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 東京大学は2007年2月15日、過去のテレビ番組の映像を利用した教育支援ソフト「MEET Video Explorer」を公開した。NHKが過去の番組資産を公開する施設「NHKアーカイブス」(埼玉県川口市)のコンテンツを授業に活用し、学生の理解や課題発見を促進する。このソフトをタブレットPCに導入し、学生が利用する様子を模擬授業として報道陣に披露した。2007年10月から、実際の授業での利用を開始するという。

 東京大学 情報学環助教授でMEETフェローの山内祐平氏は、「このような授業は、おそらく世界初」と話す。公共放送がこれほどのアーカイブを持っている国が少ないためだ。日本以外にはフランスにもあるが、フランスでは教育目的には活用していないという。NHKアーカイブスのような映像は、教員が自前で用意するのは非常に難しい。「これを授業に使えるというと、多くの教員が目を輝かせる」(山内氏)。まずは現代史分野で活用するが、こうした映像は「大学の教養課程のほとんどで利用できる」(山内氏)とのことだ。現在「NHKスペシャル 電子立国 日本の自叙伝」など現代史に関連する31番組から、各5分ほどの映像クリップを623種類用意している。

 ソフト名にある「MEET」とは、同大学がマイクロソフトの寄付を受けて設立した「マイクロソフト先進教育環境寄附研究部門」の略。先進的な教育環境の開発や評価に取り組んでいる組織で、MEET Video Explorerはその成果の一つ。Windows VistaのAPI「.NET Framework 3.0」などの技術を活用しながら開発した。ハードウエアには、レノボ・ジャパンから寄付されたタブレットPC「ThinkPad X60 Tablet」を使用。学生が考えを図にまとめていくうえで、ペン入力は有用だという。

「映像を通じて最初の問題意識を持つ」

 模擬授業では、半導体技術の発展をテーマとした講義風景が披露された。東京大学の学生16名が3つのグループに分かれ、与えられたテーマに沿った映像を視聴し、問題意識を図にまとめるという流れになる。各自が映像クリップごとに付けられたキーワードをたどったり、検索を実行したりしながら適切な映像を探し、視聴する。重要だと思った映像はドラッグ・アンド・ドロップで画面左下のメモ領域に貼り付ける。さらに手書きで文字や図を加え、考えを図にまとめていく。授業の最後には各自の図を前方のスクリーンに投影し、全員に対して説明する。

 学生は事前に1時間程度このソフトを使っただけというが、皆スムーズに使いこなしていた。感想として「普段は映像を見ても最初の方を忘れてしまうことがあるが、このソフトだと視聴した映像をブックマークしたり、図の中に挿入できたりするのが良い。映像を使いながら、自分の中で考えを深めていける」との声もあった。タブレットの文字認識精度にも、多くの学生が「かなり雑に書いても正しく認識してくれる」と満足の様子。また「インターネットにもYouTubeのように動画はたくさんあるが、どれが正しい情報なのかはっきりしない。NHKの番組ならば、内容を信頼できる」という。ただ、現状では書いた文字の大きさを変えられない、今のところケーブルでつながっているので自由に持ち運べない、などの不足も聞かれた。現在はアルファ版の段階なので、今後こうした点は改善される見込みだ。

 こうした貴重な映像に手軽に触れられるのは大きな利点である半面、学生が苦労せず安易に理解した気になってしまう、との危険性も指摘されている。この点については「これはあくまでも多様化する授業の一形態に過ぎない」(山内氏)と考えており、フィールドワーク型の授業なども用意しているという。映像ですべての学習内容がカバーできるわけではないが、「映像を通じて、最初の問題意識を持てる」(山内氏)ため、さらに深い学習に進むためのきっかけになるとの見方も示した。

■変更履歴
記事掲載当初、最初の段落で「2008年10月から、実際の授業での利用を開始する」としていましたが、主催者からの申し出により「2007年10月から…」に訂正しました。[2007/02/16 19:11]