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 損害保険ジャパンは2006年10月に社内SNSを本格導入した。現在、社員1万5000人中の約1300人が参加している。運用者が頃合いを見ながらIDとパスワードを配布する。近いうちに3000人まで増やす予定だ。評価人事権を持つような課長部長クラスは参加させていない。アクティブユーザー数は1週間で5割。導入の目的や現状を担当者に聞いた。(※インタビューにご回答いただいた各氏――経営企画部 経営品質グループ課長 槻木清隆氏、経営企画部 経営品質グループ 青木聖子氏、東京サービスセンター部 新東京サービスセンター課 課長代理 田村正氏、本店火災新種サービスセンター部 第一SC課 野中弘子氏――の発言を編集部がまとめた)

■社内SNSの導入を考えた理由は

 今から2年半前に社内の情報をどう整理して生かすか、いわゆるナレッジマネジメントについて検討を開始した。目的の1つは「Know-Who」(社内の誰がどのような業務や技術に精通しているのかといった人材情報)の共有を実現すること。そのとき相談したコンサルタントに勧められたのが社内SNSだった。

 上層部の説得に半年かけて、ようやく2006年5月に検討と試験運用を開始した。実はその直後、金融庁から業務の一部停止命令と改善命令を受けており、(業務改善の一環として)社員の声をすくい上げるのに社内SNSが有効であるという見解になった。そこで、社長の佐藤からも「大急ぎでやるように」と言われ、前倒しして2006年10月に本格運用を開始した。

■社内SNSによって会社はどう変わったのか

 スピード感が今までと全然違う。我が社の人員構成は、各地の営業所で代理店とやり取りする現場の社員がかなりの割合を占める。代理店に商材の内容を説明したり、商材の良さを伝えたりする際のノウハウはそれぞれの営業所で蓄積されている。営業所ごとのノウハウをいち早く吸い上げ、共有・活用するにはSNSはもってこいだ。そういった意味で、スピード感がぐんと上がった。

 良い例がある。東京日本橋の女性社員がある日、代理店向けに作った独自のクリアファイルを携帯電話のカメラで撮影して、自分の日記に投稿した。日付は2007年5月30日。(よいアイデアだったので)この日記がアップされた後、本社の運用担当者が上層部へ相談。すぐに全社採用が決定し、6月末には印刷業者から見本版が届いている。今までなら、上層部の許可を得るために何個も印鑑を押してもらい、レポートを書くなどで、3カ月以上はかかっていたプロセスだった。それが1カ月足らずで実現した。現場同士がつながることで、トップダウン志向の会社文化までも変えてしまった。

■社員のモチベーションや行動の変化は

 運用開始後1カ月半は、本社にいる運用担当者が毎日すべての日記やコミュニティにコメントを入れ、自分の睡眠時間を削って盛り上げ役に回った。そのかいあってか、今はそこまでしなくても、自然発生的に社員同士で盛り上がってくれている。

 本社の担当者が積極的に参加するのは、社員のモチベーションを上げるという意味合いもある。本社のスタッフが参加していることで、営業所の社員は自分たちの声を本社に直接届けられると感じる。それで、どんどん意見を出してくれる。実際、担当者が一時期コメントをしないようにしたところ、アクティブ率が一気に低下した。これを定常に戻すのに1カ月半かかった。

 我々の営業所は海外にも地方にもあり、営業所が違う社員同士が知り合うことは、今までまずあり得なかった。SNSは横のつながりを持つことに対するハードルを明らかに下げた。まったく知らない社員同士でもやり取りをしているようだ。

 北陸地震が起きたときも、休日だったにもかかわらず、すぐにコミュニティが立ち上がった。営業所の人間の安否確認に始まり、支援できることがないかどうかなど自然発生的に社員が助け合う姿が見受けられた。別のコミュニティでは、オフ会を行い、長野や秋田からそれだけのために仕事上がりの社員が駆けつけた。

 会社が大きくなればなるほど、横のつながりは薄くなる。SNSは会社が大きくなることで消えかけている対面コミュニケーションを補っている。こういったことはすぐに何かの成果に結びつくことはないが、いつかは何らかの形で会社に還元されるはずだ。