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 ICT(Infomation Communication Technology)によって社会や組織を作り直すことは、リエンジニアリングととらえることもできます。

 1992年頃、わたしは自民党所属の衆院議員で、New WIC(ニューウィック:New Welfare Information Communication)という超党派の議員連盟を結成していました。参画していたのは鳩山由紀夫氏や渡海紀三朗氏、荒井広幸氏、菅直人氏といった面々です。リエンジニアリングという概念は、その勉強会で知りました。

 NewWICでは、政治にもリエンジニアリングの考え方を取り入れられないか検討していました。議員連盟はサプライサイド、つまり業界団体の代弁者であることが多いのですが、NewWICはユーザーフレンドリーを指向しており、おそらく、消費者の側に立った初めての議員連盟だったと思います。村山内閣の下、高度情報通信社会推進本部ができたのも、NewWICの代表的な成果の一つです。

 リエンジニアリングはもともと経済の発想です。それを政治や行政の世界に持ち込むにあたり、わたしはユーザーフレンドリーに変わる言葉が必要ではないかと考えていました。

 当時あった「生活者重視」や「生活者優先」といった言葉も、お上の立場から生活者にたいして何かを「してあげる」というニュアンスが感じられるため、好ましくない。

 三重県知事になったときに職員と一緒に考え、できた言葉が「生活者起点」でした。これはICT時代のガバナンスのあり方を的確に表せる言葉で、いろいろな方に使っていただいています。

 行政と生活者が二項対立ではなく、Win-Winの関係になる。行政が説明責任をタックスイーターではなく、タックスペイヤーに対して持つ。そういう意味を込めています。

選挙は「お願い」から「約束へ」

 政府によるリエンジニアリングの一例に、小選挙区制があります。

 日本の政治がタックスイーターになった原因の一つは、中選挙区制にあります。一つの選挙区から5人も当選者が出るため、特定の団体で10%の票を獲得し、さらに親戚や自分の地域から5%の票をもらえれば当選できてしまいます。農協と組めば農林族に、郵便局なら郵政族になる。族議員になるのが、国会議員の通過儀礼のようになっていました。

 しかし、彼が獲得した票は15%にすぎません。特定団体の意向を汲みできるにしても、民意を十分に反映できるとは考えがたい。

 こうした問題を解消するため、選挙の仕組みをリエンジニアリングしたのが小選挙区制です。比例代表があるので完全ではないのですが、小選挙区制では、基本的に一つの選挙区から一人の候補者しか当選しません。従って特定団体ばかりでなく、有権者全体、すなわちタックスペイヤーに向かってしっかりと政策を説明できなければ、当選は望めないわけです。

 この小選挙区制をさらに正しく機能させるために、選挙活動は「お願い」から「約束」へ変わらなければなりません。わたしは現在、マニフェストを地方選でも導入するよう呼びかける運動を全国で展開しています。候補者は将来実現されるべき価値を候補者に約束し、有権者がその約束を前提に契約をする。それが選挙の正しいあり方です。

 マスコミも、候補者にどの団体がついたとかいう政局報道から、候補者がどのような考えを持っているかを伝える政策報道に変わる必要があるでしょう。また、有権者の方も候補者の政策をしっかりと検討し、自分の票に対して責任を負わなければなりません。マニフェストは、こうした選挙のリエンジニアリングが成し遂げられるための道具でもあるのです。