正直、米グーグルの本社でインタビューしたときに飛び出した「Web2.0について社内で議論することはない」という言葉には驚きました(関連記事)。Web2.0とは、最近注目を集めている新しい技術を使ったWebサービスをひとまとめにした概念です。ネット業界では最も話題になっているキーワードで、グーグルはWeb2.0の最先端をいく企業と見られています。それなのに、こんな発言が飛び出すとは。どうやらグーグルの中と外でWeb2.0に対する感覚には温度差があるようです。
Web2.0という概念は、技術系出版社オライリーのティム・オライリー社長が提唱しました。同氏の論文によると、従来のWebサービスであるWeb1.0と比べて、Web2.0には大きな違いがあります。Web1.0では、サービス提供業者が一方的に情報を配信するだけでした。それが、Web2.0ではユーザーが参加して、サービスの内容を作成し、価値を高めることができるというのです。
Web2.0の代表的な例が、グーグルが提供している地図サービスです。核となるのは「Google Maps API」という仕組みです。APIとは、Webページ上にほかのプログラムの機能を取り込めるようにする仕組みのこと。このAPIを使うと、自分のWebサイト上でGoogleマップの機能を使ったオリジナル地図を作成できるのです。例えば、自分の住んでいる地域の観光案内、自分の好きなレストランガイドなどを作ることもできます(ただしプログラミングの知識は必要です)。Googleローカルと同じ技術を利用できるので、マウス操作で地図を移動したり、拡大や縮小も自在です。
Googleマップの機能を開放することで、さまざまな人が自分のオリジナル地図を作成できるため、ネット上では地図の新しい用途が次々と生まれてきています。必ずしも大衆向けではなくとも、さまざまな用途にサービスが広がっていく現象を「ロングテール」と呼んでいます。
グーグルは「Web2.0のサービスを作ろう」という発想ではなく、「革新的で便利なサービスをどう実現していくか」を考えているといいます。そうするうちに、後からWeb2.0という言葉が付いてきたのだそうです。グーグルには、世界各国から優秀なコンピューターのエンジニアが続々と集まっていると聞きます。自らは意識せずしてWeb2.0というムーブメントを作り出してしまう技術とアイデアには驚かされました。
日本でも、Web2.0に沿った新しいサービスを開発しようとサービス提供業者が努力をしています。しかし、革新性という点ではグーグルが一歩先を進んでいるように感じます。自動車、オーディオ、家電など、産業の歴史を見ると、日本の技術者は既存の製品をより便利なものに改良・改善してきました。Webサービスでもさまざまな技術をうまく活用し、よりブラッシュアップした日本発のサービスが登場することを期待しています。