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 「おー。透けた透けた!」「こっちは透けない。くそぉ~」。これだけ聞くといったい何をしているんだと邪推したくなると思われますが、れっきとした仕事の会話です。前回投稿した田村とふたりで、Windows Vistaを複数台のマシンにインストールしたときのこと。Vistaのユーザーインタフェースの特徴の一つが「ウインドウの枠が透けること」ですが、グラフィックスボードの仕様によっては透けないことがあったのです。その結果、編集部には「透ける子」「透けない子」という2タイプのマシンが存在することになりました。

 人気のあるのはやっぱり「透ける子」。別にウインドウの枠が透けたからといって機能には何の影響もないのですが、なんだか嬉しい。ウインドウを閉じたり、最小化するときの動きにもちょっとした工夫が凝らされています。たとえば、後ろに「ぱたっ」と倒れるような動きをすること。これはちょっとかわいい。仕事を忘れて、意味もなくウインドウの最大化と最小化を繰り返してしまう自分がいます。

 で、そんなときに思い出したのが「ユーザーエクスペリエンス」です。マイクロソフトは「Windows XP」の頃からこの言葉をアピールしているのですが、今回のVistaではさらにそれを向上させるといいます。開発者会議などでVistaのプレゼンテーションが披露されるときには、必ずと言っていいほどこの言葉が出てきます。

 ユーザーエクスペリエンスは元々、米国の認知心理学者であるドナルド・A・ノーマン氏が提唱し始めました。その言葉の意味するものは深いのですが、ざっくりと言えば、「製品を使っている最中だけでなく買う前や使い終わった後も含めて、ユーザーがその製品を通じて体験したことすべて」ということです。使いやすさ、使い勝手はもちろんのこと、デザインがかっこよくて持っているだけでうれしいとか、動きが軽くて気持ちいいとか、ユーザーが抱いたいろいろな感情も含むのです。というわけで、ウインドウが透けて嬉しい、というのもユーザーエクスペリエンスの一つだと言っていいでしょう。

 ただ、「ユーザーエクスペリエンスの向上」と言葉で言うのは簡単ですが、実際は非常に難しい。私は単純な人間なので「透ける子」を使うと単純に嬉しいのですが、必ずしもそんな人ばかりではないでしょう。当編集部でも「ふーん」で終わる人もいれば「こんなことにCPUパワーを使わなくても…」と否定的な人も。当たり前のことですが、同じものを見ても感じ方は人によって違うんだなあ、と改めて感じさせられました。

 今やパソコンは、子どもからお年寄りまで多くの人が使う道具になっています。だったらなおさら、万人が気に入るユーザーインタフェースの実現は至難の業でしょう。現在もマイクロソフトは、製品の出荷に向けてユーザビリティテストなどを繰り返していると聞きます。その成果がどの程度製品に反映され、我々のユーザーエクスペリエンスがどのように向上するか、楽しみに見守りたいと思います。