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 インターネット経由でソフトウエアの機能をサービスとして提供する、Webサービス。その先駆的企業の1つが、Webサービスを2002年から手がける米アマゾンだ。「Amazon.com」のデータを自由に取得できる「Amazon E-Commerce Service」はよく知られているが、それ以外に、同社のストレージにデータを蓄積できる「Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)」や、同社のコンピューターパワーを利用できる「Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)」など、ソフトウエア開発の基盤となるサービスも提供している(当該ページ)。同社がこうしたサービスを公開する意図や、現在の利用状況について、Webサービスエバンジェリストのジェフ・バー氏に聞いた。

■Amazon S3などのWebサービスは、どの程度使われているか。

 具体的な数は言えないが、広く使われ始めていることは確かだ。Amazon S3には既に15億ものオブジェクトが格納されているということからも、その規模が分かるだろう。開発者コミュニティも大規模になっており、20万人もの登録者を集めている。またユーザーの中には、実名は公表できないが、「Fortune 500」に名を連ねるような大企業もいる。

 開発事例をいくつか挙げよう。例えば画像共有サイト「SmugMug」は、Amazon S3を利用して開発されている。100TB以上の写真を扱っているが、非常に信頼性の高いサービスだ。バックアップも実現している。また運用コスト節約の効果もあり、最初の6カ月で50万ドル削減できたという。

 Amazon EC2を利用した開発事例には、米パワーセットの検索エンジンがある。自然言語で検索できるのが特徴で、グーグル対抗との呼び声もある有望な検索エンジンだ。パワーセットはまだ起業したばかりの会社だが、すべての投資を優秀な人材を確保することに回せているという。EC2を利用することで、データセンターの構築や運用が不要になったからだ。

■ストレージやコンピューターパワーを、Webサービスを通じて提供することの利点は何か。

 当社のWebサービスは個人から大企業までさまざまなユーザーに使われているが、共通して挙げられるのは、タイムトゥーマーケット(製品の市場投入にかかる時間)を大幅に短縮できることだ。これまで一から作らなければならなかった部分の開発が不要になるため、迅速な製品化が可能になる。同時に、コストも削減できる。

 またアマゾンのWebサービスなら、拡張性(スケーラビリティ)や応答性なども、アマゾンが保証する。メンテナンスも、アマゾンが面倒を見る。このためWebサービスを利用する開発者は、自分たちにしかできない技術やアイデア、つまりイノベーションを起こす源となる部分の開発に注力できるようになるのだ。

 これは、開発者にとってかなり価値のあることだと思う。新興企業が市場に参入するときの壁が大きく下がることは間違いない。

■開発者から、Webサービスに対する信頼を獲得するために重要なものは何か。

 開発者に安心して使ってもらうには、高い信頼性やパフォーマンスが必要。我々は開発者コミュニティを通じてこうした情報を共有しているし、開発者自身が性能測定試験を実行できるような仕組みも用意している。開発者との議論の場も設けており、良いことも悪いことも含めて意見を寄せてもらうことを大切にしている。

 また我々は、アマゾンのWebサービスが、Amazon.comと同レベルのサービス品質を保証していることを伝えている。Amazon.comは約11年にわたってサービスを提供する中で、高い評価を受けてきた。一般消費者への物品販売に加えて、開発者へのサービスの販売という新たな市場に参入した際に、我々がこれまで培ってきた評判が支えとなったことは幸せだと考えている。

 Webサービスの開発者コミュニティは、我々にとって非常に重要なものだ。開発者から直接フィードバックを受けられるため、それをサービスに反映して品質を高めていける。情報共有もできる。開発者コミュニティがうまくいっているかどうかが、Webサービスの成功を決定づけると言っても過言ではないだろう。

■Webサービスは数年前のブームのあと、一時停滞していたように見える。ここへ来て盛り上がってきたのはなぜか。

 新技術はどんなものでも、登場時には、普遍的な問題解決のツールとして期待されてしまうことが多い。その結果、究極のソリューションとして過剰なプロモーションが行われてしまう。ただそうやって新技術を盛り上げていた人たちは、少しすると違う方向に行ってしまうものだ。舞台裏では、技術を良く理解している人たちが着実に活動しているのだ。

 そして今、Webサービスは本当に価値のあるものとして受け入れられつつあると思う。最盛期はまだ来ておらず、これから伸びていく分野だろう。高速なネットワーク環境が整っていけば、さらに拡大が進むと思う。今後は、ソフトウエアの基本的なアーキテクチャの一部となっていくだろう。

■Webサービスを部品として使える今の時代、ソフトウエア開発者に求められるスキルはどんなものか。

 まずは創造性だ。従来のソフトウエア開発者はスクラッチで一から製品を開発してきたが、今は既にたくさんの技術やサービスが存在している。これらを受け入れながら、これまで誰も思いつけなかったような製品を開発していく能力が求められる。大きな視点でものを考えることができなければならない。

 同時に、組み立て能力も重要だ。言ってみれば、これからのソフトウエア開発者は配管工のような役割を担うことになる。さまざまな部品をパッチワークのようにつなぎ合わせ、それらがうまく機能するようにしなければならないからだ。

 そして忘れてはならないのが、芸術的なスキル。今後はフォント、色、レイアウトなど、デザインの重要性が増していくことは間違いない。ユーザーのニーズを柔軟に受け入れながら、多くの人に求められるものを生み出していく力が大切になるだろう。