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 基本的にパソコンでは大きな影響を受けないため、PSEマークにまつわる騒動にはヤジ馬を決め込んで、高見の見物と洒落込もうと思ってました。なもんで、楽器やオーディオ製品の愛好者からの反発や、それに対する緊急措置など、「影響を受ける人たちは大変そうだなあ」とノンビリ構えていました(と書いたら当事者の皆さんには怒られちゃうかな?)。でも、一度起こった騒動はなかなか沈静化しない様子。そこで、PSEマークについて調べてみた身として、私が感じたところをまとめてみました。

 PSEマークと電気用品安全法については、ここで詳しくは書きません。こんなふうに検索サイトで調べてみてくださいな。ま、ものすごく簡潔に説明すると、電気用品安全法は「電気製品は電源周りとかに事故が起こりやすいので、製造するときにちゃんと安全対策をしなさいね」という法律で、PSEマークは「そういう安全対策をした製品にはちゃんと表示をしましょうね」という電気用品安全法でいうところの「表示」ということになります。

 で、世の中がとても騒がしいのは、この4月にPSEマークが付いていない電気製品は売ってはいけないようになってしまうから。3月31日まで売ったり、買ったりできたものが、4月1日以降はもうビジネスとして売り買いできなくなってしまう。この「しちゃいけません!」というのはとても強い制限です。だから、それで困る人も多いし、反発も強くなる。

 特に困っている人たちには、中古品の買い取り/販売を手がけるリサイクル事業者が含まれています。この人たちに話を聞くと、電気用品安全法の規制を受けると知ったのは早くても2005年の終わりから、多くは2006年に入ってから。実質2カ月間で準備をしろと言われてもそりゃキツい。それは、楽器やオーディオ製品のビンテージものの入手に影響を受けるマニアの皆さんにとっても同じこと。

 ホントのところを言うと、電気用品安全法は1999年に制定され(正確に言えば電気用品取締法の改正)、2001年に施行された法律。“2006年4月”が大きなターニングポイントになっているのは、電気用品安全法体制すなわち「PSEマークなしの製品は売ってはいけません」体制に移行するために設けられた猶予期間が終わるから。こうした事情もあるため、電気用品安全法の担当省庁である経済産業省にしてみれば「5年も準備期間があるじゃないか」ということだってできる。

 でも、テレビニュースで経済産業相が「5年も猶予期間を設けたのに(何を今さら…)」みたいなことを言っているのを見かけたときは、ちょっと違和感が…。なぜなら基本的には経済産業省が必要なことを必要な人に知らせる努力が足りなかったから今の騒動につながってるわけで…。PSEマークの表示は電気製品の製造業者(正確には輸入業者も含む)を対象とした義務なので、販売業者はもともと対象じゃない。少なくとも対象になっていると思っていた人たちは一握り。思いっきり影響を受けるのに、そのことをずっと知らない人たちがいて、そうした人たちに影響があることを周知させるのもあまりうまくいってはいなかった。その点は経済産業省でも現場レベルでは認めてるのに、大臣がそんな風に開き直っちゃうんじゃ…。

 そんなこんなを考え合わせると、個人的にはPSEマークと電気用品安全法は、スジが悪いんじゃないかと思っています。趣旨そのものには何も文句はないんですが。なのに、もうタイムリミットは目前に迫っていて、それに合わせて準備を済ませてしまった人もいる以上、引き返すのも難しい。今はまさにのっ引きならないタイミングにあるわけです。

 今は、あっという間にネット上で議論が始まって、またたく間にまとめサイトが出来上がり、誰でも整理された論点を基に、自分なりの指針を持てる時代です。もし、電気用品安全法の制定が7年前でなく今であれば、こうした“のっ引きならない事態”は避けられたのかなあという気もします。7年前は幅広い議論が難しく、実行するときに初めて問題点が噴出する。PSEマークにまつわる騒動には、こうしたタイミングの悪さをどうしても感じてしまうのです。