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 アセロス・コミュニケーションズが、次世代の無線LAN規格「IEEE802.11n」について勉強会を開くということを聞きつけ、本日参加してきた。同社は、無線LANのチップを作ってパソコンメーカーなどに卸すチップベンダーの1社である。

 802.11nは「実効速度で100Mbps以上が出る新しい無線LAN技術」と紹介されることが多い。勉強会では、その根拠を非常に分かりやすく説明してくれた。

 現在のIEEE802.11g/aは、理論上で最大54Mbpsの技術である。実環境では様々な影響を受けるため、実効速度は条件が良くて20M~25Mbps程度といったところ。BSデジタル放送のハイビジョン番組のビットレートは最大28.3Mbps。ハイビジョン番組の伝送は、802.11g/aでは力不足だといわれるゆえんはここにある。

 802.11nでは、まず信号を乗せる波の数を増やし、理論上の速度を最大54Mbpsから65Mbpsに引き上げる。さらに、MIMOと呼ばれる複数本のアンテナを送信側と受信側で用いる技術を活用。2本のアンテナで同時に信号をやりとりする。2倍の信号を送れるわけだから、65Mbps×2で最大130Mbps。条件の良い実環境では、落ち込みが7~8割程度と想定し、91M(130Mの70%)~104Mbps(130Mの80%)。これが「実効100Mbps」の根拠なのだそうだ。規格上は、アンテナを3~4本使ったさらに高速な通信もサポートする。

 見逃せないのが、802.11nにはオプションとして定義されている技術があること。理論上は144.4Mbpsとさらに向上する。使う周波数の幅を2倍にするオプションもある。例えるなら、道路が2車線になるわけで、2倍の自動車を走らせられる。このオプションを使った最大通信速度は300Mbps。実効速度は、150M(300Mの50%)~180Mbps(300Mの60%)という。

 実は2倍の周波数幅を使って無線LANで通信することは、今のところ日本では認められていない。折しも今日(2006年3月27日)、総務省は無線LANで使える周波数幅を2倍にできるかどうかの審議を開始すると発表し、9月には答申を出すとのこと。総務省が答申に沿って関連する規定を整備すれば、「802.11nは実効100M」という今の常識は覆り、「802.11nは実効180Mbps」とさらに魅力的な規格となる。