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 NECは、既存の無線インフラを活用して交通機関でブロードバンドインターネットを実現する「BBRideシステム」を開発した。従来のように単一のキャリアですべてをカバーするのではなく、複数のインフラを同時に活用して廉価にモバイルブロードバンド環境を構築できるのが特徴だ。
 開発に携わったNECのインターネットシステム研究所ネットワークサービス基盤部長の岡ノ上和広氏、研究統括マネージャーの山崎俊太郎氏に話を聞いた。

■開発の背景は。

岡ノ上 開発に取りかかったのは2003年ごろから。当時は、町中や駅などで高速なインターネットを利用できる環境が整ってきたばかり。しかし、交通機関で移動となるとブロードバンドは無理で、ナローバンドのアクセス環境しかなかった。この状態は現在でも変わらない。何とか解消すれば需要が生まれるのではないかと考えた。

■具体的にはどのようなシステムなのか。

岡ノ上 開発した「BBRide」システムは交通機関向けのブロードバンドシステムだ。大きく分けてホームエージェントと呼ぶサーバーと、車内に設置するモバイルルーター(写真)のセットで構成する。モバイルルーターには、無線LANや2Gや3Gなどの携帯電話など最大で16個の通信モジュールを搭載でき、複数の回線を同時に利用しながら通信する。

■無線LANと携帯電話を同時に使えるのか。

山崎 そうだ。無線LANや2Gや3Gの携帯電話網、さらにPHS網を束ねて通信する多重化技術(Mobile Inverse Mux)が今回の開発の肝といえる。

■どのような点が新しいのか。

山崎 多重化技術とは、無線LANや2G、3GさらにPHSの通信モジュールを1つにまとめて、同時に通信して高速なブロードバンド環境を実現するものだ。ISDNのマルチリンクのように、同じ通信速度の回線を束ねる技術は今までにもあった。しかし、2Gと3G、さらにPHSなどのように通信速度もインフラも全く異なる回線を束ねて通信できる技術は今までになかった。
 そのために、新しいデータフロー制御技術と効率の良いパケット送信技術を開発した。交通機関の場合、移動に伴い回線の状況がすぐに変化する。フロー制御の面では、この状態を見ながら通信回線の種類とデータ転送量を最適化する点が新しい。
 もう一つのパケット効率化技術が必要なのは、複数の回線を使っていると回線ごとにデータの遅延やパケットロスが発生するからだ。これらを最小化するために、データの順序制御や再送制御などの新技術を取り入れている。

■実際の接続したときの通信速度は。

岡ノ上 現在、八王子の事業所と山梨県の甲府を結ぶ長距離バスで実験しているが、常時1Mbpsをほぼ実現できている。中央道は山間部も多く、おそらく単一のキャリアであればこれだけの速度は難しいのではないか。実証実験ではパケットのロスなども確認していくつもりだ。メールデータでは少しのパケットロスも許されないが動画なら多少は構わないというように、実際にどの程度の遅延やデータのロスが現実的なのかを確認していきたい。

■従来の通信インフラと比較してどの点が有利か。

山崎 今まで、移動体通信ではエリアごとに切り分けるという発想はあったが、エリアがすべて隣接していなければ途中で通信が切れる。ところが、このBBRideでは無線LANやFOMA、PHSなど複数のキャリアでカバーするので、エリア外になる心配がほとんどない。つまり多重化技術による帯域幅のメリット以外に、常に切れないという長所も兼ね備えることになる。もちろん、一つのキャリアでカバーできるのであればそれでもよい。しかし、現実にはなかなかそれは難しい。

■現実な価格で提供できるのか。

岡ノ上 まだ実証段階なので確かなことはいえないが、現在のパケット料金なら利用者数次第ではかなり現実的な料金を設定できる。いろいろと調査してきたが、バスといっても法人向けや長距離バスなど多彩なバリエーションがあり、意外にニーズがあるのではないかと考えている。もちろん、列車などへの応用も可能だ。