3月22日、米マイクロソフトが発表したWindows Vistaでパソコン業界は騒然となりました。以前から、発売が延びるかもしれないという憶測はあったものの「なにがなんでも2006年内に発売する」と確約していたマイクロソフトを信じたかったのがメーカーの本音ではないでしょうか。
Vista延期の影響で、間もなく登場するパソコン夏商戦向けモデル、年末商戦向けの秋冬モデルの売れ行きが懸念されています。各メーカーは夏モデルでVistaが動くことを示す「Vista Capable」パソコンを、秋冬モデルでは「Vista」対応パソコンを投入するという計画を立てていました。ところが、Vistaの延期でその予定は大きく狂ってしまったのです。
このままでは、メーカーは夏モデル、秋冬モデルと連続で「Capable」を出すことになります。これでは買い控えを防ぎつつ、Vistaへスムーズに移行するという本来の目的が果たせないことになります。しかも、Capableは512MBのメモリーを搭載しているか程度の制限しかなく、本当にVistaが動くのかという不安をユーザーに与える可能性もあります。
次期オフィスソフト「2007 Microsoft Office System」までもが、2007年1月に延期となりました。新OS、新オフィスを搭載するパソコンが年明けに控えているとなれば、年末までのパソコン販売に影響を与えることは必至です。
今年の夏はサッカーのワールドカップが開催されるため、家電に需要が流れるのではという懸念もあります。もし、夏商戦で家電の売れ行きが伸びれば「冬商戦に入っても、パソコン購入に使えるお客さんの予算が回らなくなるのでは」(販売店幹部)という極端な見方もあります。
もちろん、メーカーや販売店にとって買い控えは避けたい事態。関係者に話を聞くと「Vista延期の影響はない」という強気の意見も聞こえてきます。その理由は購買者のVistaに対する認知が現状ではまだ低いこと。販売店では「購買者からVistaについての問い合わせを受けることは少ない」という声もあります。無理に新OSに合わせて買うよりも、必要なときに購入した方がいいのではという意識も広まっているといいます。使い慣れたWindows XPを使うという選択肢もあるというのです。
ここ1年ほど、地デジ対応などAV機能を備えた製品や、価格が手ごろなA4ファイルサイズノートが牽引して、個人向けパソコンの販売は好調でした。今後の新モデルでも、Vista延期をものともしないほどの魅力的な製品が登場することを期待しています。