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 コードネームOrigamiことマイクロソフトの「Ultra Mobile PC(UMPC)」。鳴り物入りで発表された割にはよく分からない、ヤツの正体は一体……? モバイルに土地勘ゼロの「シラナイ記者」が、マイクロソフト・ウォッチャーの「エムエス記者」、モバイル大好き「モバズキ記者」に7つの疑問をぶつけます。

【Q1】そもそも、Origamiって軽いの?

シラナイ:良く知らないけど、一般のモバイルノートパソコンに比べて、劇的に軽いのかなぁ?

エムエス:いや、重い。少なくとも発表済みのモデルはね、マイクロソフトが言うには、あれは「まだ第一段階」だから。1kg弱……860gだね。しかも電池が2時間くらいしかもたないっていうんだよ! Let's noteの一番軽いモデルが999gで電池駆動9時間だから、Origamiがすごく優秀かというと全然そんなことはない。

シラナイ:なんでそれで“ウルトラモバイル”を名乗っているの?

エムエス:アメリカ人の感覚からすると“ウルトラモバイル”なんだよ! たぶん。

シラナイ:な、なるほど。記者発表ではそれに関するツッコミは出なかったのかな?「これは“ウルトラ”で“モバイル”ではないんじゃないか?」っていう。

エムエス:「こんなの“ウルトラモバイル”じゃない!」というハッキリした指摘はなかった気がするな~。向こうがそう言っている以上はそれを受け入れるしかないという。

【Q2】教育?それとも…? どんなシーンで役に立つのか?

エムエス:これを一般的なユーザーに使ってもらうのは難しいよね。しかも、1kg弱っていう重さのものって、例えば大人がLet's noteの一番小さいモデルを持ち歩いてもある程度は重いと感じるじゃない? それを子どもに、小学校のランドセルに入れて持ち歩かせるっていうのはどう考えてもちょっとねえ……。

シラナイ:小学校って、何それ?

エムエス:立命館小学校がウルトラモバイルを導入して、例えば漢字の書き取りみたいな学習に使うっていう話があるんだけど、子どもが約1kgのものを持ち歩くのは大変だよね。

シラナイ:それって何年生くらいから使うんだろう?

モバズキ:立命館小学校は今年の春から開校で、そのうち3年生の1クラスで実験的に使うんですよ。

エムエス:でも、このウルトラモバイル使ったらITリテラシーなんか、つかないよ! キーボードないしさ。

シラナイ:でもひょっとしたら、彼ら彼女らが大人になる20年後にはそういうのがデフォルトに……なる?(自信なさげに)

エムエス:(にべもなく)その頃にはそもそもWindowsがスタンダードじゃないかもしれないよ。

モバズキ:まあ教育に使いましょうっていう、目の付け所は悪くないかな~っていう気もするんですけどね~。

シラナイ:それはどういう意味で?

モバズキ:例えばわりと先進的な学校だと、パワーポイントみたいなソフトを生徒に使わせて、「さあ絵日記を書いてみましょう!」とか、そういう授業をやったりしているところがあるんですよ。だからウルトラモバイルみたいなものを見て、新しく何か画期的な授業方法を思いつく先生もいるかもしれない。それから、UMPCの発表会に登壇した陰山英男さんという教育の分野で非常に有名な先生いわく、教育現場では教師の負担っていうのがすごく大きいんだと。例えば漢字テストの添削をして、集計をしてっていうときに、一個ずつ手動でやったら大変ですよね。でもウルトラモバイルだったらパソコンなんだから、一括で採点して集計して、しかもそれをデータとしてどんどん蓄積して……っていうのが簡単にできる。つまりウルトラモバイルを使って先生の負荷を軽減できるんではないか、と。

 あと、教材の改訂が簡単になるっていうのがあります。普通は教科書っていうのは3~4年に1回改訂しているんですが、それをオンラインでデータを配って更新しちゃう形にすれば、もっと頻繁に、臨機応変にできる。

【Q3】そもそもマイクロソフトは何でOrigamiを作ったの?

シラナイ:「Windows CE」と呼ばれているものは、軽量・小型な機器を作るためのOSだったわけだよね。でも、ウルトラモバイルというのが出て、それとはステージがちょっと変わったわけだよね。で、その変わった先にあるものが何なのかっていうのがよく分からない。少なくとも、今のウルトラモバイルのお弁当箱みたいな形は最終形態ではないと思うんだけれど……それはどうなんだろうね?

モバズキ:そもそもの話からすると、「マイクロソフトは何でCEを作っていたか?」っていうと、「作らざるをえなかった」という背景があると思うんです。小さくて軽い機器を作ろうとすると、どうしてもフルフルのWindowsを動かすのは難しいので、サブセットを作らざるを得なかったと。で、それがウルトラモバイルの登場によって……まあ、あのお弁当箱が完成品かどうかはともかくとしてですよ、一応スルスペックのWindows XPが動くようにはなったということではないでしょうか。なので、現在ではサブセットを載せる意味はなくなってきている。これは記者発表でも言ってましたね。

シラナイ:ごめん、そもそもの話から聞くと、ホントに動くの?フルスペックのXPが。

エムエス:いやいやいや動くんだってば。Windows XP Tablet PC Editionが載ってるんだよ。この、「今までCEを載せざるを得なかったところに、XPを載せることができる」っていうマイクロソフトの戦略は分かりやすいよね。Windowsが使える範囲を広げたい、Windowsアプリを業務用途で動かしたいっていう。ただ、日本市場においては、現在発表しているようなウルトラモバイルのハードウエア仕様では絶対に売れない、という現状がある。だから米国市場ではもうちょっと一般コンシューマー向けを狙ってプロモーションしてるけど、日本ではわりと特定用途向けに振っている。教育とか、流通とか金融とか。日本のマイクロソフトはある意味、冷静に市場を見てるよね。大げさにぶちあげるのではなく、地道に教育市場なんかに入れたい、という。

【Q4】で、安いんだっけ?

