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 「たとえ一文無しになってもやる」。東京放送(TBS)に対して提案した経営統合について、決意を表明した楽天の三木谷浩史社長。同社は1110億円を投じて、10月25日現在でTBSの発行済み株式の19.09%を取得した。今まで手がけたM&A(企業の合併・買収)の中で最大の投資額だ。三木谷社長はなぜ今、大きな賭けに出たのか。

 「世界に通用するメディアグループを形成したい」と語る三木谷社長の目先の課題は「打倒ヤフー」だ。10月13日に行った会見で、カテゴリー別のサイトランキングを示し、多くの分野で楽天グループが1位であることを強調した。ただし、ポータルサイトではヤフーに続く2位にとどまる。質疑応答では、TBSとの経営統合を「ヤフーを越えるための有力な選択肢」(三木谷社長)と言及し、ヤフーを追撃する姿勢を明らかにした。

インフォシーク買収から5年

 楽天はヤフーをライバルとして強く意識してきた。2000年12月に90億円でポータルサイト運営のインフォシークを買収したのは、その表れだ。2002年12月には、やはり同業のライコスを子会社化し、2003年9月に両社を合併させた。

 ポータルからショッピングサイトの楽天市場へユーザーを誘導することがインフォシーク買収の目的と、当時は説明していたが、ネット市場はこの5年で大きく変化した。
最たるものがネット広告市場の立ち上がりだ。

 ヤフーが10月21日に発表した2005年第2四半期(7~9月)の業績では、広告売上が前年同期比86.9%増を記録した。消費財などの大手企業がインターネット広告に予算を移し始めたことが原因だ。広告ビジネスは利益率が高い。ヤフーの事業の中で、広告売上の割合が大きいリスティング事業部の営業利益率は7割を超える(2005年度上半期4~9月)。

 当然、楽天もこの果実を得たいところだが、最大手のヤフーとの差はなかなか埋まらない。ネット視聴率を調査するネットレイティングスによると、楽天グループ全体ではユーザーのアクセス数はヤフーに次ぐ2位だが、ポータルに限定するとインフォシークはヤフー、MSNに続く3位にとどまる。当然、広告収入もヤフーには及ばない。

【家庭からのアクセスが多いサイト上位5社(運営主体別)】

 三木谷社長は「成長性はインターネットが勝るが、社会的影響力ではネットはテレビのような既存メディアに劣る」と、TBS統合によりテレビ進出を目指す理由を説明した。見方を変えれば、もはやネット業界内の再編だけでは、一足飛びのヤフー越えは難しいと判断したわけだ。

 ただし、その代償は大きい。既に楽天は今年に入ってクレジットカード大手の国内信販(現楽天KC)の子会社化、アフィリエイト大手の米リンクシェアの買収に、合計625億円をつぎ込んでいる。そこにTBS株取得に使った資金を足すと1700億円を超す。しかも、投資資金は大半が借り入れによる調達だ。

楽天そのものの未来がかかる

 楽天の2004年12月期の連結売上高455億円、経常利益155億円からすると、買収コストは過大に見える。もちろん、同社は既存事業の伸びが二ケタ台と大きく、新規に傘下におさめた企業の業績が加わることから、適正な借入金水準を過去の実績からはかることは適切ではない。しかし、TBSを傘下におさめられなかった場合に楽天が被る影響は、今までの買収案件の比ではないだろう。TBSとの統合は、楽天そのものの未来を賭けた大勝負ともいえる。

【楽天が行った主な大型投資】