PR

 日経WinPC編集部は2008年1月26日、東京・秋葉原で開催されたPCパーツや自作パソコンに関する展示会「DIY PC Expo 2008」(主催:DIY PC Expo実行委員会、後援:アスク、協力:日経WinPC)のセミナーにおいて、2007年11月に市場投入したクアッドコアCPU「Phenom(フェノム) 9000シリーズ」の話題を中心に、日本AMDに対して公開インタビューを行った。回答者は同社PCプラットフォーム・プロダクトマーケティング部の土居憲太郎氏だ。

●デュアルコアCPUを2個封入したインテルのクアッドコアCPUに対し、専用設計で4コアすべてが密に結合している「ネイティブクアッドコア」だとアピールしていたPhenom 9000シリーズは、登場前にライバルを負かすと言っていた割には性能がいま一つの印象がある。

 2008年1月下旬時点で販売しているのは2.2GHzで動作する「Phenom 9500」と、2.3GHzの「同9600」。対して、インテルのクアッドコアCPUの最下位モデル「Core 2 Quad Q6600」は2.4GHz。AMDの2.4GHz動作の製品は、第2四半期に投入するPhenom 9700になる。(Q6600とPhenom 9700がほぼ同等の処理性能を示すという、日経WinPCに掲載したテスト結果を前にして)Phenomと(2008年1月時点で市場にある65nm版の)Core 2 Quadは、同じ動作周波数なら、ほぼ同等の性能であると認識している。今後登場するPhenom 9700、同9900に期待してほしい。

●そのころには、インテルが45nm版のクアッドコアCPU(Core 2 Quad Q9000シリーズ)を市場に投入している。

 AMDはまだフラッグシップCPUである「Phenom FX」を出していない。フラッグシップを出す以上、絶対に勝たなければならないと思っている。また今年の後半には45nm版のCPUが控えている。製造プロセスを単純に縮小しただけでなく、3次キャッシュが2~3倍になるので性能向上が期待できる。製造プロセスではインテルが進んでいるが、コアのアーキテクチャーには自信がある。45nm版のCPUには、まだ発表していない「隠し玉」の製品がある。これは(インタビュー時点では)、インターネット上にリーク情報としても出ていない。

●Phenom 9500の実勢価格は当初、インテルのCore 2 Quad Q6600とほぼ同じ3万~3万3000円だった。しかし、1カ月ほどで約2万3000円に値下がりした。確かに価格性能比は改善し、お買い得になったと言えるが、最初にPhenomに飛びついた熱心なユーザーは納得しないのでは?

 値下げで納得しないと言われたのは初めてだ。2005年9月に秋葉原でイベントを開催したとき、2.2GHz動作のデュアルコアの「Athlon 64 X2 4400+」が6万5000円くらいだった。現在のPhenom 9500が3個ほど買える価格で、3年で大幅に値下がりしたことが分かる。確かに最初に購入してくれたお客さんには若干申し訳ないという気持ちがあるけれども、競合他社の製品も考慮して、(AMD製品の)価格性能比に納得していただかなければならない。そこで思い切って値下げした。

●現在の「B2リビジョン」(半導体のバージョンの1種)のPhenomには、キャッシュを構成する機構の一部に「エラッタ」(不具合)がある。このエラッタを修正するBIOSが提供されているが、修正を適用すると処理性能が落ちることがある。CPUには大なり小なりエラッタがあるのは理解できるが、それが原因ですぐに止まるようなら不安だ。改善版の「B3リビジョン」が登場するまで、Phenomは買わない方がいいのか。

