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 膨大な量のデータを扱う情報化は、その管理・検索等についても多くの作業量を発生させる。また、インターネットの普及によって利便性が高まる一方で、プライバシー情報やセキュリティの面では不安もまた増大する。ITの進展には、こうした課題を克服する技術開発を進めることで、より信頼性の高い情報化が期待されているのである。

 近い将来、機密保護と認証を実現するセキュリティ技術により、印鑑や署名なしで契約書等の各種文書がネットワークを介してオンラインで作成できるサービスなどが確実に普及するだろう。

 また、オンラインショッピングでは、バーチャル・リアリティを利用した電子的な旅行パンフレットや製品カタログなどが台頭するはずである。実写イメージを3D画像に合成・変換して商品紹介画像を作成する技術が進めば、CGの特定部分を指せば、詳しい情報を提示するエージェント機能があり、マウス操作で商品CGモデルを自由に回転させたり、可動部分を動かすことも可能になる。二次元から三次元のカタログ化が実現すれば、より臨場感を持ってショッピングを楽しむことができるのだ。

 さらに、セキュリティ技術の一環として、電子決済口座の支払状況が過去履歴と比較して異常値(連続で平均より高い買い物を行なう)を示した場合、それを知らせるサービスなども普及するだろう。パーソナルな購買記録と消費動向をデータベース化し、電子決済による使い過ぎの防止が容易に行なえるようになるのだ。

 ITは、こうした新しい消費シーンをもたらすだけでなく、次にものづくりそのものを大きく変革させていく可能性がある。衣類、雑貨、家具など、家庭のパソコンでデザインしたものが、メーカーのホストコンピュータを経由してオーダーメイドで生産されるシステムが台頭してくるのだ。

 すなわち、大量生産、大量消費のプロダクツから、One To Oneなカスタマイズプロダクツへの変革が起こるということである。こうしたシステムは、自分だけのオリジナル商品がオーダーでき、入手できるという生活者のニーズを満たすだけでなく、製造業サイドにも大きなメリットを与える。最小ロットでの原料調達やエネルギー低減が可能になるからだ。

人間生活技術戦略イメージ図「工場とものづくり技術」 (資料提供:独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)

 そして、こうしたシステムは次に、各家庭のニーズに応じた食材や調理済食品のデリバリーサービスをインターネットを介して利用する生活シーンを開拓する。家庭構成、趣向に合わせたレシピや食材のオンライン注文、配送が可能になり、家庭内のキッチンや冷蔵庫と事業者とをコンピュータで直結させ、必需品についての在庫管理と自動補充を行なうシステムへと発展する。

 デジタル家電化が進み、センサーによる在庫管理システムとインターネット発注が結びつくのである。さらに、音声入力によるインターネット通信販売を利用する家庭が増えれば、音声認識機能を利用して個人の声紋を記憶し、登録者本人以外が使用するとつながらない、電話の不正使用を防ぐサービスなども形になるはずである。

 デジタルネットワークを通じてのホームショッピング、いわゆるバーチャルモールによる買い物が普及すれば、都市内の交通量の削減につながり、渋滞の緩和やエネルギー使用量の低減にも貢献していくのである。

 こうした新しい生産や流通を形にするITの進展は、工場そのものを確実に変貌させる。まず、ITによって制御された産業用ロボットが普及し、必要に応じた材料の選定から部品の製造、組み立て、検査、完成品搬送までの一連の作業を、全自動で行うようになる。

 しなやかな多関節を持ち、従来のような硬くて重いものだけでなく、軟らかいものや壊れやすいものも扱うことができるロボットは、これまでのような特定部品の溶接といった単機能ではなく、プログラミングに応じて複数の加工、組み立て作業、多様な製品製造を自在にこなすことができるのだ。

 こうした産業用ロボットの高度化と全自動デジタル生産ラインによって、色やデザインの異なる製品、ユーザーのニーズに応じて異なるオーダーメイド製品などを、フレキシブルに連続してつくることが可能になる。カスタマイズド生産の普及である。そこでは、生活者や顧客のオーダー、原料や部材の調達と搬送、生産、流通の情報は、すべてICチップに埋め込まれ、インターネットや専用の読み取り機で引き出すことが可能になる。通信機能を持っているICチップは、生産、出荷管理を自動化すると同時に、生活者に対する安心・安全なトレーサビリティ情報の提供にも役立つことは言うまでもない。

 この時期には、微小な部品の製造と組み立てを行う、デスクトップサイズの工場も台頭してくるだろう。それは、必要とされるものを必要とされる場所でつくる、出前製造なども可能にするだろう。

 また、複数のラインで行われる原料や部品の調達から製品の製造、組み立て作業のすべては、オペレーターが3Dディスプレイで確認しながらの遠隔制御である。工場内で自走稼働するロボットへの指令も、すべてここからの一元管理が可能になる。装着した特殊なグローブによって、オペレーターの指の動きがコンピューターを介して、マイクロファクトリーなどの各装置やロボットなどを操作することができるのだ。

 さらには、脳波や眼球運動、顔の筋肉の動きなどを自動的にセンシングし、作業者の疲労度を判断して、休息警告などを自動的に行う作業用ゴーグルなども実現しよう。そのレンズには、LED照明や特殊な光環境の工場で行われる光波長の身体影響を軽減する、特殊な機能性フィルムが用いられているはずである。

 そして、シリコンプロセスやマイクロ光造形法などの超微細加工技術で作られる、演算回路やポンプ、リアクター、DNAチップなどの異なる機能を持つマイクロチップの開発により、個人別に合成される創薬なども、この時期には実用化されるだろう。異なる機能を持つ化学IC群から構成されるマイクロ化学システムが、様々な分析や合成、創薬や人工臓器など、他品種少量生産を可能にするのである。小さな技術と小さな装置が、マルチ生産する多彩な製品。それは、真実の意味での、私だけのものづくりの実現にほかならない。