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 国内最大の音楽販売店であるタワーレコードは、米ナップスターと合弁会社を設立し、2006年4月に音楽配信事業を開始する。国内の販売店としては初参入であり、さらに料金定額制という独自のサービスを提供する点が注目を集めている。タワーレコード社長で、新会社のCEOも兼任する予定の伏谷博之氏に戦略を聞いた。

■音楽配信事業への参入の狙いは。

 音楽を生業としている企業のひとつとして、低迷している国内の音楽市場を活性化するのが目的だ。ユーザーにとって音楽配信は新たな流通経路。これが加わることによって、ユーザーが音楽に接する機会が増え、結果として市場が活性化される、と考えている。

 近い将来、音楽配信はCDなどのパッケージ販売を駆逐するという極端な見方もあるが、それは違う。両者は必ず共存していく。

■配信事業への参入の経緯は。

 参入は、かなり前から検討していた。当社として一から自前で作る選択肢もあったが、たまたま2005年の年明けに米ナップスターと話をする機会を得た。ナップスターは、米国以外に英国、カナダでサービスを開始するなど海外展開を進めており、当然日本市場にも興味を持っていた。ただ、彼らから見ると「日本市場は特殊」であり、国内のパートナーを探していた。

 当社としては、ナップスターが展開している定額制サービスの魅力に加え、当社と同様に音楽を生業としている点に共鳴し、提携することになった。実際には、6月末に契約に関する話し合いを開始し、8月4日に合弁会社を設立することで合意した。設立は2005年10月を予定している。

■合弁会社の出資比率は、タワーレコードが68.5%、ナップスターが31.5%だが、名称が「ナップスタージャパン(予定)」になった理由は。

 ナップスターはかつてP2Pの音楽ファイル交換サービスで世界中を席巻したが、現在では、米国、英国などで優良の音楽配信サービスのブランドとして認知されている。音楽配信事業では、この認知度の高さを生かしたい。

■具体的なサービス内容は、米国のものと同様になるのか。

 基本的にはそうだ。ナップスターは、米国で月14.95ドルの定額制「Napster To Go」に加え、1曲ごとのダウンロード販売も行っている。国内での具体的な料金は未定だが、同じメニューを提供していく方針だ。

 米国では百万曲を超える楽曲を提供しており、Napster To Goのユーザーはすべての楽曲を聴き放題だ。パソコンにダウンロードした楽曲は、パソコン上はもちろん、韓国アイリバーの「H10」など対応の携帯音楽プレーヤーに転送して楽しめる。転送回数に制限もない。数多くの楽曲を、リーズナブルな料金で楽しめるサービスなのだ。
 ただ、Napster To Goで提供される楽曲はCD-Rなどに保存できない。それをしたいユーザー向けに、1曲ごとの楽曲販売も行う。

■国内向けサービスでも百万曲以上を用意できるのか。

 百万曲というラインナップは決して多くはない。タワーレコードの渋谷店では約15万タイトルを販売しており、単純計算では150万曲を提供している。オンラインという特性を活かせば、もっと多くを実現できるはずだ。
 来春のサービス開始に向けてレコード会社とこれから交渉していくが、スタート時から最低でも百万曲は用意したい。
 さらに、Napster To Go対応の携帯音楽プレーヤーの機種を充実させることも重要だ。こちらは既存のプレーヤーのファームウエアをアップグレードするだけなので問題はないはずだ。

■会員数獲得の目標は。

 3年後に100万人の会員獲得を目指す。音楽配信サービスには既に多くの企業が参入しているが、生き残れるのは上位数社しかないだろう。米国ではアップルコンピュータが約8割のシェアを保有する。国内で同様の状況になるかは分からないが、彼らには音楽市場を育てていこうという姿勢はあまり見られない。その意味でも当社ががんばっていきたい。

 具体的なことはまだ言えないが、サービス開始後には、店舗でのサービスと連携させたり、当社で運営するECサイト「@TOWER.JP」などと連携を取って、音楽市場の拡大に貢献していきたい。 (聞き手・内田 泰=日経パソコン)