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 2007年6月11日(米国時間)、アップルが開発者のために開いている開発者会議、WWDC 2007がスティーブ・ジョブズCEO(最高経営責任者)の基調講演で開幕した。

 セッションが始まって最初に登場したのはポール・オッテリーニCEOだった。スティーブはIntelの協力があってこそ今の成功があると、感謝の印としての特製メダルを贈った(写真1)。

 サンフランシスコのモスコンコンベンションセンターの西ホールにはジョブズCEOの基調講演を聞こうと5000人を超える参加者が詰めかけた。5000人を超える参加者が集まったのはWWDCの歴史が始まって以来、最大だ。開催直前に「 MacBook Pro」の改良版を発表、WWDCではもう新しいハードウエア製品の発表はないのではとの観測が流れていたが、フタを開けてみるとまさにその通りの展開となった(写真2)。

 発表されたのは大きくくくって次の3点。ほとんど完成形に近い次期OS、「Leopard」の全容が明らかになったこと、Windows版の「Safari」が登場したこと、「iPhone」にもサードパーティーの開発者が独自のアプリケーションを組込むことが可能になったことの3点だ。参加した開発者にはすぐにLeopard向けの開発に入れるように最終形に近いプリビュー版がその場で配布された。

使い勝手の良さを追究する10の改良点

 Leopardの改良点は既に2006年のWWDCでかなり明らかになっていたが、今年はさらに細部に至る改良点が公表された。

 公表された10の改良ポイントは以下の通り。

1)新しいデスクトップ
2)新しいFinder
3)各種ファイルの内容を表示するQuick Look機能
4)システム全体に渡る64ビット化
5)アニメーション表示をさらにダイナミックに実現するコアアニメーション
6)OSの標準に組込まれたBoot Camp
7)複数のデスクトップ環境を切り替えて使うSpaces
8)Webブラウザに表示させた情報をワンタッチでDashboardにするWeb clip機能
9)チャット中に手元のファイルを見せあえるiChat Theater、映像に特殊な視覚効果を付け加えるPhoto Booth
10)バックアップを一般ユーザーにも簡単に使ってもらえるようにするTime Machine

 このなかで、「新しいデスクトップ」、「新しいFinder」、「各種ファイルのQuick Look機能」、「iChat Theater」などは新鮮な表示機能や革新的な操作性が組込まれ、会場から喝采を浴びた。

 ドックには大量のファイルを探しやすくするためのStacks機能などが追加され、Webからダウンロードしたファイルなどワンタッチでアクセスできるようになる(写真3)。

 「Finder」には従来のアイコン表示、リスト表示、カラム表示に加え、「iTunes」でおなじみのカバーフロー表示が加わった(写真4)。これにより、たくさんの書類をパラパラめくって目的の文書を探すのが容易になった。また、同時に使える「Quick Look」でPDF、Excel、Wordファイルなどを開かずに中身を確認することができるようになったから、たくさんのファイルの中から素早く目的のファイルを探し出せるようになった。

 「iChat Theater」はビデオチャットの最中に手元にある資料を表示して相手に見せることができる機能で、たとえばExcelファイルの売上推移表を見せあいながら交渉をするなどという使い方ができるようになった。また、背景を任意の絵に差し替えるビデオバックドロップ機能や、表示の映像に特殊な視覚効果を加えるPhoto Booth機能が組込まれ、多彩なコミュニケーションを楽しめるようになった。

 デモンストレーションで登場したワールドワイドプロダクトマーケティング担当のフィル・シラー上級副社長はマイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOの顔を借用し、口元だけ差し替えるというおふざけを披露、大爆笑を誘っていた(写真5)。

Windows版のSafari登場

 「最も優れたWebブラウザー」をもっとたくさんの人に使ってもらおうと、Windows版のSafariも登場することになった。現在既に米国サイトではパブリックベータがダウンロードできるようになっている(写真6)。

 現在、Webをブラウズするのに、Safariは4.9%のシェアしかないという。このシェアの低さから、Safariでは閲覧できないWebページも多い。さらにSafariはMacでしか動作しないため、サービス提供者に対してSafari対応を申し出ても、Macサポート自体が難しいために対応されないという事態を招いていた。

 Windows版を用意し、Windowsユーザーにもユーザーが増えてくれば、サービス提供者に対して対応を促すこともできるようになるかも知れないという読みのようだ。Windowsユーザーにとっては既にIEがあり、満足して使っているだけにWindows版のSafariが登場したところで、Safariに乗り換えてくれる保証はない。しかし、アップルは、その圧倒的な性能でかなりのユーザーを引き込めると考えているようだ。スティーブ・ジョブズ氏はステージで業界標準の「iBench」を使ったWebページのレンダリングテストを披露、IE 7の最大2倍、「Firefox 2」の最大1.6倍の速さとなりWindows用のWebブラウザーとしても最速となることを強調した。Java Scriptなどの動作についても同様で、AJAXアプリなどを使う場合でもSafariの優位性が歓迎されるだろうという。

iPhoneはAJAXで独自アプリを作成可能

 「iPhoneはあと18日後の6月29日に発売開始、でも開発者にはどう位置付けたらいいんだろう」と切り出したスティーブ・ジョブズCEOはiPhone上でもリッチなアプリケーションを提供するAJAXの利用が可能になったことを発表した。

 iPhoneにはMac OS Xの軽量版が入っており、PC版と同様のアプリケーションを走らせることもできる。しかし、セキュリティ上の理由、たとえばウイルスが作られてしまうなどの危険を避けるために、サードパーティが開発できるのはAJAXのみとした。今回、iPhoneの中で動いているSafariはデスクトップPCのエンジンと全く同等のものが動いていることを公表した。これにより、デスクトップ機で使われているAJAXと同じものがiPhoneの上でも利用可能になる。力量のあるサードパーティにかかれば、AJAXで強力なアプリケーションとサービスを開発することもできるため、iPhoneマーケットで開発者の活躍の場が大きく広がることになる。

 今回のWWDCではアッと驚かせる新製品などは登場しなかったが、さまざまな場面で使いやすさへのチャレンジが確実に進化していることを見せつけ、情報機器分野でソフトウエアに強みを持つアップルの存在感をさらに高める基調講演になったと言えるだろう。