シラナイ:再三、教育市場っていう話が出てきてるわけなんだけど、その市場って普通のパソコンじゃダメなのかな……? すごく安いんだっけ、ウルトラモバイルって?

エムエス:まあ、安いといえば安い……?(首を傾げる)

モバズキ:9万9800円です。

エムエス:う~ん、デルなんかでは6万円台のノートパソコンがあるけどね。

シラナイ:それを考えると安いかどうか微妙だよね。でもまあ、こうやって(と机に向かって落書きのマネ)ペンが使えるのがいいのかね? 教育的には。

モバズキ:それはあるとは思いますが、確かにウルトラモバイルのコンセプト自体はともかく、現在発表されている製品だけとって見ると、あえて普通のパソコンの代わりに買う理由は……

エムエス:あんまりないかもね。

モバズキ:あんまりないですね。

【Q5】どこが新しいコンセプトなのか?

シラナイ:Windows XP Tablet PC Edition自体は前からあって、いくつかのパソコンメーカーがタブレットPCを日本市場向けに出してるよね。じゃあ、マイクロソフトは何でいまのタイミングでウルトラモバイルを発表したんだろう?

エムエス:マイクロソフトがタブレットPCと同じくらいの時期に、Mira(ミラ)っていう家庭内端末みたいなコンセプトモデルを発表したことがあったんだよね。それを実現するためのハードウエアって今までは無かったんだけど、2004年頃からインテルとかがウルトラモバイルのコンセプトを出してきた。で、マイクロソフトとしてもMiraの発展型としてウルトラモバイルを作ったってこともあるんじゃないかな。

シラナイ:ウルトラモバイルってさ、パソコンメーカーが出してるタブレットPCとは違うものって考えないといけないんだよね。同じ?

エムエス:違うものだよ。タブレットPCにはキーボードあるし。

シラナイ:そっか。ぱたんってたたんで、ペン入力してても、タブレットPCにはキーボードが付いていると。ウルトラモバイルはキーボードがないっていう、それだけ? でもそれじゃあ、新しいことはあんまりないんだね。

エムエス:うん、ない。でもさっき言ったみたいにOSの市場を広げるって言う意味で目的はハッキリしているので、マイクロソフトがこの製品をやめることはないと思う。

シラナイ:ふ~ん。マイクロソフトにとっての意味は何となく分かった気がするけど、それはエンドユーザーにとってはどこまで意味があるのかな? エンドユーザーの支持を受けないとやっぱり売れないわけじゃない?

モバズキ:アメリカ市場と日本市場は明確に分けて考えた方がいいでしょうね。アメリカではひょっとしたらウケるかも知れない。でも日本の市場ではダメっぽい。日本のマイクロソフトは、たぶん、それを分かってるんです。でも今年のCeBITで大々的に出しちゃったし、本社も「やる!」っていうので日本もやらざるを得ないっていう印象を受けましたね。

エムエス:そうだね。アメリカに行って雑誌とか読んでると、パソコンよりちっちゃくて、家庭内で使うような端末が載ってるんだよね。インターネットにアクセスするために使う端末で、サムスンとかLGとかが出している。それって700~800ドルくらいで売ってるわけ。だからそういう市場は、きっとアメリカにはあるよ。

シラナイ:ソニーが出してたロケーションフリーテレビの「エアボード」みたいなやつ?

エムエス:そうそう。でも、日本にはその市場はなくって、みんなノートパソコンにいっちゃうんだよね。

シラナイ:日本のノートパソコンちっちゃいしね。

【Q6】Windows CEはなくなるの?

シラナイ:ウルトラモバイルが出てきたことで、Windows CEはだんだんなくなるっていう認識でいいんですかね? 今さらですけど。

エムエス:まあなくなりはしないでしょう。

モバズキ:携帯電話とかに載るでしょうからね。Windows Mobileとか、カーナビ向けのWindows AutomotiveなんかはWindows CEをベースにしています。

【Q7】今後はどんな製品に発展するのか?

モバズキ:今、ウルトラモバイルを製品化しているのはPBJだけしかないけど、これからどんなメーカーが出してくるかで変わりますよね。一応サムスンなんか名前が挙がっているので、この辺がすごいことやってくれたら何かが起こるかもしれない。でも日本のメーカーはなかなか動きづらいんではないでしょうか。今日本にあるパソコンの台数が……(JEITAのデータを見つつ)1273万8000台くらいで、そのうちモバイルノートの割合は約13.5%で172万3000台。それを何社かの大手パソコンメーカーで分け合っているわけで、各社とも採算はけっこうキツイはずです。それよりも狭いウルトラモバイルのマーケットに何社も参入するっていうことがありますかね? 何かハードメーカーにとっておいしい話があればいいんですけど。

シラナイ:逆にモバイルパソコンで確実に利益を稼ぐには、ある程度は高い単価で、技術力とかブランド力とかを売りにしてビジネス向けのニッチな市場を取りにいかないとダメってことなんだよね。

エムエス:どんな製品だったらコンシューマーのエンドユーザーにウケるのかな? 俺、シャープの「W-ZERO3」にウルトラモバイルが載ってくるんだったら、それは買ってもいいな。

シラナイ:それは載せられないでしょう。スペック的に。

エムエス:でも、今だとザウルスにLinuxが載ってるわけじゃない? あと1年くらい経ったらそういう機器にXPが載ってきてもおかしくないと思うけどなあ。少なくともWindows 98は余裕で動くスペックにはなっているわけだし。