PR
 米インテルがサンフランシスコで開催している開発者向け会議「IDF」で、今年1月に新設したデジタル・ヘルス部門の事業概要を初めて明らかにした。同部門を率いるルイス・バーンズ副社長(写真1)が、インテルが医療分野でどのような事業を計画しているのか基調講演を行った。
(写真1)デジタル・ヘルス部門を率いるルイス・バーンズ副社長

データの標準化を進める

 バーンズ副社長は、現在、医療費は年々高くなっている現状を指摘し「今、医療の分野には新しい技術が必要になっている」と述べた。実際、高齢化社会になると、およそ2割の人たちの医療費が全体の8割を占めることになるという。また、病院にいくと分厚い紙の資料が各部門ごとにばらばらに保管されており、これらのデータをデジタル化し標準化できないのかを考えたという。

 このデータの標準化が米インテルが医療部門で推進する事業の1つとなる。現在の状況は「たとえばカルテ一つをとっても、各部門でフォーマットが標準化されていないことがある。また機器についても部門ごとに独自の機器を使っていたり、相互運用性は大変低い」(ルイス・バーンズ氏)。同氏はこうした状況に対し「患者のデータをすべて標準化すればおよそ2兆ドルものコストが削減できる」と述べた。

 また、年間10万件にも及ぶ医療事故なども発生しており、データを共通化することで、これらの医療事故や、薬の間違った処方による副作用なども防ぐことができるとしている。

プラットフォームで機器の相互運用性を向上

 データ標準化の事業に関しては、バーンズ副社長は「今後はテクノロジーの使い方が重要になってくる」と、インテルの持つプラットフォーム技術を使う新しい機器を投入していくことを示唆した。

 たとえば、新しく開発したセンサーなどを使って監視する方法をとれば、今まで常に介護が必要なアルツハイマーの患者であっても、通院など家族などの負担が少ない方法でも介護が可能だとしている。

 同氏は、「未だに病院では1990年代からあるような古い機器しか使っていないところもある」と指摘し、実際に米セント・ルークス病院で患者をRFIDで管理した実験を明らかにした。事前には情報が過剰になるなどの懸念もあったが、実際の運用時には問題になることはなかったとし、「技術が障壁をなくしていける」と新しい機器の需要に自信を見せた。

 基調講演では、電子カルテの紹介や、簡単に血圧や体温などを測定できる機器などを実際に使って見せた。いずれもBluetoothや無線LANの機能を備え、カルテのデータを容易に調べたり、ナースステーションと音声で会話できるIP電話などの機能を備える(写真2、写真3)。また、地域医療であればWiMAXを使うのも有効だという。

3つの分野に焦点を当てる

 今後、医療で取り組む具体的な分野については、家庭で可能なヘルスケアが重要になってくるとし「健康(Wellness)」「Okay-ness cheking」「遠隔治療(Telemedicine)」の3つの分野に注力するとした。健康はパソコンなどを使って体の状態などをチェックすること。Okay-ness Checkingとは、年老いた家族や親族などを通信機能を使って世話する考え方。そして遠隔治療の分野では医者と看護婦がカバーできる範囲を広げることができるとしている。

 基調講演後に個別に開いた会見では、日本でもすでにビジネスを開始しており、実際に病院と実験などを計画していることも明らかにした。今後、日本でも動きが見えてくることになりそうだ。(仙田 明広=日経パソコン・米サンフランシスコ発)

(写真2)電子カルテでデータを容易に調べられる (写真3)簡単に血圧や体温などを測定できる機器の実演