産)供給が2000年度になくなったからだ。

 2000年度の販売の中心はローエンド機のPictureTel 760シリーズで,出荷台数全体の8割近くを占めた。2001年に入ってからは,ハイエンド機のPictureTel 900シリーズとローエンド機の600シリーズを相次いで日本市場に投入した。

 ピクチャーテルも,ポリコム同様一般企業のほか,医療機関や教育機関,発電所などに幅広く販売していく方針。「例えば,テレビ会議システムで米国の大学と結べば,日本でもMBAの資格取得が可能になる。原子力発電所の監視システムとしても有効に活用できる」(櫻井靖史企画部課長)。特に医療機関への販売に力を入れる。

 販売方法は,ほぼ100%間接販売。販売パートナは現在27社あるが「ただ製品を再販するだけではなく,ユーザーごとにソリューションとして提案できる販売パートナをもっと増やしたい」(櫻井課長)という。例えば,製造業向けにテレビ会議システムとCAD(コンピュータによる設計)ソフトを組み合わせたソリューションなどを想定している。

 年内にも新たにソリューション提案を手掛けられるシステム・プロバイダなどの販売パートナ2社を獲得する予定だ。

 販売パートナへの支援も強化している。週に2回,販売パートナとユーザー向けに製品の説明会を開催しており,パートナ向けの技術的な支援も積極的に行っている。「既存の販売パートナにソリューション提案力を付けてもらう」(櫻井課長)ことで,2001年度は3000台*の出荷を目指す。

教育機関への販売が多いソニー

 国産メーカーで最もシェアの高いソニーは,2000年度に大幅に出荷台数を伸ばした。2000年度の出荷台数は1750台*で,前年度に比べて8割以上の伸びだ。

 ソニーが特に強いのが教育分野。「教育機関への販売は,2000年度は全体の約30%だったが,2001年度は半分近くになりそう」(岡本哲治情報システムビジネスセクターインテグレーション機器マーケティング部インテグレーション機器マーケティング課統括課長)という。

 これまでは大学向けが多かったが,2001年度に入ってからは小中学校への販売も増えている。物体をスタンド型カメラで映してテレビに表示できる機器を用意するなど「教育機関を意識した設計にしてある」(岡本統括課長)という。同社は今後,テレビ会議システム環境を向上させる計画。例えば,パソコンとテレビ会議システムをケーブルなしで接続できるようにしたり,会議の様子を後からパソコンで閲覧できるようにしたりする計画。

 直販と間接販売の割合はほぼ同じ。販売パートナはAV・通信機器の販売店やシステム・プロバイダなど約200社。「店舗にテレビ会議システムを設置して遠隔地で店舗状況を確認できるマーケティング・ツールとしての活用や介護での活用など新しい利用方法をユーザーに提案するよう,パートナには要望している」(岡本統括課長)という。2001年度は,市場規模はさらに拡大すると見て,3000台*の出荷を目標にしている。

官公庁に強いNECエンジニアリング

 NECエンジニアリングのテレビ会議システムは,2000年度まではNEC本体が販売していた。もともとNECエンジニアリングはNECの開発パートナとして画像/音声装置関連の技術者を多数抱えており「開発から製品企画までNECエンジニアリングが行うことで,より柔軟に事業展開できる」(和気靖浩メディアネットワーク事業部第一伝送開発部主任技師)ことから,2001年度からNECエンジニアリングに事業移管した。

 同社の主力製品はハイエンド機のVisuaLink TC5000EX100。2000年度まで販売していたローエンド機のTC2000/3000は今は販売しておらず,ハイエンド機に特化している。これは,同社の主要ユーザーである官公庁などで高品質な画像/音声のニーズが高いためだ。2000年度のテレビ会議システムの出荷台数は1350台。2001年度は800台を見込む。2001年度に減少するのは,ローエンド機の販売を中止したため。

 NECエンジニアリングは,テレビ会議システムを画像配信システムや監視システム,教育システムを構築するための一つのコンポーネントとして位置付けている。「テレビ会議システムはあくまでも画像/音声ビジネスの一つにすぎない」(和気主任技師)。VisuaLink TC5000EX100のほかにも,MPEG(ムービング・ピクチャ・エキスパート・グループ)2準拠の動画伝送システムVL7000EXや携帯型の伝送システムMediaPoint mobileなど画像/音声ベースのシステムを構築するための製品を幅広く取りそろえており,特定メーカー向けにOEM供給も行っている。2000年度の音声・画像ビジネス全体の売り上げは,SI(システム・インテグレーション)を含めて35億円に上る。

 販売方法は8割近くが直販だが,NECグループのNECネクサソリューションズなどのシステム・プロバイダによる間接販売も展開している。システム・プロバイダにはネットワーク構築案件に組み合わせて販売してもらう。

 加えて他の国内メーカーの撤退もあるので,他社製品からのリプレースも積極的に狙う。

(中井 奨)