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 パソコンの未来像を探る連載の第3回。第1回第2回に引き続き、メーカー各社のパソコン担当トップに話を聞く。今回は、レノボ・ジャパン 社長 向井宏之氏と、松下電器産業 パナソニックAVCネットワークス社 システム事業グループ ITプロダクツ事業部長 高木俊幸氏(次ページ)のインタビューをお届けする。

「来年2月までには新レノボのラインアップを用意する」

向井宏之氏 レノボ・ジャパン社長


写真1●向井宏之氏 レノボ・ジャパン社長
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 ─家庭向け市場では、エンタテインメント機能を強化したAVパソコンが新しいカテゴリーとして誕生している。コンシューマー市場については、日本を先行市場として位置づける向きもある。レノボとして、コンシューマー向け製品を再投入する考えはないのか。

向井 たしかに、旧レノボ側には(日本のコンシューマー市場に対する)期待はやはりあると思う。ただ、現時点で、コンシューマー市場に参入する考えは全くない。

 現在、レノボ本社の経営陣は会長こそ中国系の楊元慶だが、CEOはスティーブ・ウォード、COOはフラン・オサリバンと、実際の事業運営に当たっているのはIBMのメンバーだ。

 彼らは、旧IBMが10%保有していた日本のシェアを伸ばしていくためには、デルやHPなど米国系メーカーが売り上げを伸ばしている「ベリースモールオフィス」市場の開拓を最優先で進めるように言っている。コンシューマー市場に関しては、Aptivaをやめたときの大きな負の印象をグローバル自身も持っている。

 レノボは今、49カ国に拠点があるが、コンシューマーと呼ばれるセグメンテーションは各国でだいぶ事情が違う。インドやシンガポール、ベトナムなどのコンシューマー市場は、どちらかというと、旧レノボの商品に近いような製品で構成されている。

 一方、日本のコンシューマー市場は、画像、音響機能とも一歩も二歩も進んだ製品が中心だ。日本メーカーの製品は完全に家電の域に入っているといえるだろう。日本のコンシューマー市場では、市場の反応を見ながら3週間くらいでモデルに修正を加えていくようなスピード感を持っているメーカーが今後は生き抜いていくのではないか。

 レノボ・ジャパンとしても、デジタル家電の領域に突入している市場に今から本当に参入すべきなのかというと、ちょっと違うのではないかと思う。今のレノボには、この部分に対抗できる製品がない。

 現在のレノボ・ジャパンが強いビジネス市場には、まだまだ売れる別な市場があるのは分かっている。当面の優先順位は、個人市場の中でも、数人、場合によっては1人で事業を営んでいる「スモールビジネス」「ベリースモールオフィス」市場の方が高い。

─旧レノボ製品の投入については。

向井 今は投入のタイミングを見ている段階だ。いつ、どんなタイミングでどの製品を出すか。投入時期のターゲットの1つはオリンピックだ。レノボは公式スポンサーの1社。オリンピックの情報システムの提供は、シドニー五輪までIBMがやった。今度はレノボがIT系公式スポンサーの1社となって、PC、ネットワーク、サーバーなどを提供する。

 来年2月のトリノ五輪に向かって、オリンピックマークとレノボ、この2つの組み合わせを全世界で露出していく。そのタイミングは生かしたいので、何をどうするかを検討している。

 ただ、旧レノボの製品をそのまま市場に出すことはない。規格がグローバルスタンダードに準拠していない。まずは、グローバル仕様に高めて世界に出していく。日本では低価格のブランドとして新しいレノボのラインアップを用意していくことになるだろう。

─各国の市場に投入するタイミングは2006年2月のトリノオリンピックの時期になるのか。

向井 もっと早くしたい。少なくとも今年中には(投入するかどうかも含め、いつにするかを)決めておく必要がある。ただし、コストが合わないとか、ニーズがないなど、明らかにこれは合わないと判断するものは出せない。今、レノボは49カ国でビジネスをしている。国によって事情は全く違うが、グローバルスタンダードの製品を作っておかないといけないということは認識している。

─ThinkPadなど旧IBM時代のモデルはどうなる。

向井 レノボになってから、ThinkPadではB5タイプ、A4タイプ、タブレットと、毎月のように新製品を発表している。ThinkCenterもそうだ。近々、さらに新しいコンセプトで驚きを提供できるような商品を出していく計画もある。これらは、すべてIBMからの技術や特許を取り込んで作っている。

 そもそも、ThinkPadは、キーボードやディスプレイはどうあるべきかなど、「あるべき姿」を考えたフィロソフィー(哲学)を具現化したもの。そのフィロソフィーを支えるための技術は変わっていくが、ThinkPadのフィロソフィーは崩せないし、変わらない。

 レノボになってからも、その点は全く変わらないし、むしろ進化のスピードをもっと速くしたい。開発、生産も含めたレノボのスケールメリットはその実現に大いに役立つだろう。

─ノートパソコンの低価格化の動きにはどう対抗するか。

向井 価格競争は永遠の戦いだ。対応が必要な最優先項目として認識している。

 製品の価値は分数で表せる。分子は品質や技術、分母は価格だ。我々は品質、クオリティーという点では業界のリーダーシップをとってきたと自負している。今後は適正利益を確保しながらも、価格面でもリーダーのポジションを狙っていく。

─今後、強化していくのはどういった点か。

向井 市場を見る限り、個人市場の中には、コンシューマー市場の外側に、ベリースモールオフィス、ホームオフィスという個人でビジネスをしている人の層がある。ここのIT投資の伸びはすごい。規模が小さいから、売り上げも小さいかというと違う。ITを使って、どんどん売り上げを伸ばしている。だからIT投資も大きいわけだ。我々もここは強化していく。

 ベリースモールオフィスの開拓で重要なのは3点。1つは買いやすいこと。これはWebやテレセールスで実現する。現にレノボのテレセールスは今、毎月10%売り上げを伸ばしている。2つめはすぐ使えること。ThinkPadもThinkCenterも余計なソフトを入れないことで、ビジネスでの使いやすさを保っている。3つめは何か起きたらすぐ問い合わせができること。充実したサポートということだ。サポートに関してはオーストラリアのブリスベンと沖縄にコールセンターを設置し、強化している。

 レノボにとって2008年の北京五輪なども大きな商機になるだろうが、製品群でいくら売れそうなものがあっても、サービスやサポートにちょっとでも不安があったら日本では絶対に発売はしない。私は一度の失敗も起こすつもりはない。ビジネスとサポート体制、どっちを優先するかといわれたら間違いなく後者、サポート体制だ。