 エラッタがあるのは事実。インターネットの一部のニュースサイトや掲示板でうわさされているように2.4GHz以上で現象が起こるのではなく、B2リビジョンのすべてのPhenomが抱えている。元々は、Phenomと同じ基本設計のサーバー向けCPU「クアッドコアOpteron」で発見された。このエラッタによる問題は仮想化を利用しているときに起こる。
 ただ、一般的なクライアントPCの用途だとエラッタによる問題が発生する確率は低い。海外では、仮想化機能を使わずにエラッタによる問題を再現できたら懸賞金を出すとしているWebサイトもあるくらいだ。メーカーとして100%起こらないとは言えないので、修正BIOSを提供しているけれども、自分自身で使っているPhenomのシステムでは修正していない。
 本当に困る人はBIOSにより修正してほしいが、(自作PCでは)ほかの要因でシステムが止まる確率が圧倒的に高いので、気にしなくてもいい。クライアントPC用途で本当にまずい問題ものなら出荷していない。安心して使ってほしい。

●Phenomでは数々の省電力機能を実装した。ところが、システム全体の消費電力を測定すると、それほど低くなっていない印象がある。

 組み合わせるチップセット、マザーボードによって消費電力は変わる。日経WinPCのテストでも、ハイエンドチップセットの「AMD 790FX」を搭載したマザーボードのシステムに比べ、低価格機向けの「AMD 690G」搭載マザーボードのシステムは消費電力が低くなっている。また、(日経WinPCが2007年12月に測定した)Phenom 9900は初期のリビジョンで消費電力がやや高い。製品として第2四半期に登場する9900は異なるリビジョンになるので消費電力は変わるはずだ。第1四半期中には、消費電力を下げた「Phenom 9000eシリーズ」や、グラフィックス機能内蔵の新チップセット「RS780」(開発コード名)も出てくる。

●Phenom世代の設計を採用したデュアルコアCPU(開発コード名はKuma)はいつ出てくるのか。

 Kumaは6000番台の製品として登場する。現在のデュアルコアの最上位は3.2GHzの「Athlon 64 X2 6400+」。これ以上の性能を出すためには、動作周波数を上げていかなければならないが、(現時点では)難しい。現在のデュアルコアCPUのラインアップ中、上位製品の置き換えとしてトリプルコア「Phenom 8000シリーズ」を用意している。トリプルコアでは、一般のアプリケーションでも性能が上がる。Kumaは(デュアルコアCPUのうちの下位製品が占める)「メインストリーム(市場)」用との位置付けだ。Kumaは一応出てくるが、トリプルコアに期待してほしい。

●トリプルコアが出るのは、生産がうまくいかず、正しく動作するクアッドコアCPUの製造数が少ない(歩留まりが低い)からではないか?

 トリプルコア専用のダイ(半導体本体)ではなく、クアッドコアで1コアが動いていない状態がトリプルコア製品になる。しかし、クアッドコアで動かなかった製品だけでなく、あえて1コアを止めてトリプルコアにしているのもある。歩留まりが低いわけではない。

●Phenomやチップセット「AMD 7シリーズ」の市場投入に合わせて、動作周波数や電圧などの情報を表示したり設定したりする専用ユーティリティー「AMD OverDrive(以下AOD)」をアピールしていた。これは2008年1月下旬時点ではAMDのWebサイトにはなく、マザーボードメーカーのサイトからしか入手できない。ただ、それらの一部はバージョンが低いようで正しく動かない(※)ことがある。AODの位置付けは?

※Windows Vistaにおいて「ユーザーアカウント制御(UAC)」を無効にしないと、ユーティリティーが起動しない現象があった。

 AODは、あくまでもマザーボードとセットの設定ユーティリティーという位置付けだ。そのため、マザーボードメーカーからユーザーに提供してもらっている。現時点では、AMDのWebサイトで配布する予定はない。近々アップデート版が出るはずなので、なるべく最新版を使ってほしい。提供のタイミングはマザーボードメーカー次第だ。ベータ版を掲載している海外のWebサイトもあるが、それは流出したもの。AMDとしては内容を保証しない。

■変更履歴
2つ目の写真の説明文にあった土居氏の氏名が誤っておりました。本文は訂正済みです。 [2008/01/31 10:29]