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 秋葉原のパソコン販売店「ラオックス ザ・コンピュータ館」(以下ザ・コン)が2007年9月20日に閉店となる。1990年の開店当時は国内最大規模のパソコン専門店として登場。秋葉原のパソコン店を代表する存在となったが、ここ数年は、より大型の競合店が現れるなど、集客力は徐々に落ち込んでおり、再編の潮流には逆らえなかった。ラオックスの山下巌社長に、閉店を決断した経緯と今後の戦略、秋葉原の将来展望を聞いた。

■「ザ・コン」はラオックスにとってどんな存在だったのか。また、閉店の理由は。

 「ザ・コン」は重要な位置付けの店舗だった。一時期は、ラオックスの総売り上げの中で、秋葉原の占める比率が35~40%もあった。その中で突出して多かった店舗はザ・コン。1996年度には店舗の売り上げが320億円に到達し、パソコン専門店としては日本一となった。会社を支える大きな柱であり、対外的にも秋葉原のランドマーク的な存在として認知された。

 売り上げが大きいだけでなく、売り場面積が物理的に広いという特徴もあった。当時、家電店で同じ規模の店もあったが、パソコン専門で1000坪の売り場を持つ店はなかった。「ラオックス=ザ・コン」という強いリンクイメージが浸透し、売り上げ規模と売り場面積から“アキバにザ・コンあり”という伝説が生まれた。

 しかし、現在では1000坪が大きいかというと、決してそうではない。秋葉原駅東側のヨドバシカメラは7000坪だし、先日開店した秋葉原のソフマップも1400坪。新しい伝説を生むには物理的なスケール感が足りない。パソコン関連商品のみで売り上げが伸ばせる時代でもない。

 今後は坪売り上げの高い業態にシフトしようと考えている。地域密着の小型店を多数展開し、顧客との密接な関係を作り上げる。感情的な部分では、あのザ・コンが閉館されてしまった、というのはあるが、今後は新しい売り方で伝説を作っていく。

■地域密着の販売方法とは。

 首都圏郊外のショッピングセンターや商店街などに複数の店を展開している。平均で450坪。パソコンだけでなく家電も取り扱っている。

 売り方としては、パソコン専門店といっても敷居が低く、相談しやすく、親近感を持ってもらえる店舗を目指す。例えば、パソコンの知識のないお年寄りが、子供とメールのやり取りをしたいというときに、そのお手伝いをする。そうした一連のパソコンの使い方を支援する「あんしんサポート」を用意している。

 パソコンの知識がなく、どうやったらメールやインターネットができるのか分からない、という顧客層は少なからず存在する。パソコンを買ったときに親切にしてもらえたから、今度は冷蔵庫やエアコンも買いに来た、というリピート客も増えるはずだ。

■秋葉原の集客力が落ちている理由は。

 秋葉原駅の東側にヨドバシカメラが出来たこともあるが、ひとつの要素に過ぎない。ヨドバシカメラが出現した2005年以前から、パソコンや家電の売れ行きは徐々に落ちていたため、店を畳むところが多かった。それだけ、秋葉原の街としての求心力、集客力は落ちていた。

 秋葉原が隆々としていれば、同じ店舗で売り上げを伸ばす方法を探ったのだが、顧客が少しずつ郊外に流れつつあった。そのため、秋葉原の店が郊外に進出する動きが顕著となった。ラオックスも郊外に数多く出店したが、その歴史は、顧客を拡散させて、秋葉原の集客力を落としてしまったとも考えられる。

■秋葉原にソフマップが新店をオープンするなど再編の動きもある。

 秋葉原が情報の発信基地となり得る商品を売るべきだ。従来から、秋葉原は情報の発信基地という役割を果たしてきた。過去の典型的な例が、オーディオやパソコン。あの真空管アンプがいい、あのスピーカーがいいなどと、マニアは秋葉原に集まり、秋葉原で売れるものが大阪の日本橋などに広がっていった。

 メーカーはまず秋葉原に商品を卸す。秋葉原で売れたら、地方でも売れる。だからメーカーとしては、まず秋葉原で存在感を示したい。この循環によって、秋葉原は情報発信基地となり得た。ただ、それが今後、冷蔵庫やパソコンなどの商材でできるのかというと難しい。

 今、発信基地の歴史をたどっているのはいわゆる“萌え”系。それらの分野では秋葉原ほどのパワーがある街はない。「ASOBITCITY」というエンターテインメント系の店舗では、萌え系のキャラクターをデザインした「おてんちゃん」というおでんの缶詰を販売しているが、40万缶くらい売れている。高々250円の製品だが、馬鹿にならない。

 横浜や千葉の店舗でも、あのアキバで売れているおでん缶だと紹介すると売れる。このような、秋葉原が情報発信基地となり得るような商品を見つけることができれば、秋葉原で新しい店舗をスタートする意味がある。

■秋葉原におけるラオックスの店舗展開は。

 秋葉原地区では当面、既存店のリニューアルを進める。ザ・コンが展開していたパソコン関連商品の売り場を本店に作るなど、商品構成を変え、既存店の再活性化を目指す。ザ・コンの譲渡で有利子負債を完済するメドはたったが、資金を運用していく段階までにはもう少し時間がかかる。新店を数多くオープンするといった展開は来期以降となる。

 秋葉原の店舗では、免税品の占める割合が大きい。秋葉原のラオックス本店では、売り上げの7割くらいが免税品。総武線のガード下に、ポケットプラスワンというIT機器が好きな若い人に向けた店舗を作ったが、実際には中国とか韓国など海外の方の比率が高い。

 円安の影響や、国土交通省が推進する外国人旅行者に向けたキャンペーンの効果があるようだ。秋葉原が観光ツアーに組み込まれており、シャトルバスで訪れて、家電やIT機器を購入していく。秋葉原駅周辺で、免税売り場のない家電店は皆無ではないか。

 もう一つの柱がASOBITCITYで展開しているエンターテインメント系となる。秋葉原で注目を浴びる商品は、オーディオ、白物家電、パソコン、エンターテインメント系と変化してきた。10年後の予測は難しいが、しばらくは免税品と、エンターテイメント系が中心となるのではないか。